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第33話《笑顔の国篇》敵は誰?

ルミエールside

「さて……オニキス!お願い出来る?」

翌日、私は分裂してもらったオニキスに盗聴器を持たせていた。

『任せて〜!』

そう言ってオニキスは地面の影に入っていった。

「これで後はこれをつけて、待機だね!」

私はリファに《盗聴器》の受話器を渡す。

「なるほど……これであの時も?」

「そう!」

「それで、どうするんですか?」

「引き篭もっていると怪しまれるかもしれないから一応出かけるつもりだよ?」

「別に問題ないんじゃですか?」

「普通なら、ね?」

「どういう意味ですか?」

「こういうのって何処からともなく監視されてるのが定石なの」

「そうなんですね?」

「そう!」

「でも、なぜわざわざ監視の目に晒される必要が?」

「人間ってね、自分の見えないところで何かしてると気になるもんなんだよ」

「なるほど……じゃあ敢えて観光している感じを出すことで、怪しまれにくくするという作戦なんですね?」

「That's right!じゃあ行こうか!」

「はい」

私達は服を着替え、宿を出た。


─────────────────────


「さて〜……何処行こっか?」

街へと繰り出していた私はリファにそんな質問をする。

「この国は娯楽が発展していると聞いています」

「まあ、笑顔の国って呼ばれてるくらいなんだからね〜!」

私は両手を頭の後ろで組みながら答える。

「では、まず手始めに、マッサージでも行きませんか?」

「マッサージか……」

最近、旅ばっかりだったから肩とか腰とか色々凝ってるんだよね〜……

「よし!行こうか!」

「はい」

私達は体を楽にするために、マッサージ店へと向かった。

「何名様ですか〜?」

マッサージ店に入ると非常に胡散臭い笑顔の店員が迎えてくれる。

やっぱり、不自然な笑顔すぎて気持ち悪いな……

早く倒さないと……!!

「二人です」

「二名様ですね〜?ではこちらからコースをお選びください!」

そう言って胡散臭い笑顔を貼り付けたまま、ボードを提示してくる。

そこには色々とコースが書かれていた。

しかし、マッサージに関して、私はど素人だ。

どれがいいか全くわからない。

そんな私の目に入ったのは一番下に書かれていたコース。

『おまかせコース』

この文字列を見た時、これしかないと確信した。

「おまかせコースで!!」

「では私は、全身オイルマッサージコースでお願いします」

「承りました〜!ではおまかせコースを選択頂いた方はこちらに、オイルマッサージコースを選んで頂いた方はこちらにどうぞ〜!」

私達は受付の指示に従い、移動する。

「では、また後で」

「うん!」


─────────────────────


部屋に案内された私の前に一人の女性がいた。

「ではまず、こちらの服に着替えてくださいね〜?」

そう言ってバスローブのような服を渡される。

「何処まで脱げばいいんでしょうか?」

「とりあえず、下着以外は全部お願いしますね〜?」

「わかりました!」

私は言われた通り、服と靴を脱ぎ、下着姿になる。

そしてその上からバスローブのような服を着用した。

「ではこちらへどうぞ〜!」

「は〜い!」

ここまではよかった。

ここから地獄が始まった。

私は言われた通り椅子に座った。

少し暗くて、どんな椅子かはわからなかった。

「では、肘置きに腕を置いてくださいね?」

言われて、腕を置く。

「それでは、始めましょうか!」

次の瞬間、私の手首と足首は拘束された。

「え!?」

私がよくよく椅子を見てみると、それはめちゃくちゃ見覚えのあるものだった。

これは……!!

そう、私が幼き頃開発したもの。

その名も『くすぐりマッサージ椅子』。

この発明品の目的は程よく気持ちよくなってもらうということ。

笑いにはストレス緩和やリラックス効果など『過剰でなければ』いい効果が得られる。

この発明品はそう言った目的のために開発されたものだ。

もちろん強さ調節ネジがある。

それを弄れるのはもう片方の人間だ。

すなわち、相手の塩梅によって毒にも薬にもなるというわけだ。

ここに案内されたのは自覚はないが、受付の時に少し強張った表情でも浮かべていたのだろう。

「相当、ストレスが溜まっているみたいなので、極でいきますね!」

店員は気味の悪い笑顔で言ってくる。

表情も相まって、拷問でもされる気分だ。

って今、なんて言った?

「えっ、ちょっ、まっ……!!」

私が喋る前に、椅子からマジックハンドが現れる。

そしてそれらは私の全身にピタリと指を置く。

「待って!そんなことされたら私……!!」

「では、施術スタート!」

店員のその声を同時に、マジックハンドは私をくすぐり始める。

耳、首、腋、脇腹、乳頭、おへそ、鼠蹊部、太もも、膝、膝裏、足の甲、足指の間、土踏まず、踵。

体のありとあらゆる部分をくすぐり倒していく。

「あひゃやはっやははひゃはややはっひゃはははやはははっやははややははは!くしゅぐたいいいひひいひいひひひひひひいひいい!とめてえええへへえっへっへへへっへっっへへっへ!」

「申し訳ありませんが、時間設定なので」

知ってるよ!!私が発明したんだから!!

頭では分かっていても止めてくれと懇願してしまう。

「あひゃやひゃやっひゃっやはっやはひゃははやはははひゃひゃはははは!いひひいいひぃひぃっひゃひぃふうひひひひいいひ!ひゃはやあひゃははひゃははやはひゃひゃひゃはは!」

くすぐったい。

たったそれだけに頭が支配される。

さらに最悪なことに、オイルまで追加してきた。

こんなのでくすぐられたら気持ちよくなっちゃう……!!

「はぁはぁ……ま、待って……休憩……させて……!」

機械にはそんなことを言っても無駄で。

「あひゃはややはやややっひゃひゃやははっひゃはひゃややははひゃっはやがはっははははははがひゃひゃはひゃひゃはややひゃはは!!」

くすぐったさは倍増し、最終的に漏らすと同時にイった。


─────────────────────


「はぁはぁ……」

「ルミ様?大丈夫ですか?」

「う、うん……大丈夫……」

くすぐり地獄から解放された私はすでに施術を終えていたリファと合流した。

「リファはどうだった?」

「非常に気持ちよかったです」

「え、エッチなことされたの!?」

「いえ、普通のマッサージです」

「そ、そっか……」

イったけど……

あんまり満足できなかったんだよね……

そんな私の雰囲気に気づいたのか、リファが耳元で。

「夜してあげますね?」

そんなことを言ってきた。

「な、なな……!」

「だって[[rb:欲求不満そうな > そういう]]顔してましたから」

「もう!リファ!」

「ふふふ……すいません、ついつい面白くって。でも、やってあげますよ?」

「えっ」

「じゃあ次、行きましょうか?」

そう言ってリファは私の手を取って店を出た。

「次は何処に行きましょうか?」

「射的しよ!」

「いいですよ?」

私は見つけた射的の屋台に駆け寄り、お金を払う。

「どっちが多く景品を落とせるか勝負だよ!」

「いいですよ?勝つのは私です」

「いいや!私が勝つよ!」

「では賭けましょう。ルミ様が勝てばなんでも言うことを聞いてあげます」

「リファが勝ったら?」

「欲望の限りを尽くさせてもらいます」

「えっ」

ナニされるの!?

気になるんだが!?

「始めますよ?」

「う、うん!」

やばい。これ、勝っても負けても問題ないんじゃね!?

でも、そんな簡単に負けるのも癪だし、頑張るけど!!

そう思い、私はコルク銃を構える。

まあ、結果からいえば惨敗だった。

「ルミ様、下手くそですね」

「うるさい!まあ、確かに一つも落とせなかったけど……」

「『当たったんだけどな〜』みたいな言い方しないでください。掠りもしてないじゃないですか」

「うぐ!」

まあ、うん。

私の放った弾丸は景品に当たることなく、空気を貫いていた。

色々出来ると思ってたんだけどなぁ……

やっぱ、出来ること少ないなぁ……

「はぁ……」

「そんなに気を落とすことないと思いますよ?」

「え?」

「ルミ様にはルミ様にしかない強みがあるじゃないですか」

「私にしかない強み……」

「だからそんなに自分を卑下する必要はないですよ?」

「そうだね……!!」

ん?ちょっと待てよ?

「なんでナチュラルに心読んでんすか」

「それよりも!賭け、忘れてないですよね?」

「分かってるよ。好きにしてください」

「勿論そのつもりです!」

そう言うリファはいつもより感情が昂っていたのか、鼻息が荒かったように感じた。

そんなリファにガシッと腕を掴まれた時には何処かラ◯ホみたいなとこに連れて行かれるんじゃないかと期待……もとい予感がした。

まあ、杞憂に終わっちゃったんだけど……

なんか残念そうって?

当たり前でしょ。

だってもしかしたら想い人とあんなことやこんなことが出来たかもしれないんだよ!?

そりゃ期待するでしょ!!

ゴホン。

閑話休題。

私が連れて行かれたのは意外なことに服屋だった。

「なんで?」

「一度、ルミ様をコーディネートしたいと思っていたんですよ!」

そう言ってリファは店内を物色し始める。

何処か嬉しそうな声色で。

「こんなのも似合うんじゃないですか!?」

そう言って色んな服を着させられた。

そんな時だった。

受話器から興味深いものが流れてきたのは。

『特に敵対行動は無し、か……』

「「!!」」

リファは私に視線を向けてくる。

この発言からするに、やはり私の読みは合っていたようで。

しかし、気になるのはどうやって監視しているのか。

だが、私はそれよりも、聞き覚えのある声に首を傾げていた。

どっかで聞いたことあるんだよね〜……

定期的に薬を摂取しているため、細かいことは消える。

しかし、聞き覚えがある以上、最近聞いたのだろう。

う〜んと頭を捻り、過去の記憶を遡っていく。

勿論その間もリファと一緒に服を選んでいる。

そして辿り着いた。

この声は、ライアスと戦っていた時に現れた、サウスターだ。

まさか、こんなところに居たとは……

すると今度はオニキスからだった。

『主〜!敵の場所わかったよ〜!』

その言葉を聞き、すぐに行動に移す。

「リファ、ちょっとお手洗いに行ってくるね!」

「はい!」

私はトイレに入る。

「何処に居た?」

『んっとね?お城の地下〜!』

「わかったありがとう!」

これではっきりした。

敵はサウスターだ。

ここの結論が出て、次に問題になるのは、どうやって私たちの行動を見ているかだ。

特に怪しい気配も感じない。

可能性は三つ。

一つは感じることの出来ないほど繊細で高度な索敵魔法。

二つ目は熟練の忍者のような存在が私たちをつけている。

三つ目は国民に細工をしている。

『さて……どうするかな……』

私がトイレに行ったと本気で信じているあたり、二つ目は無さそうだ。

もしも二つ目ならば、私が喋っていたことが分かるはずだ。

なら、一つ目か三つ目だ。

どっちにしても、サウスターを倒せば問題ないか!

そう思い、私は一旦リファの元に戻った。

「おかえりなさい」

「それで……決まった?」

「はい」

「本当にそんなに買うの?」

「全て似合いますから」

ようやく落ち着きを取り戻したのか、いつもの口調で言ってくる。

「では、お会計してきますね」

「え、あ、うん!」

両手に抱えるほどの服をリファはレジに持っていった。

何処かの富豪かな?

あの、『ここからここまで全部ください』的な。

改めて、愛されてるなと思った。

「今日は楽しかったし、帰ろっか!」

「はい」

服を全部仕舞って私はリファに言った。

「手、繋いでもいい?」

ちょっとくらい攻めてもいいよね!

そんな勇気の一歩に対してリファは。

「お断りします」

「えっ」

まさかの拒否を取った。

「な、なんで!?」

「汚いからです」

「私ってそんなに不潔!?」

「まあ、はい」

「ひどくない!?私、師匠だよね!?」

「あ、忘れてました」

「それも酷い!!」

私は頬を膨らませて抗議する。

「全く……仕方ありませんね」

そう言ってリファは私の手を取った。

しかも指同士を絡めて。

急な出来事に思わず顔を赤らめる。

「どうかしたんですか?」

「きゅ、急には心の準備がぁ……」

「本当に可愛いですね」

「う、うるさい!」

私とリファはそんな軽口を叩き合いながら、宿へと戻ったのだった。

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