ルミエールside
「グルガアアアア!!」
キメラとなったライアスは暴れていた。
元に戻す方法は知らない……
倒すしかないのか……
私は《ファンタズムエッジ》の柄をギュッと握り締め、ライアスに斬りかかる。
「はあああ!!」
「グルガアアアア!!」
私の斬撃は硬いドラゴンの鱗で弾かれる。
「くっ!」
「グルガアアアア!!」
ライアスは前足で攻撃してくる。
私は避けるが左腕に掠める。
「うっ……!!」
引っ掻き傷のようなものが付き、服に血が滲む。
一旦距離を取ろうと《シエル》に乗り、空中に行く。
「グルガアアアア!!」
そんな私をライアスは追ってくる。
「だよね……」
私は《ファンタズムエッジ》を仕舞い、《クレシェンテアルク》を取り出してボタンを押して弦と矢を生成する。
翼を撃ち抜けば!!
私は《シエル》の上に立ち、弦を引いて構える。
「─────ふっ!!」
私は翼の根元を狙って発射する。
矢は狙い通りにヒットするが、ライアス全く動じる気配がない。
痛覚が無い……?
「グルガアアアア!!」
すると今度は火を吐いてきた。
「やべ!」
私は避けるために《シエル》から飛び降りる。
その落下中に《シエル》を呼んで乗り、矢を発射する。
しかし、これも効いている気配がない。
さて……どうしたものか……
私は《クレシェンテアルク》を仕舞い、考えていた。
目を潰してみるか!
私は一気に高度を上げ、ライアスと同じ目線まで行き、ナイフを投げた。
すると左目にしっかりと刺さる。
だが、痛覚はないようで、尻尾を振り回して、鞭の要領で私にヒットさせる。
「うあああ!!」
私は《シエル》から弾き飛ばされ、地面に体を打ちつける。
戦闘中ということも相まって、アドレナリンで痛みはさほどない。
でも、回復は大事!
私はポーチから《即効完全薬》を取り出して飲む。
なら今度は!
私は背部の腰から《ラファールランス》を取り出して、組み立てる。
「グルガアアアア!!」
そんなけたたましい雄叫びと共に、ライアスは空から襲ってくる。
私は左手首のブレスレットに触れ、《シエル》を呼び出す。
そしてそのまま《シエル》に掴まり、ライアスの背後に回る。
そこで《シエル》から手を離し、ライアスの背中に降りると同時に槍を突き立てる。
「グルガアアアア!!」
背中に乗られたことに気付いたようで、ライアスは暴れまくり、私は振り落とす。
その勢いに私は地面を転がる。
「グルガアアアア!!」
やはり素の状態では勝ち切るのは厳しいな……
「だったら……!!」
私はポーチから《パンドラ》を取り出す。
副作用が如何とか言ってられない!
アルタイルを、ライアスを救うんだ!
もし何かあってもきっとリファなら!!
そう、この薬を使い、もし副作用で私に何かあった場合どうするのかと言われ、私は作戦を立てた、というよりリファの性格を読んだ。
私が自らを囮に使う作戦を実行していると知れば、きっと心配で私の元に来るはず。
これを利用した。
私の元に必ず来るなら、副作用があっても心配ないと。
だからカーニャにこのことを話し、リファが私の元に来るように誘導して貰った。
カーニャならきっと誘導してくれたはず!
なら今の私のやることは一つ!
私は錠剤を一粒口の中に放り込んだ。
それと同時に物凄い力が湧き上がってくる。
そして《ファンタズムエッジ》を構えて。
「あなたを止める!!」
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リファリアside
私は無我夢中で走っていた。
馬車に乗り込む時間も惜しいほどに急いでいた。
ルミ様……!!
無事でいてください……!!
王宮を出て、どれくらい経っただろうか。
私は実家に到着していた。
「はぁはぁ……はぁはぁ……」
私は両開きの玄関のドアに手を掛け。
「ルミ様!!ご無事ですか!!」
開くと同時にそう言った。
「リファ!」
「お母様!」
ドアを開けた私の目の前に飛び込んできた光景は、お父様とお母様、バトラーにリスカルがいて、横になって倒れているお姉様がいた。
「お姉様!!」
私はすぐさまお姉様に駆け寄る。
「大丈夫だ。気を失ってるだけだ。」
「そうですか……」
「そうだ!ルミ様は!?」
「アイツは戦いに行ったぞ。黒幕とな」
一歩遅かったですか……!!
でも無事でよかった……
「─────っん、う〜ん……」
「「「リスター(お姉様)!!」」」
「あれ……?私、確か……はっ!お父様!ラウールは敵です!」
「ああ。知っている」
「どういうことですか?」
「リスター。アンタは操られてたんだ、そのラウール、いやライアスという男にな」
「早く何とかしないと……!!」
「大丈夫よ。ルミエール様がなんとかしてくださるから」
「ルミエール様が……?あの方そんなに強かったのですか?」
「もしかして操られていた三年間の記憶はないのか?」
「三年間も操られていたのですか!?」
「それにしても何故お姉様を……」
「最初の狙いはリファだった」
「え!?」
リスカルの言葉に動揺が隠せない。
「ライアスは最初、リファを狙っていたんだがそれを……」
「私が庇ったのよ。ラウールの、ライアスの本当の目的を知ったからね」
「なんでですか……?」
「あなたが大事な妹だからよ。周りがなんと言おうとも私にとって唯一無二の大事な妹」
そう言ってお姉様は私を抱き締めた。
「お姉……様……!!」
私は涙が溢れて止まらなかった。
ああ……これがカーニャの言っていた『救われる』ということなんだ……
これがルミ様の凄さなんだ……
全てを調べ上げ、全てを解決する人。
それがルミエール=ラウエルなのだ。
「長い間、心配かけたわね……」
「いえ……急に冷たくなって……私、嫌われたんじゃないかって……!!」
「そんなことあるわけないじゃない。私はいつだってリファの味方で、大好きなんだから!」
「お姉様ぁ……!!」
それからも少しの間泣き続けた。
「お姉様、私いかなきゃいけないの。師匠が、大事な人が待ってるから。」
「そう……行ってきなさい!あなたはあなたの思うがままに羽ばたきなさい!」
「はい!」
「俺も行く。何かあった時、人手は多い方がいいからな」
「行きましょう!」
私は懐から《量産型シエル》を取り出す。
《量産型シエル》はその名の通り、ルミ様の持つ《シエル》の量産型だ。
機能面において差異はなく、違うのはブレスレットでの呼び出しが不可能だという点のみだ。
私達はそんな《量産型シエル》に乗り、ルミ様を探しに出かけた。
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ルミエールside
「はあああああ!!」
私が《ファンタズムエッジ》で斬りかかると、先ほどまでは剣の通らなかった胴に剣が通る。
「グルガアアアア!!」
血を噴き出しながらも、私に噛みつこうとしてくる。
私はそれをバックステップで避ける。
流石、メディの薬!!
「グルガアアアア!!」
ライアスは羽ばたいて空に滞空する。そして口を開け、魔法の発射準備をする。
「なら……!!」
私もそれに対抗するように、《ファンタズムエッジ》を地面に突き刺し、右腰から《クレシェンテアルク》を取り外す。
そしてボタンを押して、弦と矢を展開する。
目一杯弦を引いて。
「グルガアアアア!!」
「─────ふっ!!」
私の放った矢とライアスの放った火の球はぶつかり合い、私の矢が押し勝ち、ライアスの翼を根元から削ぎ落とす。
「グルガアアアア!!」
バランスを崩したライアスは墜落する。
削ぎ落とした翼は消滅した。
これ、倒したら消滅しちゃうんだ……
お墓を作ろうと思っていたがそれは無理らしい。
なら、せめて安らかに。
前回のドラゴン戦での《諸刃の剣(リミット・オーバー)》。
あれはその使い方を想定してないものだった。
でも今回修理した時に、その機能を搭載した!
かなり苦労したけど……
でもお陰で破損することはなく、ただ魔力が空っぽになるだけになった。
「《諸刃の剣(リミット・オーバー)》!!」
その宣言と共に《ファンタズムエッジ》の剣先は超巨大になる。
この機能をアクティブにするために音声認証が必要だ。
ちゃんと私の声じゃないと反応しないようになっている。
ライアス、安らかに眠れ……!!
「はあああああああああ!!!」
私は剣を振り下ろした。
その一撃はライアスを真っ二つに斬り伏せた。
『ありがとう』
私の耳にはライアスがそう言った気がした。
「グルガアアアア!!!」
そんな雄叫びを上げながらライアスは消滅した。
そしてカランカランという音共に背中に突き刺さっていた《ラファールランス》と目に刺さっていたナイフが落ちた。
私がそれを回収し、収納した後。
「「ルミ
リファとリスカルが来た。
「大丈夫でしたか!?」
「うん。一応ね……」
「それでライアスは!?」
「消えちゃった……この世から」
「それはどういう……」
その時だった。
私は意識が遠退く感じがした。
ヤバい……なんだろう……意識が……
私は頭を抑えた。
そして私の意識は何かに飲み込まれた。
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リファリアside
私達はルミ様を発見した。
そこまではよかったのだが……
ルミ様が急に頭を抑え出した。
「ルミ様!?大丈夫ですか!?ルミ様!?」
「おい!どうした!?」
しばらく苦悶の表情を浮かべた後、手を下ろし、俯いた。
「ルミ様?」
気がつけば頬に浅い切り傷が出来ていた。
「リファ!!離れろ!!」
リスカルの言葉にすぐさま距離を取る。
「お前は……誰だ……!!」
「……………」
ルミ様は無言で《ファンタズムエッジ》を抜き、リスカルに襲いかかる。
リスカルはそれを回避するが、完全には避けられていない。
傷はどんどん増えていく。
「ルミ様!!止めてください!!相手はリスカルです!!敵ではありません!!」
「……………」
私の声は届いていないのか、無言で攻撃し続ける。
「リファ!!コイツをどうにかしろ!!お前なら出来るはずだ!!」
「ですが……」
「お前以外に出来るやつはいねえ!」
リスカルのその言葉に手を震わせながらも、《アムールエスパーダ》を抜き、ルミ様とリスカルの間に割って入りる。
「……………」
「目を覚ましてください!!」
「……………」
すみません……ルミ様……!!
私はルミ様のお腹に蹴りを入れ、吹き飛ばす。
ルミ様は地面を転がるが、反動を利用して立ち上がる。
「……………」
その後、勢いをつけて私に斬りかかってくる。
そして私はそれを防ぐ動作を見せずにただルミ様を見据える。
私は信じています。
ルミ様ならきっと。
「リファ!!」
そして《ファンタズムエッジ》は私に振り下ろされる。
しかし……
「ルミ様……」
剣先が震え、寸前で止まっていた。
私はすぐさま抱き締めた。
「リ……ファ……」
どうやら自我を取り戻したらしい。
「ルミ様なら止めるって信じてました。」
「ごめん……まさか副作用があんなんだとは思わなくて……」
「いいのです。私はルミ様の弟子であり、相棒なんですから」
「リファ……」
そんな時に水を差すような輩が現れた。
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ルミエールside
まさか、《パンドラ》の副作用が『暴走』だったなんて……ドラゴン恐るべし。
そうだな……この暴走は《スタンピード》と名付けよう!
そんなことを思っていると。
「な〜んだ。つまんないの〜」
お気楽な声が聞こえてきた。
「誰だ?」
私は知っていた。
コイツはライアスを仲間に引き込んだ……!!
「ケイオス……!!」
「へえ〜!僕の名前知ってるんだ〜!サウスターの仕業かな?そんなことはどうでもいいや!せっかくいい人材を仲間に出来たと思ったんだけどな〜!でも面白いよね!コイツ、僕が女と子供を殺したことを知らないで復讐に明け暮れてたんだよ?バカみたいだよね〜!!」
「ふざけるな!!」
「ふざけてないけど?」
「ここであなたを倒す!!」
「残念だけど[[rb:ま > ・]][[rb:だ > ・]]やる気はないんだ〜!でもちょっと邪魔だからどっかいってね?」
そう言ってケイオスが指を鳴らすと巨大なワームホールが開く。
「きゃあああ!!」
「リファ!!」
リファはワームホールの中に吸い込まれる。
あまりの吸引力に私も吸い込まれそうになる。
リファを助けなきゃ!!
「リスカル!!みんなに伝えて!!必ず戻るから心配しないでって!!」
「だが……!!」
「いいから!早く!!」
「わかった!!」
リスカルはその場から一生懸命走り去った。
それを見届けた後、私もまたワームホールに吸い込まれた。
「ふふっ!これからもっと楽しくなりそうだね〜!」
ケイオスはそう言って去っていった。