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第21話《獣人の国篇》取り調べ

ルミエールside

獣人のおそらく、騎士団に連行された後、私達は投獄された。

床は無機質な物で、床と同じ素材で正面を除いて構成されており、正面は鉄格子のザ・牢屋という感じの場所に閉じ込められていた。

まさかの下着姿で。

服も武器もブーツさえ持って行かれた。

おかげで裸足に下着姿という本番一歩手前みたいな状態に陥っていた。

ふとリファを見ると何かに必死に耐えている様子だ。

やっぱ怒ってるよね〜!

私のことを知ってるなら尚更怒るよね〜!

それにしても暇だな〜……ポーチも取り上げられちゃったし……

それに床もザラザラして土っぽいから足裏真っ黒だし……

ベッドは硬いし……

早く取り調べでも始まんないかな〜……

でもこういうのは慣れちゃってるからな〜……

どっかの変態姉達のせいで……

よく懲罰室にぶち込まれてるからな〜!

正直言って逃げられるには逃げられる。

この牢の鍵はダイヤル式ではなく錠前式だ。

オニキスに言えばチョチョイと開けられる。

でもそれをすれば下手したら国際手配なんてこともあり得る。

だから一つずつ丁寧に、慎重にこなして行かなければならない。

そう言えばこの国の取り調べシステムに私の発明品が使われてた気がする……

多分あれはきっと《嘘発見器》だったはず。

お父様から『《ビーストリアン》から好評だった』って聞いていたから使用されているのは間違いない。

ならすぐに解放されるような本当の事を言えば問題ないだろう。

リファに関しても私の証言と本人の証言があれば問題はないだろう。

今の問題は、いつ取り調べが始まるか。

数ヶ月も放置されれば、冒険者資格が剥奪される可能性がある……

だからできるだけ早くして欲しいんだよね〜……

私はベッドに寝転がり、そんな事を思っていた。


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リファリアside

やばいやばい。

この状況は非常にマズい。

牢屋で下着姿のルミ様と二人きり。

襲いたい。

めちゃくちゃ襲いたい。

でも堪えろ、私。

ここは真面目な場所だ。

万が一見つかったらタダでは済まなさそうだ。

ルミ様は何にも言わないだろうけど。

何でそう断言できるのかって?

そんなの一つに決まっている。

ルミ様は責められるのがお好きな人だ。

だから文句はない。

先ほどからこちらをチラチラ見てくるけど、誘ってるんですか!?

襲いますよ!?

そんな言葉を口に出してしまえば、おそらくそういう事をしてしまうだろう。

そう言うのも悪くはない。

だが、初めてはもっといい雰囲気でやりたい。

だからまだ我慢だ。

ふと見ると、ルミ様はベッドに寝転がっていた。

その美しい御御足の足裏は黒く汚れていた。

あんなに可愛いルミ様の足裏が汚いなんて……

ゾクゾクしちゃう……!!

でも抑えなきゃ!!

そんな私を不思議そうにルミ様が見つめていたが気にしないことにした。


─────────────────────


ルミエールside

私たちが収容されてどれくらい経っただろうか。

陽光が差し込まないので時間がわからない。

そんな時、私たちを捕まえた獣人が牢屋に来た。

「取り調べの時間だ」

待ってました!!

扱いは罪人と一緒で、拘束された状態で取り調べ室に連れて行かれる。

収容されている人が鼻の下を伸ばしていた。

「おい、あの前の子、ぺったんこだぞ!」

「あれはぺったんこってレベルじゃねえ!壁だ壁!」

「やべえ、ぶち犯してえ!」

「いい声で啼きそうじゃね?」

「わかる〜!ああいうのを征服したいよね〜!」

「ああ〜!孕ませて〜!」

ぶっ殺してやろうか。

そんな事を思っていたけど、リファを見た途端に怯えた表情になっていた。

そんなに怖いのかな……?

そう思い振り返るが、リファはニコニコしていた。

余計訳がわからない……

それにしても早くお風呂入りたいなぁ〜……

足裏ホントに真っ黒だし、虫も踏んじゃったし。

まあ、囚人なんかにいい場所を提供する価値がないのは同意だけど。

そんな事を思っていると取り調べ室に到着し、別々の部屋に入れられる。

そして予想通り体中に色々と取り付けられる。

そう《嘘発見器》である。

「さて……話を聞こうか?ちなみに嘘をついても無駄だ」

知っている。

一応嘘発見器と銘打ってはいるが、これはどちらかというと記憶捜査の一種の『ポリグラフ検査』だ。

知らない方のために説明しよう!

『ポリグラフ検査とは皮膚電気活動や呼吸、心拍などを同時に測定し、その結果をもとに、特に犯罪捜査などの事情聴取の過程で、特定の事実について知っているか否かを鑑別する手がかりとするものである』by Wikipedia

だが、前世では『証拠能力』がなく、証拠として認められなかった。

だが、この世界は違う。

前の世界よりも色々と下手な人が多く、『証拠能力』があると判断されている。

まあ、もちろん魔石も使っていて、邪な気配を感じれば反応するようになっているので間違えることはほぼない。

ちなみに魔石のことはこの国の人たちは知らない。

取り調べの際、犯罪者と思われる人たちから魔力を吸い上げてるので問題はない。

「その前に一つ、いいですか?」

「なんだ?」

「お名前を聞いてもいいですかね?」

「名前……?別にいいが……私はルナイトだ。」

「よろしくお願いします!」

私の元気のいい返事にちょっとびっくりしていた。

「質問していく。お前はこの領土に侵略目的で来たのか?」

「いいえ。」

もちろん全くそんなつもりはない。

「ちょっとワームホールに巻き込まれまして」

「そうか。では次だ。所持品について」

マジか……

「これらの武器はなんだ?これは投げナイフだとは思うが、他二つがわからん」

「剣と槍と弓です」

「どこがだ?」

「じゃあ一番左の剣のボタンを押してみてください」

私に言われてボタンを押す。

すると剣先が展開される。

「うわっ!び、びっくりした……」

おっと、素が出てますよ?

「すごい!これすごい!」

ルナイトは子供のような声を出し、夢中になって《ファンタズムエッジ》を振り回す。

「あの……」

「あ……す、すまない」

ルナイトは大人びた声に戻し、剣先を元に戻しておく。

「弓も一緒ですよ」

私に言われ、ボタンを押し、《クレシェンテアルク》の弦と矢を展開する。

「おぉ〜!」

この人、ホントに大丈夫なのだろうか。

「最後は槍ですね。組み立て式です。右から順に先端、真ん中、末端です。」

ルナイトは槍を組み立てる。

「これどうやって作ったんだ?」

槍を狭い取り調べ室でブンブン振り回しながら私に言ってくる。

「父に言うなと止められておりまして……」

「容疑者に秘密は許されん。お前の父親は誰だ。私が許可を取らせよう。」

獣人の特徴として同じ血を引く者なら念話が出来るというものがある。

要はルナイトの家族が世界中にいるのだろう。

まあとりあえず言うか。

「レザンです。レザン=ラウエル」

「??????」

ルナイトは困惑した。

それはそうだろう。

急に一国の王の名前が出てくるのだから。

「う、嘘だよな?」

ルナイトは《嘘発見器》を見ていた人に聞く。

しかしその人は首を横に振る。

「え?じゃあお前、じゃなくて貴方は……」

「あ、名乗ってなかったですね!私の名はルミエール=ラウエルと言います!」

私の名前を聞いてルナイトは卒倒した。

「ええ!?だ、大丈夫ですか!?」

どうやら解放までもう少しのようだ。


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リファリアside

私が理性をギリギリで保っていた頃、取り調べの時間が来た。

これで解放してもらわねば!!

こんな最悪の環境でルミ様をいつまでも居させられない!!

前を歩くルミ様の足裏はさらに黒く汚れ、虫の死骸も付いていた。

おそらく、私の足裏もあんな感じになっているのだろう。

そんな事を思いながら着いていっていると収容されている人が鼻の下を伸ばしていた。

「おい、あの前の子、ぺったんこだぞ!」

「あれはぺったんこってレベルじゃねえ!壁だ壁!」

「やべえ、ぶち犯してえ!」

「いい声で啼きそうじゃね?」

「わかる〜!ああいうのを征服したいよね〜!」

「ああ〜!孕ませて〜!」

ぶっ殺す。

そうしたいが自由を奪われているためそんなことは出来ない。

なので、殺気で睨んでおく。

その途端、急にしおらしくなった。

それを不思議に思ったルミ様が振り返ってくる。

流石に睨んだ顔を見せられないので満面の笑みを浮かべておく。

そして取り調べ室に到着し、別々の部屋に入れられ、体中に色々と取り付けられる。

これは一体なんだろう。

「では質問を開始する。」

目の前には獣人の男。

しっかりと公私の区別はつけているようで真面目に話してくる。

「名前を聞かせてもらおう。」

「リファリア=リヴェルベロです。」

「ここでの生活はどうだ?」

「理性が飛びそうなのでやめてほしいです。」

「ど、どういう意味だ……?」

男が若干引いた感じで聞いてくる。

「ルミ様を襲ってしまいそうと言う意味です。もちろん性的な意味で」

「は?」

男は素で聞き返してくる。

「お前は、そいつを愛しているのか……?」

「ええ。愛していますよ?非常に」

「相手は同性だぞ……?」

「それの何が悪いんですか?人の価値観を縛らないでください。」

私は作業的に質問に答える。

声色は一切変えず。

「し、質問を変えよう。何故ここに来た?」

「私の失態です。私がワームホールに巻き込まれたせいでルミ様も……」

今でも悔しい。

もっと、もっと警戒していればこんなことにはならず、ルミ様も窮屈な思いをしなくて済んだはずだ。

「では、我が国を侵略する目的はない、と?」

「はい。全く」

これっぽっちもない。

ルミ様がいれば私は幸せなのだ。

依存しているつもりはない。

現に、頼るときは頼るがある程度は自分で解決する。

それにルミ様がいない時は寂しいよりも心配が勝る。

だからさっさと解放されて、ルミ様を抱きしめたい。

「ちなみに聞かせてもらうがお前の言う『ルミ様』の本名は……」

「ルミエール=ラウエル。ラルジュ王国第四王女にして、ミスリルランクの冒険者、通称戦乙女パンドラ

私のその言葉を聞いて、何かを見ていた人の方を向くが、その人は首を横に振る。

すると男が卒倒した。


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ルミエールside

あの後、一旦牢屋に帰された。

「あ〜あ……ルナイトさん倒れちゃったよ……」

「私の取り調べをした方も倒れてしまいました」

「まさか……」

「「ルミ様の名前を聞いただけで……」」

それを言って、思わず吹き出した。

「「ぷっ、あはははは!」」

「きっと今頃、信じられなくて何回も確認してるだろうな〜!」

《嘘発見器》の『証拠能力』は高い。

でも100%ではない。

それを知っているからこそ、調べるのだろう。

まあ、結局行き着く事実は私が王女っていうことなんだけどね〜……

有罪になりそうにないからいいけど……

ここ、《ビーストリアン》の刑はかなり重いしキツい。

何がキツいかって?

男女に慈悲はない。

前世にあったような倫理的にダメな事がない。

だから男だろうが女だろうが囚人たちの性欲処理になったり、民衆の前で全裸にされたりと結構ヤバいのがある。

だから先ほどの囚人たちはあんな発言をしていた。

私たちが有罪になれば、私たちを犯せる可能性があるから。

個人的に好きでもない奴らとの行為は死罪よりもキツい。

メディやリスカル、お姉様達でさえ、若干怪しい。

一番はリファがいいけど。

そんな奴らとの行為は嫌だ。

この世界にゴムと言う概念はない。

だから中に出されれば、孕む可能性が高い。

怖すぎる。

この世界はレイプしやすい。

街を見て歩いているとよく分かる。

人通りの多い場所、少ない場所の差が顕著だ。

だからヤバい。

それに性病という概念もなく、症状がでれば穢れた子という汚名を着せられる。

これを見て、本当に避妊というか、ゴムって大事なんだなと思う。

何の話をしているんだよ。

そんな脳内での一人漫才をしていると、牢屋の前に再びルナイトが現れた。

そして。

「申し訳ございませんでしたっ!!!」

全力の土下座を見せてきた。

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