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第16話《異変の正体篇》精神支配

ルミエールside

メディから薬、《パンドラ》をもらった翌日。

私は変装し、リヴェルベロ家の前に立っていた。

「オニキス、私、わざと捕まるつもりだからね?」

『わかった〜!』

「でももし、気を失った後に殺しにかかって来たら反撃して。」

『わかった〜!』

「それと分裂してくれる?」

『いいよ〜!』

そういうとオニキスは二匹に分裂する。

そのもう一匹に《盗聴器》を渡す。

「私が捕まった後、《盗聴器》を渡した君が私を捕まえた人の影に入って!それで、もう一人の君には気絶した私にこれを飲ませてほしいの!」

そう言って《即効完全薬》を渡す。

『わかった〜!』

変装は完璧だ。

パーフェクトなメイド服に、メイドカチューシャ。

声もいつもよりは高めに設定している。

髪の色も銀色に変えている。

絶対にバレない自信がある!

さぁ、作戦開始だ!

「旦那様、奥様。今日からお世話になります。メイドのリーシャンです。よろしくお願いします。」

「おぉ!来てくれたか!一週間前に雇った執事が行方を眩ませてな……」

中身が私と知らず、そう話してくるのはリヴェルベロ家の主、クリファ=リヴェルベロ。

その隣のいるのは奥さんのルミネイト=リヴェルベロ。

その後ろにいるのは執事長のバトラー。

「では、君はラウールの元で勉強しなさい。」

「はい。承りました。質問なのですが、ラウールさんはこちらに勤めてどれほどでしょうか?」

「三年くらいだな……」

「なるほど。わかりました」

早速本命来た〜!!

さて……

私は気合いを入れる。

すると奥からラウールと呼ばれた執事が出てくる。

「よろしくお願いします。ラウールさん」

「あぁ。」

そのラウールの後ろには一人の少女がいた。

おそらく、リファの姉、リスターだろう。

リスターの首には怪しげに光る紫の宝石が填められたネックレスがあった。

私はそれが気になったが、今はラウールに意識を向ける。

「では、まずは屋敷を案内しよう」

「はい」

そう言ってラウールとリスターは歩き出す。

それを私は追う。

この屋敷のどこかにリスカルがいるはず……

「ここが厨房。」

「はい」

「ここは書斎。」

「はい」

「ここは……」

ラウールが説明していく中、私は一つのドアが気になった。

「ここは?」

「私の部屋です。」

「そうですか」

屋敷の中に従者が自分の部屋を持つということはそこそこの立ち位置にいるということだ。

リスターが近くにいることからリスターの専属執事といったような立ち位置なのだろう。

後で侵入しよう。

そうすれば流石に襲ってくるだろう。

「これで一通りだ。」

「了解致しました。」

「メイドなのだから仕事はわかるよな?」

「はい」

「では仕事を始めろ。」

「はい」

ラウールの指示を受け、仕事を開始する。

とりあえず、掃除しながらもう少し屋敷を探索する。

どうやら怪しいところは見つけられない。

もしかして、屋敷の中じゃない……?

流石に本人の部屋ならバレるはず。

なら可能性は二つ。

一つ目は庭のどこかにあること。

二つ目は隠し部屋の可能性。

おそらく後者の方が高いと思っている。

理由は二つ。

一つ目はリスカルが脱出出来ていない。

リスカルは元盗賊だ。

だから紐抜けくらい簡単にできる。

でもそのリスカルが脱出出来ていないということは内側からでは開けられないパターンだ。

もう一つは庭の範囲だ。

このリヴェルベロ家は伯爵家でありながらそれほど大きな敷地を抱えてはいない。

庭もそれほど大きくなく、閉じ込められる場所が少ないという事だ。

「さて……」

一通り掃除を終えたので早速誘い出そうと思う。

私はラウールの部屋の前に立っていた。

もちろん他の人が来ないことは確認済みだ。

クリファさんは用事で外出。

ルミネイトさんはバトラーさんとアフタヌーンティー。

他のメイドは買い出しやら色々している。

よし!

私は扉を開こうとするが開かない。

鍵がかかってる。

こんな時はピッキングだ!

私は懐から針金を取り出し、鍵穴に入れ、ガチャガチャと動かす。

するとガチャっという音がした。

私はドアを開け、中に入る。

暗い。

だがしっかりと整理されている。

怪しいものは一見するとない……

そんなこと考えていた時だった。

背後から気配を感じ、振り返る前に手刀で気絶させられた。

「全く……アイツの仲間か……とりあえず同じところに閉じ込めておくか……」

ラウールは私を隠し部屋に突っ込んだ。

その隙にオニキスの分裂体がラウールの影に入る。

それにラウールは気づかずに。


─────────────────────


「────はっ……!!」

私はオニキスに飲まされた《即効完全薬》で意識を取り戻した。

「お前なぁ……」

若干諦めた声を上げるリスカルと再会できた。

「おぉ〜!リスカル!無事だったんだね〜!オニキス、お願い!」

『わかったよ〜!』

オニキスは私達の拘束を切ってくれた。

「さて……とりあえずこれ飲んで!」

「サンキュー……」

やはり栄養は摂れていなかったようだ。

私は《即効完全薬》をリスカルに飲ませる。

「おぉ〜!流石だな!」

この《即効完全薬》は栄養補填も可能だ。

「さて……何でお前まで捕まってんだよ!!」

盛大なツッコミを受けた。

それはそうだ。

作戦を説明していないんだもの。

「大丈夫!これは作戦だから!」

「作戦?」

「そう!色々探るためのね?」

そう言った。

「とりあえず情報交換だ。」

「うん」

「まず、リスターは精神支配されている。」

「精神支配?」

「ああ。お前も潜入したなら見ただろ?リスターのネックレス」

「うん。あの怪しそうなやつ!なんかちょっと気になったけど。」

「それは正解だ。」

「ホント!?」

「ああ。俺は元盗賊だ。あれを見たことがある」

「流石リスカル!」

「あれは《呪宝具 カースパペット》だ。」

「呪宝具……」

「あれをつけられた者は所有者の傀儡に変わる。」

「なるほど……だからリファに冷たくなったんだ……!」

「ああ。まだ目的は探れていないがな……」

「そうだね……」

「というか作戦って何だよ!!俺聞いてねえぞ!?」

「当たり前だよ!言ってないもん!」

「じゃあ教えろよ!」

「しょうがないな〜!」

私はリスカルに作戦の概要を話した。

「お前、相当無茶苦茶な作戦を立てるな……」

「そうかな?」

「当たり前だろ!!お前、一応王女なんだぞ!?そんなんが自分をわざと襲わせて俺の場所を探り出すとかやばいだろ!!」

「えへへ〜……」

「ほめてねえよ!!」

「それにしてもここ、何もないね……」

「だよな……」

ここは独房みたいな感じで、窓はおろか、入り口は一つしかない。

「とりあえず、動きがあってもすぐわかるようにこれを耳につけといて!」

「これは?《盗聴器》の受話器!」

「《盗聴器》……?」

「そう!これはその名の通り、盗聴出来るんだ!」

「なるほど……だから『クイーンシャドースライム』の分裂をラウールに忍ばせておいたのか……」

「正解!」

「これつけとけばラウールの動きがわかるし、目的とかもわかるかも!」

「じゃあしばらく様子見ってことだな?」

「そう!」

私たちは壁に持たれかかって座った。

暇すぎる……

そんな時は!

「オニキス!」

『なあに〜?』

「私のポーチ出して!」

『わかったよ〜!』

オニキスは私のポーチを出してくてる。

私はその中から立方体を出す。

六面とも色が違う。

そう、ルービックキューブだ。

「何だそれ!?」

「ルービックキューブって言ってね?こうやって回してグチャグチャにして、それをもう一回揃えるっていうめちゃくちゃ時間潰しになるおもちゃ!」

「へぇ〜!」

「やってみる?」

「おう!」

俺はルービックキューブを混ぜ混ぜし、リスカルに渡す。

「これどれぐらいで出来るんだ?」

「私が知ってる最速は……3秒だったかな?」

「はぁ!?3秒!?マジかよ!」

ギネスはそれぐらいだったはず……

リスカルがルービックキューブをガチャガチャと動かしては『ん〜……』と頭を悩ませていた。

じゃあ私は知恵の輪でもしようかな〜……

私はポーチから知恵の輪を取り出して、遊び出した。


─────────────────────


リファリアside

私が朝起きるとルミ様はすでにいなかった。

「あれ?ルミ様はいないのですか?」

「はい。お出掛けになりました」

「そうですか……」

「戦闘訓練でも致しますか?」

「え!?カーニャ、戦えるんですか!?」

「ええ。誰がルミ様の戦闘訓練をしてきたと思っているんですか?とりあえず、外にいきましょうか」

驚愕の事実が判明した。

まさかカーニャがメイド業務以外にも戦闘が出来たなんて……

私たちは一旦、アトリエを出て、外の庭兼訓練場に来た。

「ちなみに武器も作ってもらっています。護身用ということなのでそれほど複雑でも、大きくも無いんですが」

「どこに……?」

今のカーニャを見ても全くわからない。

「例えばこれとか」

そういうとカーニャは踏み込んで、宙に蹴りを入れた。

すると強風が顔に当たり、草木が揺れる。

「へ?」

思わず間の抜けた声が出てしまった。

「これは《魔力集中重圧靴》と言いまして、踏み込むことで靴裏に魔力が溜まって蹴りの威力を高めるという発明品なんですよ。」

「すごい……」

「ええ……全くです。」

ルミ様は奇想天外な発想で様々な発明品を作っている。

魔力を使った火を使わない加熱器具や、水を沸かす機械など。

「他にもありますよ?」

「他にも!?」

「ええ。例えば……」

そう言ってカーニャはスカートを捲り、太腿を見せる。

そこにはホルダーに嵌った何かがあった。

「これは?」

「《捕縛銃》と言いまして、この引き金を引くとワイヤーが発射されて敵を縛ることが出来ます。」

「それはすごいですね……」

「ちなみにもう片方にはナイフを仕舞ってます。」

「ルミ様、流石ですね……」

「当たり前よ!」

私とカーニャがそんなことを話していると、メディ様が話しかけて来た。

「と言いますと?」

「ルミは国王様達に私を認めさせたのよ?」

「え!?」

そうしてメディ様は語り始める。


─────────────────────


メディスンside

「大丈夫!私と来て!」

私はルミの手を取り、着いて行った。

「……って王宮!?」

「あれ?言ってなかったっけ?私、このラルジュ王国の第四王女だよ?」

「し、知らなかった……元居た村から出たことがないし、情報が入ってこないから……」

「いいよいいよ!私は立場なんて気にしないから!」

私はこの時に決めた。

この人に一生ついていこうと。

「お父様〜!!」

そう言って国王様の部屋のドアをぶち開ける。

「もう少し静かに開けろ!!」

そう言ってルミを怒鳴りつけた。

「そんなことは置いておいて!ちょっと相談があるのです!」

「相談?」

「だからみんなを呼んで欲しいのです!」

「あ、あぁ……」

国王様は押され気味に頷いた。

それから少しした時、王妃様にルミの姉たちが集まった。

「それで話とは?」

「この子、メディスンを王宮専属の薬剤師にしてほしいのです!」

「薬剤師?」

「そう!医療の専門家の医者はいるけど、薬の専門家は居ませんよね?」

「そうだが……」

「このメディは薬の調合が出来るんです!」

「信じられるの?」

「はい!!」

ルミはノータイムで返答した。

「何故そうまでしてその子に肩入れするのですか?」

「同情?それならやめなさい」

ルミの姉たちが私を非難する。

それに対して。

「違います。」

ルミはそう断言した。

「じゃあ何故ですか?」

「私の仲間になって欲しいからです!!」

「「「はぁぁぁぁ!?」」」

ルミ以外ハモった。

「な、仲間!?」

私は思わず聞き返した。

「そう!私の仲間!私の出来なかった薬の開発をして欲しいの!」

ルミは私にそう言った。

「ふふ……あははははは!」

笑い出したのは王妃様。

「どうしたんですか?お母様」

「ごめんなさい?ルミらしくって笑ってしまったわ!」

「ということは?」

「私はいいと思うわ!」

「お前がそういうなら……」

国王様も了承した。

「仕方ないな……私はルミを信じようじゃねえか!」

「そうですね……」

「私も信じてみましょうか!」

こうして私は王宮に受け入れられ、皆と親交を深めることとなるのだった。

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