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第37話《笑顔の国篇》本当の笑顔

ルミエールside

「ルミエール殿……?」

よし!目が覚めた!

「キシャ!?」

想定通り、サウスターの動きが鈍る。

私はすぐさま《ファンタズムエッジ》を取り出し、糸を断ち切る。

「三人とも、大丈夫ですか?」

「ええ……ルミエール殿の声が聞こえたので」

「先ほどは失礼な言葉遣いをしてしまい申し訳ありません」

「いえ、あなたのお陰で私たちは洗脳から脱することができました。感謝申し上げます。」

その言葉を聞いて私はサウスターの方に振り返る。

「オニキス!水晶を破壊して!」

『わかった〜!!』

私はオニキスに水晶を破壊するように言った。

「キシャアアアアルアアア!!」

水晶を破壊されたのを感じ取ったのか、サウスターは怒り狂っていた。

やっぱり国民を洗脳している手段はあの水晶だったか……!!

「おっ、と!」

そんなことを思っているとリファがサウスターの攻撃を避けると同時に私の元にバックステップで戻ってきた。

「作戦は成功したみたいですね」

「うん!あとは……」

「キシャアアアアルアアア!!」

「目前のサウスターを倒すだけ!」

私とリファはそれぞれ武器を構える。

「いくよ!リファ!」

「はい!」

私とリファは一気にサウスターとの距離を詰める。

「《エアリアルボム》!!」

私よりも先に前に出たリファが魔法で牽制する。

「はあああっ!!」

私はスライディングしながら、右足の一本を斬る。

「キシャアアアアルアアア!!」

するとサウスターは私の足に糸を巻きつけて、振り回す。

「うおおおおお〜!目が回る〜!」

「ルミ様!《ファイアボール》!」

リファが糸を燃やしたことで私は空中に放り出される。

「ありがと!はあああっ!」

私はリファにお礼を言うと左足の一本を斬る。

足を二本無くしても、まだまだ立っていられる。

「さすが蜘蛛だね……」

「六本あれば自立に困らないようですね」

リファの隣にジャンプで移動した後、そんな会話をする。

「さて、そろそろ大詰めだよ!」

「はい!」

私は再びサウスターに向かって駆け出す。

「《アースランス》!」

リファがそう言って地面に剣を突き立てるとサウスターの足と足の間に土の槍を出現させ、身動きを封じる。

「さすが!」

私はそう言って右足一本と左足一本を斬り落とした。

それでも四本残っているため、ギリギリ自立はしている。

しかしダメージが大きかったのか、フラフラだ。

「キシャアアアアルアアア!!」

サウスターはまだ諦めていないらしく、糸を吐き、その場の全員を壁に磔にした。

「くっ……!!」

リファは糸の攻撃の勢いで《アムールエスパーダ》を落としたようだ。

「キシャアアアアルアアア!!」

サウスターは私たちを中心に繭を作ろうとしているのか、糸の射出を止めない。

「オニキス!!」

私がそう言うと影からフレイムウルフに姿を変えたオニキスが糸を焼き尽くした。

「ありがと!」

『主の役に立てて嬉しい〜!』

「さあ、最後だよ!!」

私は再び、《ファンタズムエッジ》を構えてサウスターに斬りかかる。

「はあああああっ!!」

「キシャアアアアルアアア!!」

サウスターは糸で絡め取ろうとしてくるが、私はそれを斬りながら進む。

「はああああああっ!!」

そしてサウスターの目の前で飛び上がった私はそのままサウスターを一刀両断した。

「ぐあああ!!」

その一撃でサウスターは人間の状態に戻る。

「ルミエール=ラウエルゥゥゥゥ!!」

そう言ってサウスターは尚も立ち上がり、私に遅かかってこようとする。

しかし、そんなサウスターと私との間に、割り込んでくる者がいた。

「見苦しいよ、サウスター」

「ケイオス……!!」

「どうやら君は邪魔みたいだ。じゃあね〜!」

そう言ってケイオスが指をパチンと鳴らすとサウスターは塵となって消えた。

「ケイオス!」

「悪いね!今日はアイツを消しにきただけで君の相手をしにきたわけじゃないから!」

そう言ってケイオスは消えた。

「逃げられた……」

こうしてへスマイルの事件は解決した。


─────────────────────


「たは〜!」

事件を解決した私達は、王宮の温泉に浸かっていた。

「疲れましたね」

「うん!」

「それで、本当の目的は達成できましたか?」

その言葉に少し表情が強張る。

「いつから気付いてたの?」

「最初からですよ?」

「本当に言ってる?」

「嘘言っても意味ないじゃないですか。それに嘘かどうかなんてあなたにはすぐにわかるでしょう?」

そう言うリファの目も声色も嘘を言っているようには思えなかった。

「やっぱりリファに隠し事は通用しないか〜……」

「当たり前です。一応師匠なんですから、日頃から注意深く見てますよ?私が目を離すとすぐに無茶しますからね」

「そ、そっか……」

なんか照れるな……

「あと、一応は余計だよ」

「そうですか?戦闘訓練なんてカーニャにしてもらいましたけど?」

「うっ……!それはその……色々忙しかったし?」

「ああ、そうでしたね。私の家の問題を一人でやってましたもんね」

リファは若干皮肉って言ってくる。

「頼られなかったこと根に持ってるの!?」

「さあ?」

リファははぐらかす。

「も〜!」

「その話は置いておいて、次はどの国に行くんですか?」

「ラルジュ王国まで結構近づいてきたから一気に行きたいけど多分無理だろうから間にある砂漠の国、《デザーサンド》に寄ろうかな〜って思ってるよ?」

「なるほど……」

地理的にも《デザーサンド》を超える必要性はある。

結構大きな砂漠を跨いで、ラルジュ王国はある。

「流石に暑いでしょうから衣装チェンジが必要ですね」

「なんで?」

「なんでって……ルミ様、《デザーサンド》は世界で一番暑い国と言われてるんですよ?それにいつもブーツを素足履きしてますけど、《デザーサンド》に行ったら、一瞬で蒸れて臭くなりますよ?」

「あ〜……完全に失念してたわ……」

行き先を変えようにも、遠回りになる。

まあ、いっか!

「衣装チェンジ楽しみだな〜!」

そんな話をして、私達はお風呂を上がった。


─────────────────────


お風呂から上がった私達はとりあえず、街を歩いていた。

街は私たちが来た時よりも活気付いていて、国民達も笑顔を浮かべていた。

貼り付けられたようなものではなく、心からの『本当の笑顔』を。

とは言っても国民達は記憶を失っており、何が起きていたのかは覚えていない。

というか上手いこと記憶が改竄されている。

だから、私たちがこの国を正気に戻したことは王達しか知らない。

当初王達はこのことを公表するつもりだった。

しかし、私が止めた。

隠蔽するようで良くないと思われるかもしれないが、公表しないことで余計な不安を煽ることを避けた。

自分の知らないところでヤバいことになっていたとか、知りたくはない。

「なんか、頑張った甲斐ありますね……」

街を歩きながらリファがしみじみと噛み締めるように言ってきた。

「だよね〜!私も本来の目的関係なく助けてたと思う」

「そうですか?」

「うん。だって、みんな人間なんだから喜怒哀楽はあるでしょ?」

「はい」

「私ね、人間のいいところって喜怒哀楽が表情ですぐにわかるところだと思うんだ。だから無理矢理笑顔を作って、人の良さを殺すようなことをしたサウスターは許せない」

リファは黙って私の言葉を聞いてくれる。

「でも、サウスターの言い分も一理あると思う。異端者を虐げるっていうのも人間なんだよ。私もサウスターと似た立場だしよくわかる。人間にはいいところもあるけど、醜いところだってある。でも、そういうのもひっくるめて人間なんだと思ってる」

「そう、ですね……」

「だから綺麗事って言われても私は異端者も受け入れられるような世界にしたいかな〜!」

「王位継承権放棄してますけど?」

「そうだね〜!でも、女王になったら自由に出来ないでしょ?私は世界中をそうしたいって思ってるから!」

「ならピッタリですね」

「そうかな〜?」

「ええ。なんか、最終的に遊郭で働いてそうですけど」

「なんで!?私、冒険者なんですけど!?」

「騙されてっていうパターンだと思います」

「あり得る……」

「そこは無いって断言して欲しかったですね」

「なんなの!?私をおちょくってんの!?」

「そんなつもりはないですけどね」

リファは飄々とした表情で言ってくる。

全く……

「とりあえず宿に戻りましょうか」

「そうだね!」

私達は宿に戻った。

「は〜……」

「どうしたんですか?」

「いや、カーニャ達どうしてるかなって……」

「案外心配してないと思いますよ?」

「そんな薄情なことある!?」

「まあ、あの人達ですし、遊んでるんじゃないですか?ルミ様の発明品で」

「否定しきれない……」

確かに、色々と置いてきた。

ツイスターゲームとかオセロとかトランプとか色々。

ヤバい。

言われて思ったけど、絶対遊んでるな……

多分、姉様達と一緒になんか賭け事でもして。

「あれ、私意外と心配されてない!?」

「おそらくカーニャとテイル様達には。でも、メディとリスカルは心配してると思いますよ?」

「それはそっか……」

言われて私は二人を想像する。

「メディはともかく、リスカルが私のことを心配しているビジョンが浮かばないんだけど!?」

「それはもう、なんとも言えませんね」

「ひどくない!?」

「まあ、寝ましょう。明日は早いんですから」

「そうだった!」

明日は国王達に謁見した後に、《デザーサンド》に向かうことになっている。

「おやすみ、リファ」

「はい。おやすみなさい」


─────────────────────


翌日、私達は王宮に来ていた。

「ルミエール=ラウエル様、リファリア=リヴェルベロ様、ご到着です!!」

その声と同時に目の前の大きな扉が開かれた。

「ルミエール殿!」

「先日は世話になったな!」

「いえ、こちらとしても色々と目的がありましたので!」

「さすがは《謀略の王女》だな!」

「何でそれを!?」

「今回の一件でアンジュがルミエール殿の功績に興味を示してな!色々と調べていたんだよ!」

「そうなんですか!?」

「はい!魔法が使えないのにも関わらずあそこまで強くなられていることに感銘を受けまして!」

アンジュ王女が鼻息を荒くしながら言ってくる。

「そんなに評価してもらえるとは……」

「発明品もどれも素晴らしいです!いっそのこと開発組織でも立ち上げてみては?」

「開発組織……」

今はそんな余裕ないけどな〜……

「考えておきますね」

「それで、用件はそれだけでしょうか」

リファはズバリと切り込む。

「ちょっと!?」

「よいよい!私はそうやって切り込んでくる者は好きだ!」

「そうですか」

「出立の前に申し訳ないのだが、アンジュと一戦交えてはくれないだろうか」

「え?」

「是非お願いします!!」

アンジュ王女は元気よくそう言って頭を下げた。

「別にいいですけど……」

私がそう返事すると顔をパアッと明るくした。

「では準備して参ります!」

そう言ってアンジュ王女は王の間から勢いよく飛び出して行った。

「騒がしい娘ですみません」

「いえ!向上心があるのはいいことですから!ある人が言ってました!『精神的に向上心のない者はばかだ』って!」

「そうか!面白いことを言うな!だが、確かにそうかもしれんな!」

そうして私はアンジュ王女と一戦交える運びとなった。


─────────────────────


「両者とも準備はいいですか?」

「「うん(はい)!」」

審判はリファがやってくれるそうだ。

お互いの手には木剣が握られていた。

流石に冒険者相手ではないので《ファンタズムエッジ》を使うわけにもいかない。

「はじめ」

その声と同時にアンジュ王女は突撃してくる。

単調な動き。

フェイントか?

そう思いつつも受けの体勢に入る。

私の予想とは裏腹にあまりに素直に殴ってくる。

ん〜……

「素直すぎる……」

「え?」

「普通に攻撃していいんですよね?」

「ああ!構わん!」

その返事を聞くと同時に捌いていた剣を弾き飛ばし、お腹に蹴りを一発入れた。

「そこまで。勝者ルミ様」

「流石ですね……!」

アンジュ王女は蹴られた部分を押さえながら立ち上がる。

「流石も何も動きが単調すぎる」

「単調、ですか……」

「うん。素直に攻撃を仕掛けすぎ。もっとフェイントとか色んなことで戦っていかないと誰にも勝てないよ?」

「手厳しい意見ですが、確かにその通りです!もっと鍛錬に励もうと思います!」

「いい心掛けだよ!頑張ってね!」

「はい!『師匠』!」

その発言に、リファの眉がピクついた。

「ごめんね、アンジュ王女!私の弟子はリファ一人なんだ!」

「そうですか!ではまたお手合わせお願いしますね、ルミ様!」

「もちろん!」

アンジュ王女との模擬戦を終えた私達はへスマイルを出立した。

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