目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報
モーリタニア

 モーリタニア

 西アフリカで日本にはタコを輸入していることで有名です。

 パリ~ダカールラリーのダカールで有名なセネガルの北側。


~*~*~


「お~い、大分昔に入れた装置のメンテナンスの仕事が来たぞ」

「どこですか?」

「ん? モーリタニア」

「どこですか? そこ?」

「西アフリカだよ」


 そう言うことで、みぱぱが行った外国の中でも飛び切り強烈なインパクトを与えてくれた国モーリタニアのお話です。

 すでに海外を数回経験して、慣れてきたみぱぱは装置の修理のため、モーリタニアへ行くことになりました。

 日本からアフリカに入るのは基本的にドバイ経由かヨーロッパ経由が主流です。

 今回はヨーロッパ経由でした。

 やっほ~う、初ヨーロッパと浮かれるみぱぱ。

 それも、おフランス経由、憧れのパリ!


 しかしパリの話は割愛。

 今回は国がらみのだったので、みぱぱはグリーンパスポートを渡されます。

 このパスポート、くっそ長い入国審査場を通らずに、パイロットたちが使っている優先的な入国審査場を使えるのですが、なぜか普通のところに並んで入国した気の弱いみぱぱでありました。

 国の偉いさんに挨拶して、現地へ移動。の前に買い物です。

 通常、みぱぱは海外に行くとき、会社からカードとドルが渡されます。

 そしてドルを現地通貨に両替するか、カードが使えるところでは、なるべくカード払いにします。


「おい、みぱぱ。モーリタニアって旧フランス領だからドルなんか使えないよ。フランじゃないと駄目だよ」

「そうなんですか? じゃあ、フランに両替しておきます」


 素直に従ったみぱぱ。

 はい、オチは見えましたね


「フラン? ドルだよ。世界でドルが使えないところなんてあるかよ」


 現地で言われショックをうける、みぱぱであった。

 現地まで、ここから車で約5時間。現地は小さな村のため、余分な食料はありません。

 一週間滞在予定なので、一週間分の食料を買うために街をうろつきます。

 街は基本的に二階建てか三階建て程度で背が高い建物は見当たりません。

 車は古いピックアップ(荷台付きの車)やランドクルーザーがほとんどでした。

 アフリカ人らしく色黒の人々がジーパンにTシャツ姿が多かったイメージです。

 買い物と言っても現地の人が購入して、みぱぱはお金を払うだけです。

 野菜、お米、油などどんどん買い込みます。

 現地に冷蔵庫は無いそうです。

 お肉はどうするか。


 ヤギ三頭。生きたまま車に積み込まれました。

 ヤギです。あのメーメー鳴くヤギです。

 お手紙を食べちゃうヤギです。

 そうして現地の人数名、私、食料とヤギ三頭が車3台に分乗して出発する事になりました。

 現地までは舗装された道がないため、引き潮の海岸を爆走。

 内陸は砂漠のためスタック(砂にタイヤがはまって抜けなくなる現象)を起こしやすいので、引き潮で引き締まった砂浜を走ることになります。

 そして、時間がたつと満ち潮になるので、安全地帯まで時間勝負!

 車が複数台と言うのも、万が一、一台が車が壊れた時を考えてと言うことだそうです。

 ちなみに実際、年間に何台か行方不明になるそうです。

 太陽が照り付ける海岸沿いを爆走する三台の車、たまに荷台で鳴くヤギ。


 そして眠るみぱぱ。

 みぱぱはどこでも寝られるという特技があり、特に車に乗っていると十分もしないうちにだいたい寝てしまいます。

 そして無事に現地に到着!

 現地で修理のお仕事。

 この村には一軒だけある小売店に自家発電と水処理装置用の発電機、合計二台の発電機があるだけで、電気はありません。

 万が一のためにアタッシュケースの大きさの衛星電話を渡されたくらいです。


「本当の緊急時にのみ使用してください。一応、現地について使えるかどうかの確認で一度、使ってみてください」

「分かりました」


 アンテナを調整して、衛星の位置を確認。うん、大丈夫。

 ちなみにこれは本当に緊急時用で、使うと目玉が飛び出るほど高額な使用料を請求されるとみぱぱは電話を渡されたときに脅されました。

 そしてみぱぱは装置を確認しました。


「ふっる!」


 昔の写真を見ていましたが、実際の装置を見てあまりの古さと劣化の具合に思わずつぶやいてしまいました。

 故障箇所のリストアップと持ってきた部品、現地に保管されていた予備品を確認して、出来る事と出来ない事を把握します。

 そして、仕事を終えたみぱぱは宿泊施設へ移動します。

 この宿泊施設は普通のホテルなどはなく、大広間と個室、そして共通のトイレだけです。

 個室にはベッドと机、椅子があるだけです。

 電気がないため、明かりはろうそくのみです。

 御飯は大広間にみんなが集まって一緒に食べます。

 テーブルや椅子などなく、マットの上に座って食事をするのです。

 ご飯の前にみんな、石鹸と貴重な水を使って手洗い。

 なんでかって? みんな、手づかみでご飯を食べるからです。


 真ん中の大皿のこんもり山になったお米。

 その上に汁たっぷりのヤギの肉。

 焼いてあるのか、煮てあるのかは不明。

 一つの大皿にもったそれを、みんなで食べます。手で。

 肉は骨付き。

 さすがに手での食事に慣れていないみぱぱにはスプーンが渡されました。

 しかし、スプーンだと、お米はすくえても、肉から骨がうまく外せません。


「ほい、食べな」


 見かねた隣の兄ちゃんが、素手で骨を取った肉をみぱぱの前においてくれます。

 た、食べるしかないよね。お腹空いたし。


「うん、臭い。クセがある」


 ヤギ肉は独特の臭みがあり、ちょっと無理かも。

 みぱぱは米と盛り合わせの野菜を食べることにしました。

 しかし、エビを向いて渡すオカンのように肉を渡してくれる隣の兄ちゃん。

 仕方なく食べるみぱぱ。

 苦痛な食事。

 二日目までは。

 人間って面白いですよね。慣れるもんで、そういうものだとわかれば、大丈夫。

 三日目から、お腹空いた。飯まだか~の状態のみぱぱでした。

 四日目に気を利かせた、現地の人がヒラメのフライとパンを特別メニューでみぱぱだけ個室で食べたのでした。


「ヒラメ、デカくてうまい! でもヤギを食わせろ!」


 一人、部屋で叫んでいたみぱぱ。

 そんなこんなで仕事をこなすみぱぱ。

 2~3日ごとに一匹ずつ、いなくなるヤギ。

 夜。

 みぱぱは夜ご飯を食べて、報告書をまとめて、明日の段取りをしたら窓のない個室でさっさと寝ます。 

 仕事も終わり、明日には街へ戻る事になりました。


「こういうところの夜って、真っ暗で星が綺麗なんだろうな。せっかくこんな所に来たんだから、少しは夜空くらい見て帰らないともったいないな」


 そう思ったみぱぱが外に出てみると意外と明るかったのです。夕方並みの明るさ。

 時間は19時過ぎ。


「日が長いのか? 暗くなるまで散歩に行ってみよう」


 北に行けば、鳥の聖地らしいと聞いたみぱぱは北へ向かって歩き始めました。

 海を左手に見えていれば、北に向かっているはずです。 

 一時間ほど、てくてくと歩くみぱぱ。暗くなったら引き換えそうと思っていたのですが、一向に暗くなりません。

 そして、たどり着いた海岸近くの岩場に大量の鳥。

 サギのような鳥たち、夕方のような明るい空、すぐ側に聞こえる波の音。

 あまり人が来ないのか、近づいても逃げない鳥たち。

 そのなんとも幻想的な風景をみぱぱは、一通り見ると戻ることにしました。

 みぱぱが宿にたどり着いた時も、まだ明るく、夜空を見上げることは諦めました。

 白夜って南極や北極の現象のはずですが、モーリタニアであんな夜まで明るかったのか、今でも謎です。

 そして、次の日、朝早く現場を離れて同じように海岸を走る車。


 当然ながら帰りにはヤギはいません。ご馳走様。

 みぱぱは、お昼前にホテルに到着して、久しぶりのちゃんとしたシャワー。


「ふ~、生き返る~」


 風呂上がりにホテルでお昼を食べて、ビールを飲みました。


「ふ~、生き返る~」


 夕方から国の偉い人の所で報告と夕飯のため、準備を整えます。

 国の偉い人の家に行き、飲み物を聞かれて、みぱぱさん、元気に答えました。


「ビア~(ビール)」


 国の偉い人に笑われました。

 モーリタニアの正式名称はモーリタニア・イスラム共和国。つまりモーリタニアはイスラム教です。

 有名なところで豚肉を食べない。女性はむやみに人前で肌をさらさないなどがありますが、お酒を飲まないという宗教です。

 外国人が泊まっているホテルにアルコールはありますが、現地の人がアルコールがあるはずもありません。

 すぐに気がついたみぱぱは慌てて言い直しました。


「コーク(コーラ)」


 その後は和やかに会食は進みました。

 そして、甘党のみぱぱはデザートで出されたデーツ(ナツメヤシの実)を一口ぱくり。

 中東でお土産買ったデーツは見た目も味もいまいちでしたが、出された物に手を付けないわけには行けません。


「あれ? 美味しい!」


 思わず、パクパク食べたみぱぱはその夜、胸焼けに襲われました。

 来たときと同じようにパリ経由で日本に戻ったみぱぱはつぶやきました。


「あ~また、ヤギを食べたいな~」

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?