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第36話《笑顔の国篇》最悪の支配者

ルミエールside

「はあああっ!!」

まず私は正面からサウスターに斬りかかる。

「せやあ!」

サウスターが私の剣を受け止めた隙に、リファが腹に蹴りを叩き込む。

「くっ!!」

サウスターは数歩後退した。

「舐めるなあ!!」

そういうとサウスターは何かの玉を取り出し、地面に投げつけた。

するとそこからは、ギガントタランチュラやキングサラマンダーなどの強力な魔物が現れた。

その隙にサウスターはどこかへと逃げる。

「ルミ様はサウスターを追ってください!」

「わかった!」

私はリファを信じて先に行く。

絶対に逃がさない!

人を弄ぶ極悪人を逃すわけにはいかない!

私は腰からシエルを取り外し、元のサイズに戻して乗る。

「待てええ!!」

「くそ!!《バーニングシュート》!」

サウスターは走りながら私の方に振り返り、炎の球を放ってくる。

「うおっ!」

私は見事な箒捌きで避ける。

「だったらこっちも!」

私は《ファンタズムエッジ》を仕舞い、《クレシェンテアルク》に持ち替える。

そして《シエル》の上に立ち、弦と矢を展開する。

私は弦を引き、狙いを定める。

「《サンダースピア》!!」

サウスターは雷の槍を何発か発射してくる。

「ふっ!!」

私はそれを一本一本的確に落としていく。

「なに!?」

「魔法が使えないからって舐めないでよね!」

「だったら!!《イリュージョン》!!」

すると今度はサウスターは五人に分身する。

さらに混ざるように動き、本物を隠す。

「どれが本物かわかるかな!」

「判別させる暇も与えねえよ!」

「「「《エアリアルボム》!!」」」

分身した全員が私に対して魔法を放ってくる。

「おっ、と!」

私は《シエル》の上でバク宙し、魔法を避け、再び《シエル》に立つ。

「なに!?」

「ありえないだろ!?」

「魔法が使えないからフィジカルを鍛えたんだよ!」

そう言いながら一人目を矢で射抜く。

「ぐあっ!」

すると射抜かれたサウスターは煙となって消えた。

「ハズレだ!」

「まだまだ行くぞ!」

「「「《ランドスピア》!」」」

サウスターは地面に手を起き、土の槍を出現させてくる。

私はそれをサーフィンの要領で避けながら、弦を引く。

今だ!!

目の前に現れた土の槍を飛び越えると同時に、二人目のサウスターを射抜く。

「ぐあっ!」

しかしこのサウスターもまた煙となった。

「またぁ〜!?」

「甘いな!」

「このやろ〜!!」

私は加速する。

「「「《アイスブレット》!!」」」

今度は氷の弾丸を放ってくる。

「うおおお!!」

私は大量に放たれる氷の弾丸を全力で避ける。

しかし、完全に避けることは出来ず、髪の毛にあたり、毛先が凍り始める。

「氷の彫刻にでもしてやろう!」

その宣言の後、攻撃の勢いは増していく。

「こっちの方がいいかな!」

私は《クレシェンテアルク》を仕舞い、《ラファールランス》を組み立てる。

そしてクルクルと高速で回転させ、氷の弾丸を弾いていく。

「なんだと!?」

「その程度じゃ、私には勝てないよ!」

私は《ラファールランス》を構え、《シエル》に跨りながら、サウスターとの距離を詰めていく。

「てやああ!!」

私は三人目のサウスターを貫く。

「ぐあっ!」

しかしこれもハズレだったようで、煙になる。

「「《バインド》!!」」

煙になった直後、左右からのサウスターの魔法をくらい、身動きが封じられた。

「くっ!」

さあ、どうする?


─────────────────────


リファリアside

私は目の前にいる強力な魔物が対峙していた。

「キシャアアアア!!」

「グルウオオオ!!」

「キュミャアアア!!」

私は《アムールエスパーダ》を抜いて構える。

「おいでなさい」

「グルウオオオオ!!」

始めに掛かってきたのはキングフレイムウルフだ。

「《アースストライク》!!」

私はキングフレイムウルフの攻撃を一回転しながら避け、真横から《アムールエスパーダ》で突く。

その直後、キングフレイムウルフの体から土塊が飛び出て、ぐたりと倒れる。

「次は誰ですか?」

私は《アムールエスパーダ》を一振りして振り返った。

するとギガントタランチュラがお尻から糸を発射してくる。

私はその糸を《アムールエスパーダ》の剣先で絡め取る。

「《バーニングストライク》!」

巻きついた糸を燃やすと同時にギガントタランチュラを貫いた。

「キシャアアアア!!」

そんな雄叫びと共に燃え尽きた。

「キュミャアアア!!」

今度はキングサラマンダーが火を吐きながら襲いかかってきた。

その炎を私は華麗に躱し、キングサラマンダーとの距離を詰める。

「《フリージングストライク》!」

私は腹を貫いた。

すると周囲の温度が低くなり、キングサラマンダーの体は凍った。

そして私が剣を抜くと同時に、キングサラマンダーだった氷塊は崩れ落ちた。

「この程度ですか……」

この戦闘を以て、目の前にいた魔物を処理し終わった。

私は《量産型シエル》に跨り、先を急いだ。


─────────────────────


ルミエールside

「くっ!!」

私は拘束魔法で身動きを封じられていた。

「お前に面白い物をやろう!」

そう言ってサウスターが指をパチンと鳴らすと、小さな蜘蛛が私の元に来て服の中に入る。

「いや!入らないで!くふ……ふひゃ……!」

「どうした?口元を綻ばせて」

「う、うるしゃい……!お前ぎゃ……!ふふ……ふは……」

「そうだったな!お前はくすぐったいのが苦手だったなぁ?」

そう言ってサウスターは憎たらしい笑みを浮かべながら言ってくる。

「下衆が……!ふひゃ……ひひ……!」

「どうした?さっきまでの威勢はどうした?」

くすぐったさに限界を迎え、立っていられなくなった私を見下げながら言ってきた。

私はキッとサウスターを睨みつけるが、すぐに半笑いの状態に戻される。

「その程度か〜?俺の奴隷にでもしてやろうかな〜?」

サウスターが嘲笑交じりに言ってくる。

しかし、そんなことは聞いていない。

私はくすぐったさを感じながらも集中し、拘束魔法を破壊しようと試みていた。

いける!!

「はあああっ!!」

「何!?」

私は拘束から逃れると同時にサウスターを蹴り飛ばす。

それに呼応するように蜘蛛達が服から出ていく。

痛覚がリンクしている……?

「あなたまさか……!」

「気付いたか?俺は純粋な人間じゃない。生まれながらにしてのキメラさ」

「キメラ……?」

「ああ!俺は人間とアラクネのハーフなんだよ」

そういうとサウスターの背中から蜘蛛の足が生えてくる。

「───っ!」

「俺のような生まれながらのキメラは虐げられてきた!だから!!」

「それでも!!どれだけ虐げられてきたとしても……他の人を虐げていい理由にならない!!」

「黙れ!!俺が幸せならそれでいいだろう!!全員が幸せになるなんて綺麗事が通るわけがない!!」

「確かに綺麗事かもしれないよ……でも、綺麗事だからって諦めたら、変えられる可能性はゼロになる。どんなに可能性が低くても、諦めなければ希望がある!」

私は腰から《ファンタズムエッジ》を取り外して剣先を展開した。

「黙れええ!!」

「だから、あなたを止める!!」

私とサウスターは激突する。

《ファンタズムエッジ》をサウスターは背後の蜘蛛の足で防ぐ。

「はああっ!!」

私は押し切られ、吹き飛ばされて地面を転がる。

「くっ……!」

仕方ない……

私は《パンドラ》を取り出し、一錠、口に含む。

すると力がみなぎる。

「はああああっ!!」

私は再びサウスターに斬りかかる。

今度は押し負けることなく、押し切った。

「うあああ!!」

サウスターは地面を転がる。

「クソがああ!!」

するとサウスターは今度は巨大な蜘蛛になった。

「キシャアアアアルアアア!!」

そして糸を放ち、私を拘束する。

糸はなかなかに頑丈でなかなか壊せない。

さらに意識が遠退く感じを覚える。

マズイ……!

暴走を抑えられるわけもなく。

私の意識は乗っ取られた。


─────────────────────


リファリアside

私がその場に駆けつけると、ルミ様が巨大な蜘蛛の糸で絡め取られており、肝心のルミ様は俯いていた。

「まさか……!!」

すると、糸は一瞬で燃え尽くされた。

「キシャアアアアルアアア!!」

おそらくその蜘蛛はサウスターなのだろう。

「…………」

ドラゴンに意識を乗っ取られたルミ様は無言で赤炎を纏った《ファンタズムエッジ》でサウスターに斬りかかる。

「キシャアアアアルアアア!!」

サウスターは糸をルミ様を囲うように吐く。

「…………」

それに対してルミ様はその場で一回転し、糸を燃やし尽くす。

「キシャ!?」

「…………」

驚くサウスターを全く気にせず、ルミ様は着実に距離を詰める。

それに対してサウスターは天井に糸を貼り付け、逃げようと試みる。

それを見たルミ様は地面に落ちていた《ラファールランス》を足で蹴りあげ、それを掴み先端に赤炎を纏わせて投げる。

投げられた槍は天井とサウスターを繋いでいる糸を燃やし、奥の壁に突き刺さった。

「キシャアアアアルアアア!!」

サウスターは小さな蜘蛛を出現させ、ルミ様に接近させる。

しかし、そんなものは今のルミ様にとって無意味だった。

ルミ様は強く地面を踏み締める。

すると赤炎が小さな蜘蛛を燃やし尽くした。

「…………」

「ルミ様……」

あれだけ暴走しているというのに、止めようとは思わなかった。

サウスターに対するヘイトもあるが、それ以上にルミ様の戦闘は美しく、無駄のない動きで、もっと見たいと思ってしまうほどだった。

「キシャアアアアルアアア!!」

サウスターは土煙をあげ、逃走した。

それと同時にルミ様も倒れ込んだ。

「ルミ様!!」

「はぁはぁ……あれ……?サウスターは……?」

「逃走しました」

「追わないと……!」

ルミ様は左手のブレスレットに触れ、《シエル》を呼び寄せ、《ラファールランス》を回収してサウスターを追った。


─────────────────────


ルミエールside

「それにしてもサウスターも魔人化したんですか?」

「いや、そういうわけじゃないよ。あれはアイツの元々の能力」

「どういうことですか?」

「サウスターは人間とアラクネのハーフだったんだよ。それで虐げられてきた。だから自分が幸せになるためにこんなことをしたんだって」

「そうでしたか……それにしても何故意識が?」

「薬の効果が切れたんだよ」

今回は意外にも戦闘に時間がかかっており、薬の効果が切れていた。

一回の薬の効果が15分ほどのものだ。

しかし、薬の効果が消えても、体への負荷は残っている。

実際、今も少ししんどい。

結構無茶な立ち回りをしていたらしい。

《ラファールランス》は壁に突き刺さってたし。

「どこに行くと思いますか?」

「多分王の間だよ」

「王の間……?」

「うん。サウスターはあの姿になって、言語こそ話せないけど、頭は冷静だと思う。だから人質をとって私達を倒そうって算段かな?」

「さすがですね……」

「急ぐよ!」

「はい」

私たちは箒に跨り、地下道を一気に進んでいく。

そして王の間にたどり着いた。

そこには王と王妃、王女を椅子に縛り付けたサウスターがいた。

「サウスター!」

「キシャアアアアルアアア!!」

私達は箒から降りて、サウスターと対峙する。

私の読み通り、人質を取る気満々だ。

今回の場合、一番の方法は……!!

「リファ、少し時間を稼いで!」

「わかりました」

そう言ってリファは《アムールエスパーダ》でサウスターに向かっていく。

私は王達に向かって声をかける。

「へスマイル国王カリスタ!!王妃ナルシタ!!王女アンジュ!!起きろ!!」

そう、今回に関して最も有効な手段。

それは王達の洗脳状態を解除する。

何故こんなことをするのか?

それはサウスターが散々バカにした人の心の強さを証明することで、動揺を生ませる。

そうすることで判断を鈍らせる。

人間は想定外のことが起こるとテンパって冷静な判断がしにくくなる。

「自分の国が好き勝手されてなんとも思わないのか!!一度力に屈したとしても、今は私たちがいる!!あなた達に力を貸すことが出来る!!だから起きろ!!この国のために、国民のために!!」

その瞬間、三人は一瞬体が動き、瞬きした後、目にハイライトが戻った。

「ルミエール殿……?」

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