フランス
言わずと知れた芸術と美食の国。
ヨーロッパのパン籠と言われるほど農作物が豊かです。
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「お~い、大分昔に入れた装置のメンテナンスの仕事が来たぞ」
「どこですか?」
「ん? モーリタニア」
「どこですか? そこ?」
「西アフリカだよ」
西アフリカのモーリタニアに日本から行くためにはヨーロッパ経由で行きます。
そして、この時はフランス経由でした。
つまり、フランス編はそこが目的地ではなく
朝、四時ごろパリ、シャルル・ド・ゴール空港に到着しました。
入国手続きを済ませ、ホテルにチェックインします。
その日の夜にはダカールに向かう飛行機に乗れなければなりません。
お客からは長旅の疲れをゆっくり取って、仕事頑張ってね、と取ってくれた
荷物を置いてシャワーを浴びてから仮眠をします。
朝七時すぎにホテルを出発!
もう、パリ経由と分かったときからみぱぱはルンルン気分でした。
高校時代に写真を見て、死ぬまでに一度は本物を見たかったアレがみられるのです。
パリ滞在約20時間の最大の目的地、ルーブル美術館。
現地の人の迎えもなく、海外の電車を乗るのも初めてのみぱぱ。
ドキドキしながら電車の外を眺めていると、あちこちの壁にグラフィティアートが見られます。それもバンクシィーのような絵ではなく、日本でもよく見かけるような文字です。
「おバカな若者は世界共通なんだな~」
なんとなくほっこりするみぱぱでした。
地下鉄に乗り換えて、ルーブル美術館の近くの駅から地上へ出ました。
世界的に有名なルーブル美術館。
近くの駅に行けば、看板なり、案内なりがあるか、美術館がすぐに見えてですぐにたどり着くだろうと安易に考えていました。
「ここどこ?」
さすが旧市街地。趣のある建物が立ち並ぶヨーロッパの街並み。初めてヨーロッパにきたみぱぱにはそれだけで、口をぽかんと開けて見回してしまいますが、目的地を探さねばと、気を引き締めます。
ルーブル美術館はどこですか?
そのあたりの人に聞けば、すぐにわかりそうなものですが、みぱぱの頭にはある言葉がこびりついていました。
「フランス人はな、フランス語が世界で一番美しい言葉と思ってやがる。だから、フランス語を喋れない奴を馬鹿にするんだよ。あいつら、英語も喋れるくせに、英語で話しかけると『俺たちゃ、英語なんてわかんないザマス。優雅で上品なフランス語で話してくれザマス』ってバカにしやがるんだぜ。あいつら京都人かって言いたくなるよ」
ある人がそんなことを言っていました。
英語すら片言のみぱぱにできるフランス語は「ぼんじゅーる」「うぃ」「むっしゅ」「まどもあぜる」くらいです。
駅員やホテルの人は仕事だから片言の英語でも対応してくれました。
全く関係ない、見ず知らずのフランス人が変な日本人の変な英語を聞いてくれるか心配です。
この時、みぱぱは思いました。
「出川スゲ~」
「やればできる!」
みぱぱはティモンデイ高岸の霊に背中を押されて、そのあたりの人に話しかけます。そこは出川の霊じゃないんかい!
「いくすきゅーずみー。うぇあ・いず・るーぶる?」
無視されたり、嫌な顔をされるのを覚悟で、犬の散歩をしているフランス人男性に話しかけました。
「ルーブル美術館? ああ、その建物の裏だよ」
あっさりと、優しい笑顔で教えてくれました。アジア人なので観光客とすぐにわかってくれたのでしょう。
そして、すぐ角を曲がると、ガラスのピラミッドが見えました。
憧れのルーブル。
地下におりて、入場券を購入して入場しました。みぱぱは場内地図を頼りに目的地へまっすぐ行きます。途中の美術品も気になりましたが、大きなルーブル美術館は全部、しっかり見ようと思うと、とても時間が足りません。
やってきました階段の踊り場。
高校時代に図書館でみたその写真で一目ぼれした彫像。
美しい羽根を持ち、その服は風にたなびき、船首の上に立つ勝利の女神像。
『サモトラケのニケ』
スポーツメーカー
「ああ、ありがたや~ありがたや~」
思わず膝をつき、手を合わせて拝む人が続出するニケ像。(そんな人はいませんでした)
死ぬ前に一度は本物が見たかったみぱぱは、夢がかなったのです。
それまでは、新婚旅行で訪れるか、定年後に行くしかないと思っていたので、うれしくてたまりません。実物の彫像の良い所はいろいろな角度から見られることです。
サモトラケのニケ、上から見るか下から見るか。いやいや横からでも見ちゃいましょう。
小一時間サモトラケのニケを堪能したみぱぱは、せっかくルーブルに来たのですからほかの美術品も見ようと、移動します。
しかし、ここでみぱぱは重要なミスに気が付いたのです。
世界で一番美しい美術品を見てしまった後では、ミロのビーナスを見ても何も感じなくなっていました。いわゆる燃え尽き症候群でしょうか。
仕方がなく、ナポレオン三世の居室へ移動。大きなシャンデリアや天井には絵画、壁には美しい装飾。
う~ん、すごい。すごいけどごちゃごちゃしすぎていない? 心休まらないよ。日本のワビサビとは真逆だね。部屋自体を美術品としてのとらえるならいいけど、ここで執務や生活はしたくないかな。よし、次!
次は絵画を見て回ります。
ナポレオン一世の戴冠式や民衆を率いる自由の女神などの有名どころ以外にも多数の絵画が展示してあります。
「一週間くらい滞在して、2~3日ルーブルに入り浸っていたいな~」
しかし、今回の滞在は一日もありません。開場時間は9時から18時の9時間。さすがに夜のフライトもあるのでそんな時間までいられません。
頑張っても15時頃にはここを出なければなりません。
食事はフードコートで簡単に済ませ、絵画の目的地へ突撃します。
ゆったりと展示しているうえに展示数が多いルーブルにおいて、珍しく人だかりができる絵画。
『モナ・リザ』
手で触れそうな近くに展示している美術品が多い中で、ここはきっちり距離を取って観覧しなければなりません。
初めて生モナ・リザをみたみぱぱの感想。
「ちいさ! もっと大きいのかと思ったら意外に小さいな」
まず、サイズに驚きました。77x53cmしかないようです。
しかし、モナ・リザをみぱぱは、人だかりができる理由がわかりました。
ほかの絵画とは一線を画す力がありました。みぱぱに美術学的の所はわかりませんが、一度見た者を離さない、ずっと見ていたくなるような不思議な感覚でした。
そうはいっても他のお客もいますので強制的に移動をさせられます。
そうでなければ、おそらく小一時間はそこに立っていたでしょう。
「絵画部門No1」
みぱぱランキングに燦然と輝いたモナ・リザでした。
サモトラケのニケとモナ・リザを見て大満足のみぱぱは、サモトラケのニケの小さなレプリカを自分のお土産に買って帰りました。
そして、はじめてのフランスはパリ、と言うよりもルーブル美術館を堪能して、モーリタニアに行くために、ダカールへ旅立ちました。