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第14話《異変の正体篇》溢れる本能

ルミエールside

「ただいま〜!」

「「お帰りなさい、ルミ様」」

「やっぱり迎えてくれる家族がいるのって嬉しいね!」

実際そうだ。

一人で『ただいま』と言って何も返ってこなければ何となく寂しい。

でも、返ってきてくれれば嬉しいし、あったかい気持ちになる。

「何をしているんですか?ルミ様」

「ちょっと考え事!そうだ!晩御飯、四人分作ってくれない?」

「四人分、ですか?」

「そう!家族が増えたから!」

「誰かたらし込んできたんですか?」

「人聞きの悪い言い方はやめてもらおうか!」

「実際そうだと思いますよ?」

「ルミ様は人誑しですからね」

「そんなに!?」

私、言うほど誑しじゃないと思うんだけどなぁ……

「リファ様、メディ様、リスカル様、それに加えてお姉様方も」

「結構誑しだね」

「納得していただけて何よりです」

何が何よりなのかは分からないが、紹介しないことには始まらない。

「出ておいで、オニキス!」

『ここ、大丈夫〜?』

「大丈夫だよ!」

私のその言葉に安堵感を示したらしく、オニキスはすんなり影から出てきてくれる。

「これが新しい家族のオニキスだよ!」

「今度はモンスターを誑し込んできましたか」

「だから誑し込んでねえよ」

『主〜!この人たちは〜?』

「この人たちはオニキスの新しい家族だよ!厨房にいるのがカーニャで、目の前にいるにがリファリアだよ!」

「リファリアです。リファって呼んでくださいね?」

リファが手を出すとオニキスも体の一部を細め、擬似的な手を作り出し、握手する。

どうやらこれから仲良くやっていけそうだ。

「オニキス殿、厨房からで申し訳ありません。それに握手が出来ないので後でさせていただきます」

『主〜、カーニャ、オニキスのこと嫌い?』

「嫌いじゃないよ〜?ただ忙しいだけなんだ〜!オニキスのためにご飯作ってくれてるからね〜?」

『やた〜!』

オニキスはその場でポヨンポヨンと跳ねた。

「可愛いですね!『シャドースライム』ですか?」

「違うよ!『クイーンシャドースライム』だよ!」

「それはまたとんでもないものをテイムしてきましたね……」

「ちょっとこれからに必要でね!」

「これから……ですか?」

リファが不思議そうな表情を浮かべる。

「リファが気にすることじゃないよ!今はね?」

「今は?」

「そう!今は気にしなくていい!そうだ、カーニャ!ご飯食べ終わったら私の部屋に来て!色々と言っておかなきゃいけないことがあるから!」

「わかりました。」

そう返事し、料理に集中し始めた。

「「「『いただきます(〜)!』」」」

隣ではオニキスが器用にスプーンとフォークを使いこなし、食事をしていた。

いや、すごっ!

「オニキス殿は器用ですね」

『オニキスでいいのに〜!』

「敬称は要らないって!」

「そうですか」

「何でそんなことわかるんですか?」

「オニキスと会話できるから!」

「えっ!?」

リファは驚きの声を上げる。

「私にしか分からないけどね!」

「そうなんですか!」

とりあえず食事を終え、お風呂まで自分の部屋に戻った。


─────────────────────


部屋で本を読んでいるとコンコンとドアがノックされる。

「どうぞ〜!」

「失礼します。」

カーニャがドアを開けて入ってくる。

「用件は?」

「うん。ちょっと話しておかないといけないことがあって」

「はぁ……」

とりあえず、カーニャを椅子に座らせる。

逆に私はブーツを脱いで裸足になり、ベッドに寝っ転がる。

「それで話しておきたいこととは?」

「リスカルが捕まった可能性があるの」

「それは本当ですか?」

「一週間事務所に戻ってないらしいの」

「それは気になりますね……」

「その一週間前に私が潜入捜査を依頼した後、消息が掴めないの」

「なるほど……だから潜入先でバレて捕まったと?」

「そう。多分だけど変装まではバレてないはず」

「そう思う根拠は?」

「一応リスカルはアルタイルじゃ有名な探偵でしょ?敵ならそれくらい知っててもおかしくないから」

「なるほど……死んでいる可能性は無いのですか?」

「無いとは言い切れない。でも大方生かしていると思ってる。目的を吐き出させるまではどこに仲間がいるか分からないし。」

「それで、どうなさるおつもりですか?」

「私も潜入する。」

「危険です。危険すぎます。」

「わかってる。でもちゃんと考えたから」

「と言いますと?」

「私は怪しまれる行動をしてあえて捕まる。リヴェルベロ家のどこにリスカルがいるのかをはっきりさせるためにね。」

「ですが……」

「色々拘束されると思う。でもこのために私はオニキスをテイムしたの。」

「なるほど……影に潜ませ自分は捕まり、主犯の影に移動させ目的を探らせると?」

「そう。影の中にいるオニキスに気づく可能性は限りなくゼロに近い。」

「全く……無茶な作戦ですね」

「でも、これが一番可能性が高い。でも見つかった時のリスクを考慮してオニキスの分裂体を忍ばせる。」

「ではどうやって見聞きしたものを伝えるのですか?」

「そんな時にこれ!《盗聴器》!」

「《盗聴器》ですか?」

「そう!これはね、受話器とセットで使うの。これを持たせて影の中に潜ませれば、相手の発言が丸聞こえ!」

「なるほど……ですがルミ様なら直接戦闘でも勝てるのでは?」

「それは分からない」

「と言いますと?」

「今回私が追ってるのはドラゴンやホワイトヴァイパーから逃げ切れる相手なんだ。それを考えると素の状態で勝てる可能性は50:50(フィフティーフィフティー)。だからメディの薬が必要。それに加えてもう一つ理由がある。人質になっている可能性」

「人質……リスカル様ですか?」

その疑問に首を横に振る。

「─────リファのお姉ちゃんだよ」

その発言に目を丸くする。

「リファから聞いた話だとリファのお姉ちゃん、リスターは三年前に豹変した。そしてその三年前に今回の敵がリヴェルベロ家に執事として入ったんだ」

「それは気になりますね……」

「なんにせよリスターが何かされた可能性は高いから迂闊に手を出せない。だからこの作戦を立てたんだ」

「本当に頑張りますね……」

「当たり前だよ!大事な弟子の、惚れた女の窮地を救うのが師匠の、王子様の役割じゃない?」

そう言ってカーニャにウインクした。

「確かに、そうかもしれませんね?夜は王子様と言うより、性欲モンスターですけど?」

「なっ……!!」

カーニャのその発言に顔を真っ赤にして抗議した。


─────────────────────


それからカーニャが部屋を出て、リファがお風呂に向かったのを確認した私は全裸になってベッドにうつ伏せにダイブした。

そう、オニキスに体の角質を食べてもらってスベスベになるためだ。

「オニキス、私の全身の角質を食べて!」

『わかったよ〜!』

するとオニキスは分裂し、私の上に乗る。

『『『始めるよ〜!』』』

「うん!お願い!」

私の背中、腋、脇腹、太もも、ふくらはぎ、足裏、足指……

私の体の背面のありとあらゆる場所をオニキスが覆い、角質を食べていく。

それはどこかくすぐったく、気持ちいい。

気持ちいいと言っても性的なものではなく、マッサージ的な気持ちよさだ。

「くふっ……ひひひ……ははっ……へへへ……」

部屋には私の小さな笑い声が響く。

『背中無くなっちゃったよ〜!』

開始から15分ほどで背部の施術は完了した。

続いて仰向けになった。

そしてやばいのが始まる。

顔、首、胸、お腹、鼠蹊部、太もも、膝、脛、足の甲……

何がやばいって?

そんなの乳頭やら下の口やら性的快感を覚えるところまで食べてるから。

そして最終的に膣内に侵入してきた。

「んっ、⋯んぁ♡はぁっ⋯⋯、ん♡」

私はベッドの上で快楽に悶絶する。

やめてって言えばいいじゃ無いかって?

それは御法度だ。

「ちょっ…… ♡んっ…… ♡まっ…… ♡あっ…… ♡」

私は大きく仰け反り、ビクンと腰が跳ねた。

『終わったよ〜!』

「はぁはぁ……あ、ありがとう……」

息を切らしながらそう言って起き上がる。

その時私の目に映ったのは。

「リ、リファ……?」

そこにはドアを開け、赤面しているリファがいた。

「い、いつから……?」

「仰向けになった時からです……」

え……?

じゃあ喘いでいたのバレて……

「そういうことしたくなりますよね?ルミ様も年頃の女の子何ですから」

そういってリファはドアをゆっくり閉める。

「待ってぇ!そのフォローの仕方やめてぇ!」

私は涙目で叫んだ。


─────────────────────


リファを追いかけて何とか誤解を解いた後、私はお風呂に入っていた。

「ふぅ……」

するとガラガラとドアが開く音がする。

誰だろう……

「ルミ、ちょっと話があるのだけど?」

その声はメディだった。

「メディ?何でわざわざここに?後でもよかったのに……」

「ちょうどお風呂も入りたかったのよ」

そう言いながら体を洗う。

「そう……で?話って?」

「あのクソ探偵、捕まってるんですって?」

「何でそれを!?」

「カーニャから聞いたのよ。『早く薬を完成させてください』ってすごい剣幕で言ってきたのよ」

「カーニャが?」

「そうよ。あの子、結構辛辣なこと言うけど、ルミが集めた仲間は信頼しているし、大事に思ってるのよ」

「そっか〜……なんか嬉しいなあ〜……」

「で?大丈夫なの?あのクソ探偵は」

「わかんない。でも急がないといけない」

「やっぱり?」

「こっちでも作戦は立ててる。でもそれにはメディの薬が必要不可欠なんだ」

「はいはい……わかったわよ」

「ありがとね」

「当たり前よ。せっかくルミの集めた仲間なんだから協力しない訳がないでしょ?」

「メディ……」

「でも副作用はどうするの?」

「大丈夫。策はあるから」

「そう……」

そう言って湯船に浸かる。

「さて……オニキスを見せてほしいな〜?『クイーンシャドースライム』なんでしょ?」

「そんなことまで!?」

「まぁ、さっき来たからね!」

「いいけど……」

『はぁ……』とため息を吐き、オニキスを呼ぶ。

『主〜!どうしたの〜?』

「一緒にお風呂入ろっか!」

『やた〜!』

オニキスは私に飛びついてきた。

「よしよ〜し」

オニキスを撫でる。

「へぇ〜?」

『主〜!この人誰〜?』

「この人はメディスンって言ってね〜!私の薬剤師なの!メディって呼んであげてね?」

『わかった〜!』

「え、その子喋れるの!?」

「私にしか聞こえないけどね?」

「すごいわね……」

メディは顎に手を当てて、感心していた。

「でしょ〜!」

それに私は誇らしげになっていた。


─────────────────────


リスカルside

正直言ってキツい。

久しぶりだ。

一週間もまともに食事してないのは。

水に関しては魔法で何とかなる。

だが栄養が足りない……

クソ……どうすればいいんだ……

そんな時、ドアが開かれた。

「まだ生きているとはな?」

「水は出せるからな……」

「どうやら誰も助けに来ないようだが?」

「それはどうかな?」

「まぁ、助けに来たところで俺の計画は止められんがな」

「残念だが、お前の計画は止められるぜ?」

「はぁ?」

「お前は知ることになるだろうな……お前は“開けてはならない箱”に手を掛けてるってことをな……?」

「黙れ!!」

そう言ってラウールは俺を蹴り飛ばす。

「ぐはぁ!」

「貴様のような低俗なものに俺の計画を邪魔する資格などない!!!」

ラウールは俺をそう怒鳴りつけ、部屋を出ていた。

俺は信じている。

アイツが、戦乙女パンドラが俺を助け、そしてアイツを、ラウールをぶちのめしてくれることを。

だから………

「さっさと………来い………馬鹿野郎……が………」

俺は蹴られたことによるダメージと空腹で瞳を閉じ、眠りについた。

次に起きられるか分からない事を分かっていながら。

さっさと俺を助けろよ……

クソババア……カーニャ……リファ……戦乙女パンドラ……!!

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