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フランス トランジット アルジェリア往路

 何度も言いますが、北アフリカに行くときはヨーロッパを経由するパターン多いです。

 前回、モーリタニアに行くときはパリ経由でした。

 そして同僚がリビアに行ったときはイタリア経由でした。

 今回のアルジェリアはイタリア経由で行きたい! というみぱぱのひそかな願いはかなえられず、またパリ経由です。

 しかし、今回はいつもと違って同行者がいます。

 別の会社の人ですが、同じ現場にいくため、成田空港から同行することになりました。

 夕方、成田空港にて同行者と合流しました。

「こんにちは、よろしくお願いします。みぱぱと言います」

「古村と申しますっス。ボクは海外初めてなのでよろしくお願いしますっス」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

「いえいえ、こちらこそっス」

「こちらこそ」

 若い、細身の男性。みぱぱと同じ匂いがします。あとでわかったのですが、PSPを持ってきていて、暇なときはグランツールスモをずっとやっていたようです。

 小一時間あいさつを交わした後、なんと古村さんはみぱぱと同じ市内に住んでいることが判明しました。

 世の中、狭いものです。

 早めに成田空港について、ゆっくりしているところに航空会社のお姉さんが声をかけてきます。

「お二人はシャルル・ド・ゴール空港行のお客様ですよね」

「はい、そうですが」

「申し訳ありませんが、飛行機は予定を変更して、すでに飛び立ってしまいました」

「え!? ウソ!」

「はい、冗談です。うふふ。実は飛行機が予約超過オーバーブッキングなのです」

 お! 来たか、無料ランクアップイベント。パリまでビジネスクラスか?

 しかし、お姉さんはみぱぱが予想したのとは別の提案をしてきました。

「次の便に持っていただけるとお金、もしくはマイレージを差し上げるのですが、いかがでしょうか?」

「次の便って何時間遅れですか?」

「明日の朝の便です」

「宿泊費などはどうするのですか?」

「そちらも弊社で負担させていただきます」

 お金がもらえてホテルでゆっくりできる。

 パリの乗り換え時間に余裕はあるのですが、お客が用意したフライトスケジュール以外のことをして、万が一現場に入るのが遅れれば問題になります。

「すみません。私たち仕事で行くもんで、スケジュールの変更は難しいですね」

「そうですか。わかりました。ありがとうございます」

 そんなひと悶着があったあと、みぱぱ達は無事にフランスのシャルル・ド・ゴール空港へ到着しました。

 今回は空港ホテルなどありません。

 同じく夕方まで時間がありますが、荷物を置くところも、シャワーを浴びるところも、仮眠するところもありません。

 空港内の長椅子で寝ているという手もありますが、せっかく古村さんが海外初めてということで、パリの旧市街地を観光することにしました。

 一人一個、スーツケースを持って電車に乗り、凱旋門へ。

 前回はロータリーの外から見たのですが、今回は凱旋門の下まで行きます。

 お金を払えば、凱旋門の上に行けます。

「せっかくだから上ろう!」

「おーっス!」

 二人はチケット売り場を探します。

 閉まっています。

「なんで!?」

「ここに開場時間を書いてあるっス。なになに、10時からっス。今何時でしたっけ?」

「……9時」

「……」

「エッフェル塔に行こうか。歩いて行ってたらいい時間になるはずだから」

 朝からロータリーで事故を起こしている車を横目に、みぱぱ達は凱旋門を後にします。

 観光客丸出しの二人組はガラガラガラガラとスーツケースを押しながらエッフェル塔を目指します。

 えっちらこっちら。

 ガラガラガラ。

 えっちらこっちら。

 ガラガラガラ。

 エッフェル塔に到着しました。

 エッフェル塔には塔に登るための長い列が出来ています。

「……登る?」

「せっかくなんで登るっス」

 チケット売り場の列の最後尾に二人で並びます。

 日本人は列に慣れています。そして二人で居ればおしゃべりしながら待てば、無敵です。

 エッフェル塔の後、どこに行こうかなどと話ながら5分ほど待っていると、フランス人のおばちゃんが何やら列の人々に話しかけながら、こちらに近づいて来ます。

「なんっスかね?」

「なんか注意事項言っているみたいですね」

 メガネをかけたちょっと小太りのおばちゃんはみぱぱ達を見て言いました。

「ノ~~~~~」

 急にノーと言われてもさっぱりわかりません。

 きょとんとしているみぱぱ達におばちゃんは続けて言いました。

「あんたらね。こげんでっかいスーツケース持っとったら、エッフェル塔には登れんけんな。バックは小さいバックだけやけんな」

「そうなんですか?」

「せや。セキュリティの関係で持ちこめんのや。登るんやったら、どっかに預けてきぃ」

 そう言われて周りを見るとスーツケースを持ているのはみぱぱ達だけでした。というよりも街をスーツケースでガラガラ移動している人もあまり見かけません。

 預けるところと言ってもわからないみぱぱ達は困りました。

「じゃあ、いいです」

「すまんのう。決まりやけん」

 そう言いながら、おばちゃんは別の所に行きました。

 みぱぱはエッフェル塔を真下から見上げてつぶやきました。

「小人がスカートを真下から見上げたらこんな風なのかな?」

「みぱぱさん、何か言ったっス?」

「いや、何でもないです。じゃあ、移動しましょうか」

 みぱぱ達はすぐそばのシャン・ド・マルス公園を抜けて、オルセー美術館を外から眺めて、ルーブル美術館へ行きました。

「ねえ、ねえ、あれ!」

「おー!」

 なんとセグウェイ軍団がいました。

 ヘルメットに肘当てをしてセグウェイに乗っている4~5人の集団。

 どうやら一人が観光案内で市内を案内しているようです。

 重いスーツケースをガラガラごろごろ押しているみぱぱ達とは対照的に優雅に市内観光する一団。

「古村さん。セグウェイに乗ったことがありますか?」

「いやないっス。みぱぱさんは?」

「わたしもないですね。一度乗ってみたいんですけどね」

 ルーブル美術館のピラミッドを見てからパレ・ロワイヤルを外から見て、古村さんが言いました。

「疲れたっス。お腹もすいたっス」

「じゃあ、コンコルド広場に行ってから、ご飯を食べるところを探そうか」

 みぱぱ達はルーブル美術館の前にあるカールゼル凱旋門を通り、チュイリー公園を通って、コンコルド広場を目指します。

 ん!? 凱旋門?

 そう、パリには凱旋門がいくつかあります。

 一般的に言われる凱旋門は正式名称エトワール凱旋門です。

 ルーブル美術館の前にあるカールゼル凱旋門は比較的小さめで、車が通るような場所ではないので、するっと通ってチュイルリー公園へ入って行きました。

 草花が豊かな公園でしたが、そろそろ疲れてきたみぱぱ達はそそくさと公園を抜けようとします。

「あ!」

 そんなみぱぱ達の目に映ったのはワゴン販売。

 日本でもよくあるような車の後ろがお店になっていてます。

 アイスクリーム屋とホットドック屋の2台ありました。

 二人は迷わず、ホットドッグ屋の方へ行きます。

 いや~美味しい。空腹は最高のスパイスなり~。

 ホットドックと水で一息ついたみぱぱ達は今後の方針を決めます。

「これから、どうしようか?」

「もう疲れたっス。空港に戻ってゆっくりしましょう」

「じゃあ、コンコルド広場はすぐそこなんで、そこを通って帰ろうか」

 コンコルド広場にはなんか背の高い石がありました。

『なんとそれは叛逆はんぎゃくではないか』

『陛下、これは叛逆ではございません。革命でございます』

『なに! 大臣、どう違うんだ? 叛逆のルルーシュでも革命のルルーシュでもいいじゃないか?』

『いえいえ、陛下。パンの小麦とケーキの小麦が違う様に叛逆と革命は違うのですよ』

『そうなのか、マリーは博学だな』

『そんなことはありませんわ。陛下も素敵ですわよ。おほほほほ』

『だめだ、この二人、にーげよっと』

 そんなルイ16世とマリーアントワネットの怨嗟えんさの声が聞こえそうなコンコルド広場。

 ここは二人がギロチンにかけられた広場だそうです。

 しかし、見た感じただの広場でした。

 二人は空港に戻って、夜の便を待ちます。

 ホットドックした食べていない二人は、空港で何か買おうとした時、事件が起きました。

「あ!」

「どうかしましたか?」

「カードが無いっス」

「カードって、ブルーアイズホワイトドラゴン? それともブラック・マジシャン・ガール?」

「違いますよ。クレジットカードっス」

「クレジット!? それは攻撃力と守備力はどれくらい? 特殊能力は?」

「みぱぱさん、遊戯王から離れてくださいっス。ちょっとカード会社に電話して止めてもらうっス」

「でもクレジットカード無いと不便だよね」

「しょうがないっス」

 古村さんはクレジットカードをどこかに落としたらしいのですが、カード会社に電話して確認を取ると使われた形跡はなく、無事に停止処置が行えました。

 ちなみに、この後アルジェリアに行ってもカードなど使う機会はありませんでした。

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