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第22話《獣人の国篇》謝罪と宴会

ルミエールside

「頭を上げてよ!」

「いえ!!失礼極まりない行為をしてしまいました!!私が牢屋に入るべきです!!」

そういうとルナイトは服を脱いで下着姿になる。

「おいおい!だったら俺んとこに来いよ!」

「アンタには借りがあるからな!」

男達はルナイトに自分たちの牢屋に入るように促す。

「わかりました!!」

「ダメだよ!!」

私は必死で止めた。

「で、ですが……」

「自分の国に入国審査もせずに侵入してきた人がいれば捕まえるのは当然だから!!」

「ルミエール様がそこまでおっしゃるなら……」

そう言ってルナイトは服を着た。

それを見てホッと胸を撫で下ろす。

「そうだ!まずはお風呂にご案内致します!」

「ありがとう!」

ルナイトは牢屋を開け、私たちを案内してくれる。

「ごゆっくり!」

「ありがとう!」

私達は服を脱いで、浴場へ向かう。

「結構広いね〜!」

「………」

「か、体洗おっか!」

「………」

なんで無言なの!?

ルナイトが来てからというもの、リファは一向に口を開かない。

何か怒らせるようなことしたかな……?

原因が全く思い浮かばない。

だって、連行されて、取り調べされて、開放されただけだよね!?

私は物凄い困惑しながらも体を洗う。

特に足裏は念入りに。

若干くすぐったかったが、我慢だ。

相当汚かったらしく、泡はあっという間に真っ黒になった。

若干ザラザラしてる……後でオニキスにしてもらおっと!

チラチラ隣を見るが、リファは物凄い形相でこちらを一切見ずに、体を洗っている。

「あ、あの……」

「………」

「なんか怒ってます……?」

私がそう聞くと凄い形相のままこちらを見てくる。

「ひぃ!」

思わず漏らしそうになった。

だが、ここで負けたら意味ないぞ!

フレーフレー!私!

「何か気に触ることした……?」

「………」

首を動かす様子も口を開く様子もない。

ヤバい。詰んだ。

どうすんの!?どうしたらいいのこの状況!?

ずっと睨んでるしぃ……

なに!?よくある裸の付き合いってのはこういうのを解消出来るものなんじゃないの!?

私は困惑し続ける。

「と、とりあえずお風呂浸かろっか!」

私は『あはは〜……』と苦笑いしながら湯船に浸かる。

「ああ〜……いい湯だな〜……」

「………」

湯船に浸かっても尚、一言も喋らずムスッとした表情をしている。

「ねえ?私に何かしちゃったの?教えてよ〜……」

私は正面からグイッとリファに顔を近づける。

「……さい……」

「え?」

「私の理性が無くなる前に離れてくださいっ!!」

そう言ったリファの目は血走っており、飢えた獣の様な目だった。

改めて私は自分の体勢を確認する。

全裸で、上目遣いにリファに迫っている。

ヤバい!!

「ご、ごご、ごめん!!さ、誘ってるとかそういうつもりはなくて……!!」

「わかってます!!無意識なんでしょ!?でもこっちの身にもなってください!!一挙手一動が可愛くて可愛くてたまらないんですよ!?襲いたい欲を我慢してるんですよ!?修行ですよ!?」

怒涛のリファの言葉に私は顔を真っ赤にする。

「か、かわ……っ!」

そして頭から湯気を出して、バシャーンと湯船に倒れた。

「ル、ルミ様!?しっかりしてください!ルミ様ぁ〜!!」

やっぱり、褒められるのには慣れてないな〜……


─────────────────────


「───っん、う〜ん……」

私が目を覚ますとそこは見知らぬ天井だった。

どうやら相当デカいベッドに上に寝ているらしく、掛けられている布団もかなりのサイズはある。

ふと見ると机の上に突っ伏したまま眠っているリファを見つけた。

看病、してくれたんだ……

それはどことなく嬉しかった。

前よりももっともっと距離が近くなった気がする。

「───っん、う〜ん……」

そう言いながら体を伸ばしてこちらを見る。

「おはよう!」

リファは段々と顔を真っ赤にする。

寝起きを見られたのが恥ずかしいのだろうか?

「さ、先ほどは失礼しました……恥ずかしいところをお見せして……」

「ううん!気にしないで!」

「ルミ様って本当に褒められ慣れてないですよね」

「そ、そうかも」

「やっぱり『なんで魔法が使えないんだ』ばっかり言われてたからですか?」

「まあ、そんなとこかな。だから褒めてくれるのは嬉しいけどちょっと照れちゃうな……」

「では慣れましょう!」

「へ?」

気がつくと、リファは湯船で私が取ったような体勢になる。

「リ、リファ?」

「じゃあ今から一つずつ褒めていきますね?」

「いや、あの、そういうことじゃなくて……」

その時だった。

ドアがノックされ、開いたのは。

「失礼しま……」

入ってきたルナイトは私達の状況を見て固まり、顔を真っ赤にして。

「「あっ」」

「し、失礼しました〜!!」

アニメとかでよくある足をグルグルして去っていった。

「ま、待って〜!!」

「誤解なんです〜!!」

誤解を解くのにちょっと時間が掛かった。

「す、すみませんでした……勘違いしてしまって……」

「いえ、ルミ様は私に告白しているのであながち間違いではありませんよ?」

「え?」

「ちょっとリファ!?」

「事実じゃないんですか?初めて会ったあの時、『好き』と言ってくれたじゃないですか?」

「いや、それはそうだけど……」

「ですから“私の”ルミ様に手を出さないでくださいね?」

「……っ!!」

「こら!いつから私はリファの物になったんだ〜!」

「違うんですか?」

「ま、まだ違うし!」

「まだ、ですか?」

「いや、今のは言葉の綾で────」

こんな感じのやりとりをしばらく続けていた。

「そういえば、ルナイトはなんでこの部屋に?」

「はっ!そうでした!国王様がお呼びなのです!」

「国王様?なんで?」

「一応王女殿下じゃないですか!それに……」

「それに?」

「ここ、ビーストリアンの王宮ですからね?」

その言葉に私は固まった。

なんで知らん間に王宮に運ばれてんだよ!!

まぁ、断ると色々めんどくさそうなので会う事にした。


─────────────────────


「ラルジュ王国第四王女ルミエール=ラウエル様とその弟子、リファリア=リヴェルベロ様の御到着です!」

その掛け声と同時に目の前の扉が開かれる。

服装は正装の方がいいのだろうが、ちょっと言いたい事があったのでいつものブーツを素足履きし、いつもの服を着用している。

さらに太腿には投げナイフを収納するためのホルスターをつけ、腰にホルスターのついたベルトを巻いており、《ラファールランス》を背部の腰に、《クレシェンテアルク》を右腰に、《ファンタズムエッジ》を左腰にセットし、肩から《多重次元収納ポーチ》を下げている完全な冒険者装備だ。

「おぉ!ルミエール……殿……?」

若干戸惑った様子で私に声をかけてくる。

「どうも、ビーストリアン国王、リーゼルテ王!私はミスリルランクの冒険者、ルミエール=ラウエルと申します。」

「弟子のリファリア=リヴェルベロと言います。」

「え?」

「「「えぇぇぇぇ!?」」」

その空間にいた、獣人の貴族の人達が驚きの声を上げた。

「ど、どういうことかね……?」

「ですから私のことをもてはやす必要はないと言うことです!」

「え?」

「私は別に王女としてこの国に来たわけではありませんので!」

「そ、そうなのか?」

「はい。国王様にお伝えしようと思ったのですが、少し浮かれていたようでしたので」

ルナイトが告げる。

それに愕然とする表情を浮かべるリーゼルテ王。

「えっと、浮かれていたというのは……?」

「ルミエール殿下はなかなか表舞台には出てこないでしょう?だからこの人は楽しみにしていたのよ!ルミエール殿下と話せるのを」

そう言ってくるのはリーゼルテ王の奥方、トゥルンフィルス王妃だ。

「そうだったんですか?」

「あ、ああ……だが、王女としてきたわけではなかったのか……」

リーゼルテ王はガクッと肩を落とした。

「この人、張り切りすぎてパーティーの準備までしたのよ?」

「パーティー!?」

そんな物を開こうとしていたのか!

だから異常に人が居たんだ……

なんか、せっかくの行為を無駄にするのも悪いなぁ……

「じゃ、じゃあ事故ですが冒険者としての来日ということにしましょう!」

私の提案にパアッと表情を明るくするリーゼルテ王。

「では早速パーティーの準備をしないとな!!」

そう言って王座から降り、スキップしながら出ていった。

「ごめんなさいね、気を遣わせて」

「いいんですよ」

「最近、落ち込んでばかりだったから」

「何かあったんですか?」

「この国、ビーストリアンは基本的な住民は獣人でしょ?」

「はい」

「最近、色んなところで獣人に変装した輩が女性や子供を捕まえてオークションで売り捌いているらしいの」

非常に気に食わない。

私が最も嫌いな部類の輩だ。

「それで?」

「被害がどんどん増えていく一方で、どうしたものかと頭を悩ませていたのよ」

「そうだったんですね……」

「売り捌かれた子たちも行方知れずだし……」

一網打尽にしたいな……

でも、流石に今すぐはいけないか……

なら、明日にでも冒険者ギルドに行ってみるか。

ついでにリファの冒険者登録も済ませておきたいし。

「ごめんなさいね。こんな話をして」

「いえ、気にしないでください!では、一旦失礼します」

そう言って私はリファ連れて元の部屋に戻る。

さて……案は一つしか思い浮かばない。

私が獣人に変装してわざと攫われ、オークション会場で一網打尽にする方法。

問題は私の居場所を伝える方法だけど……

「ルミ様」

「なに?」

「今、『獣人に変装して輩を一網打尽にしてやろう』とか考えてましたよね?」

「!?!?!?」

な、なんで!?

エスパー!?

「ルミ様の考えくらいわかりますよ。似たことを前に一度されましたし」

「うぐっ」

「何故、わざわざ干渉するんですか?」

「え?」

「これは他国の問題です。そもそも私達が勝手に口出しできる様なものではないんです」

「それは私が『王女』だった場合の話ね?」

「まさか……!!」

そう、確かにリファの言う通りで『王女』としてこの国に来ているなら、この問題に干渉するのは避けた方がいい。

だが、今の私は『王女』ではなく『冒険者』として来たことになっている。

『冒険者』は世界各国どこでも依頼があれば国家問題にさえ干渉できる。

だからあの二人が私にさえ依頼してくれれば、私はこの問題に口出し出来る。

それが私の狙いだ。

だからパーティーでリーゼルテ王と話して私に依頼する様に仕向けるつもりだ。

「全く……あなたという人は……」

リファが呆れたように言ってくる。

するとドアがノックされる。

「ルミエール様、リファリア様。パーティーの準備が整いました」

「わかった!」

私達は会場へと足を運んだ。


─────────────────────


私達が会場に着くと待ってましたとばかりに注目を集める。

会場を端から端まで見渡すが、正装の人ばかりだった。

まあ、貴族の中でパーティーっていうのは正装で来るものってイメージがあるよね……

「ルミエール殿、音頭を頼めますかな?」

リーゼルテ王が言ってくる。

「わかりました!」

私はそれを承諾し、台の上に立った。

「みなさん、私のためにわざわざ足を運んでいただきありがとうございます!長い挨拶はしません!乾杯!」

「「「乾杯!」」」

そうしてパーティーは始まった。

お酒には弱いので、飲んでいるのはノンアルだ。

なんでノンアルってわかるかって?

答えは単純明快。

ノンアルに“した”からだ。

冒険者ギルドでのあの一件以降、私はアルコールを分解する薬をメディに開発してもらった。

その名も《酒精分解薬》!

これを受け取った飲み物に混ぜることでアルコールを分解してノンアルに変わるというわけだ!

「「「ルミエール様!」」」

「はいはい?」

「何故冒険者になられたんですか?」

「どんな依頼をこなしたのですか?」

「何故ビーストリアンに?」

めっちゃ質問攻めにあった。

どれから答えていいか分からず、戸惑っていると。

「皆様、落ち着いてください。ルミ様が困って居ます。質問なら“正妻”の私が答えますので、ルミ様はリーゼルテ王の元に」

「ありがとう!」

ちょっと気になる単語があったが一旦感謝してリーゼルテ王の元に向かった。

「リーゼルテ王!」

「おお!ルミエール殿!」

「ちょっとお話ししませんか?」

「ええ!」

私とリーゼルテ王はベランダに出る。

「最近、事件が多いみたいですね」

「あ、ああ……」

リーゼルテ王の表情が曇る。

「全部騎士団とかで解決しようとしていません?」

「当たり前だ!国の中の事件だ!私が解決せねばならん!」

「それじゃ、多分何の解決にもならないと思いますよ?」

「なんだと?」

「私、ちょっと前に大事な事に気付いたんです」

「大事な事?」

「はい。それは『出来ないことは誰かに頼ること』です」

「誰かに頼ること……」

「はい!」

そして、私は語り始める。

私の経験を。

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