このショートパンツ、いつものより短いし、フードに猫耳までついてやがるし…
「別に、謝らなくてもいいよ。
俺も… 会いたかったから」
ってか、似合ってるのか? 変じゃない?
そんな事を考えながら、そっとドアを開けた。
「今日が年内最後の休みだって聞いていたから、何処か行くかと思っていたんだけど、さくちゃんの体調が心配だったんだ。お節介だったね」
少し困ったようなそれでも優しい笑顔の明さんを見て、すごくホッとした。
「そんな気力も体力もない」
「みたいだね。お腹、空いているだろう? 少し早いけど、夕飯一緒に食べようかと思って、買ってきたモノばかりだけど。用意しておくから、髪、乾かしちゃいなよ」
大きな手で頭を撫でられて、頷いてドアを締めるしか出来なかった。だって、なんて返事していいか分からないし、絶対変な顔してる。顔が熱い。でも、でも、嬉しいな。
ってか、夕飯って言った? 夕飯? うわぁ~… 時計、四時過ぎてる。朝風呂のつもりだったけど、どんだけ寝てたんだよ、俺。
伸びた髪にドライヤーをかけてて気がついた。仕事ばっかで太陽の下に出てないせいか顔白いし、目の下にクマあるし、肌荒れも酷いな。肌荒れなんて、手だけで十分なのに。化粧水と乳液使ったの、いつぶりだ? ハンドクリームはマメに使ってるけど、追いつかないし。
そんな感じに鏡の前で百面相しても、これ以上良くなるわけがないから、そっとダイニングに戻った。最近ベッド代わりにしていたソファの前のテーブルには、幅いっぱいに料理が並べてあった。
あ、さっき出した冷酒の隣に、シャンパンもある。
「こんなに沢山!!」
「さくちゃんには、足りないでしょ?」
クマの縫いぐるみの隣に座ると、明さんの座るところがないことに気がついた。ソファは二人がけの一つだけ。テーブルを挟んで向こう側にはテレビ。小さいながらもラグが引いてあるとはいえ、床に座ってもらうのは忍びないので、縫いぐるみを床においた。
「隣、いいの?」
「もちろん! どうぞ」
素足に縫いぐるみの毛並みがちょっとくすぐったいけど、これはこれでモフモフしていて気持ちいい。
明さんは、「アルコールは軽いほうから飲もうね」と言って、慣れた手付きでシャンパンを開けて、グラスについで渡してくれた。
「お疲れ様」
「いただきます」
チィン… と、グラスを合わせて一口飲んだ。すっごくフルーティで、メチャクチャ飲みやすい。でも、二日は腹に入れてないから、気をつけないと回るな。
「明さん、仕事は休み?」
用意してくれた料理を、遠慮なく食べすすめる。美味しくて、箸が止まらない。
「昨日の夜、仕事帰りに一回来て、今日は朝から仕事に出たよ。
ちゃんと終わらせて、さっき来たんだよ」
「昨日の夜?… じゃぁ、もしかして、俺のことベッドに運んでくれた?」
「さくちゃんは、もっとお肉付けていいと思うよ」
それが出来れば、胸に付けたい。
「醜態ばっか、晒してるぅ… 俺ばっかだらし無い所みせてる」
「頑張ってる証拠だよ。それに、みっともないって言うなら、僕だってそうだよ」
「どこが? あ、これ、すんごく美味しい」
サーモンのカルパッチョが、口の中で溶けた。
「こんなでかい図体して、さくちゃんに嫌われるのが怖いし、昔の彼氏にヤキモチも焼いてる」
いつもの優しい眼差しで覗き込まれて、次の皿に伸ばした手も、口の中のモノも勢いよく呑み込んで止まった。
「
剥き出しの膝に、明さんの大きな手がのった。大きくて熱くって質量を感じる手… 膝を包み込んで、ゆっくりと上がってきた。
「ど、同居してた友達も一緒だったから… 三人で食べてた」
見れない。明さんの顔が見れなくて、ショートパンツの裾で止まった明さんの手を見てた。すごく、大きな手。
「そっか、三人か」
ドキドキしてて、頷くのが精一杯。
「デートの時に、可愛い格好してたの?」
耳の横で、しゃべんないで~。どうしたの? どうしちゃったの明さん? なんだか、怖いよ。
「… いつもの格好」
ヤキモチ? ヤキモチ通り越して、怒ってる?
「これは?」
明さんは膝の手はそのままで、もう片方の手でツンって胸元を引っ張った。
「あ… こ、これは、ミオが誕生日プレゼントにって… らしくないよな? 似合わないよね?」
俺、こういう時どんな対応すれば正解なんだ? ってか、皿と箸を持った手はどうすればいいのさ?
「かわいいよ、似合ってる」
肩に、明さんの顔! 重みと温度が、息がリアルに!!
「あ… あの、明さん…」
どうすればいいんだよ~ お願い、ミオ様教えて! お願い!