目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第13話《姉の異変篇》従魔

ルミエールside

「「「ごちそうさまでした!」」」

食事終了の挨拶を三人でした後、私はリスカル探偵事務所に向かうべく準備していた。

理由はもちろん捜査の進展を聞きにいくのだ。

「じゃあちょっと出掛けてくるね!」

「「はい、お気をつけて」」

私は二人に出発の挨拶をし、《シエル》に跨り、街へと向かった。

10分ほどで到着し、いつも通りドアを開けようとすると。

「開かない……?」

どうやら鍵が掛かっているようだった。

潜入調査中なのか?

そんな事を思っていると。

「ルミエール様じゃないですか〜!」

近所の人に話しかけられた。

「どうも!」

「リスカルさんを尋ねて?」

「そうなんだけど……」

「リスカルさん、ここ最近全然帰ってこないの!」

全然帰ってこない?

「いつから?」

「ここ一週間くらいかしらね〜」

「ありがとう!」

私はすぐさま《シエル》に乗り、アトリエに戻った。

一週間前、それは私がリヴェルベロ家に潜入捜査を依頼した日。

その日以降帰ってこないのはおかしい。

王宮の従者だって、週に二、三回は自宅に戻る。

必要なものを取りに行くためだ。

リスカルは執事として潜入しているから必ず帰ってくるはず。

それで帰ってこないなら可能性は一つ。

捕まったという可能性。

それでは今は情報共有ができない。

それにリヴェルベロ家のどこに捕まっているのかがわからない。

生死は何となくわかる。

怪しい人物がいればまず生け捕りにし、背後関係を吐き出させてから殺す。

リスカルはそう簡単に口を割らない。

ならまず生きているだろう。

次に問題になるのはどうやって助けるか。

一番なのは私も変装して侵入し、捕まる事だ。

でもそれはリスクが高い。

私ともう一人、気づかれないように侵入出来て、私が捕まっても私に従って自由に動ける何かがあれば……

そう思いアトリエを見回してみる。

その中で目に留まったのは一冊の本。

タイトルは『モンスターテイム』

「これだ!!」

私はすぐさまその本を手に取り、どんどん読んでいく。

私が捕まっても私に従って自由に動ける。

でも問題は見つからない場所にいる事。

そう簡単に見つからない場所……

体内、じゃダメだよね……

パラパラとページを捲っていると、

「これだ!!このモンスターなら出来る!!」

私は早速テイムの準備をして、森へと飛び出した。

「ルミ様、紅茶が……っていない……」

早くしないとリスカルが危ない!

先ほど生かすだろうと考察したもののそんな確証は全く無い。

リスカルが帰ってこない以上、リヴェルベロ家に入った執事はおそらく─────

だとすると何が目的かはわからない。

だからこそ、リスカルと合流する必要がある!!

そう思い私は箒の速度を速めた。


─────────────────────


森に降り立った私は、早速目的のモンスターを探す。

勿論テイム術もすでに覚えてきた。

こういう時に『完全記憶能力』は役立つ。

それに、生息地域も大体わかっている。

森を歩いて数分、洞窟を見つけた。

この中が生息地域だったはず!

私は洞窟の中に入り、息を整える。

そして私はポーチからあるアイテムを取り出す。

それは某猫型ロボットのように。

「《閃光弾》〜!」

これまた開発していた探偵道具の一つ。

まぁ、探偵というより怪盗の方が使ってるけど。

どこぞの白服の怪盗とか。

これはもちろん、地面に叩きつければ眩い光を放つ。

何でこれが必要かって?

今からテイムするモンスターは『影』に潜んでるから!!

「せいや!」

私は閃光弾を地面に放ちと同時に目を押さえる。

「キュゥゥゥゥ!!」

そんな鳴き声が聞こえ、閃光が終わると目の前にはぐったりした粘弾性物質のモンスターがいた。

そう、今回テイムするモンスターは『シャドースライム』。

影に潜むモンスターだ。

とりあえずシャドースライムが回復する前にテイムしないと!

魔力がない私でも出来るの?

そう思ったあなた!安心してください!出来ます!

なにしろ、テイムする職業の『テイマー』自体、魔法が苦手だからなる職業とまで言われている。

今回必要なのは『血液』だ。

ここからは完全な考察となるのだが、テイムする条件はテイム主の『DNA』を認識する事なんじゃないかと思っている。

なので極端な話、唾液でもいけると思っている。

そんな余談は置いておいて。

私は指先を切りつけ、血を数滴、シャドースライムに垂らす。

するとシャドースライムが数秒光った。

これでテイム完了のはず。

目覚めるまで待つべく、私は切った傷口に《即効完全薬ver塗り薬》を塗っておく。

ちょっと疲れちゃったなぁ……

私はウトウトし始めて、そして眠った。


─────────────────────


どれくらい寝ただろうか。

私は右足に感じた違和感で目を覚ました。

「ちょっ、にゃ、にゃに!?くしゅぐったいぃ〜!動かにゃいで〜!ふひひひひ〜!いひひひひ〜!待ってぇ〜!指の間らめえ〜!土踏まずの弱いにょおぉ〜!」

30分ほど悶絶した。

理由はわかる。

目が覚めたシャドースライムは私と遊びたかったのだろう。

だからブーツの中に入っていたと。

因みに右足が終わった後、左足もやられ、若干イった。

従魔に蹂躙されるのも悪くない。

「はぁはぁ……」

『主、大丈夫?』

「だ、大丈夫……気持ちよかっただけだから……」

私は従魔に何言ってるんだろう。

ん?

「しゃべった!?」

『主と契約したから喋れるようになったよ?でも主以外には聞こえない……』

「そっか……でもお話しできるのすごく嬉しいよ!」

『やた〜!そうだ!主、名前ちょうだい?』

そういえばつけてなかったっけ?

名前か〜……

黒くて綺麗だから……

「オニキス!君はオニキスだ!」

『主、ありがと〜!』

私はシャドースライムにオニキスと名付けた後、ブーツを脱いだ。

それは純粋に気になっていた。

スライムは雑食。

何でも食べる。

なら、私の足裏から何か食べたんじゃないかと。

私が自分の足裏を見るとそれはもうツルツルのスベスベだった。

オニキス、私の足にあった角質を食べた!?

すごい……綺麗になってる……

帰ったら全身やってもらおう。

これがエグいことになるのをこの時の私はまだ知らない。

私がブーツを履き直していると。

『主〜!』

「どうしたの?」

『オニキス戦いたい〜!』

ほう、早速役にたつところを見てもらって褒めてもらおうというわけか!

「わかった!じゃあやってみようか!」

『うん!』

私はオニキスを連れ、洞窟を出ようとする。

すると背後から鳴き声が聞こえてきた。

「キシャァァァ!!」

振り返ると、それは『ケイブセンチピード』だった。

私が腰につけている《ラファールランス》に手をかける。

「キシャァァァ!!」

ケイブセンチピードはすごい勢いで襲いかかってきた。

私はそれを避けながら《ラファールランス》の真ん中の部分を宙に投げる。

そして目の前に落ちてくるタイミングで両端で挟み、完成させる。

「掛かってきなさい!!」

私は《ラファールランス》を構え、左手で挑発する。

「キシャァァァ!!」

「はぁ!」

上から覆い被さってくるように襲ってきたケイブセンチピードを槍で一突きし、一旦距離を取る。

喉元を狙ったのがよほど効いたらしく、ケイブセンチピードは倒れ込む。

「こんなもんかな!」

『主〜、オニキス役に立てなかった〜……』

「オニキスは小さいからね!こういうおっきいのは私に任せて!」

『わかった〜!主、これ食べていい?』

「いいよ!」

するとオニキスは体長10mほどはあるケイブセンチピードに覆い被さる様にして食事を始めた。

マジかよ……

もしかして私間違えた?

『シャドースライム』にも幾つか種類が存在する。

最も強く大きいものは『キングシャドースライム』とその次は『クイーンシャドースライム』、そしてその次が『シャドースライム』。

『キングシャドースライム』も『クイーンシャドースライム』も普段は同じサイズでしかないため最初は判断しにくい。

「ねえ、オニキスって『キングシャドースライム』?」

『違うよ〜!』

よかった〜!気のせい……

『オニキスは『クイーンシャドースライム』だよ〜!』

じゃなかった〜!!

間違えたけど、まあいいか!

『主〜!食べ終わったよ〜!』

「じゃあ行こうか!」

『うん!』

そういうとオニキスは私の影に入った。

そう、これこそがリスカル救出の鍵!

この『シャドースライム』というスライムは影の中を自由に動くことが出来る。

なので私が捕まっても、相手に気づかれることなく動ける。

さらにはオニキスのいる影は空間になっており、アイテムが存在できる。

ただし、出し入れできるのはオニキスだけだが。

それでも相当便利だ。

でも容量に限界がある。

勿論私の影だから私と同じ体積までのものしか入らない。

それでも十分だ。

色々と出来るからね!

勿論、他人の影に入ることも出来る。

その空間もその人の大きさに依存する形だ。

「よし!じゃあまずあの『フレイムウルフ』を倒してみようか!」

私が指差した先には一匹の『フレイムウルフ』がいた。

『フレイムウルフ』とは簡単にいうと体毛が燃えているオオカミだ。

「グルルルルル!!」

『オニキス負けないよ〜!』

そう言った時、オニキスは先ほど食べたケイブセンチピードに変わった。

「え!?」

「グル!?」

私だけでなく『フレイムウルフ』も驚いているようだ。

『やあああ!!』

ケイブセンチピードに変身したオニキスは『フレイムウルフ』をワンパンした。

「マジかよ……」

『主〜!オニキス倒せたよ〜!』

「凄い!凄すぎるよオニキス!」

『えへへ〜!これ食べてもいい?』

「勿論!オニキスが倒したんだし!それにこれからは基本的に食べていいよ!」

『ホント?やた〜!』

「でも依頼を受けた時とかは証拠の部分だけ貰うね?」

『わかった〜!』

「ところでさ。」

『なあに?』

「オニキスって食べたものに変身出来るの?」

『そうだよ〜!』

強いってそういうことかぁ……

『それに見て〜!』

そう言うとオニキスは分裂した。

『『『分裂出来るよ〜!』』』

「凄い!なんでも出来るじゃん!!」

この時、その数で一斉にやられてみたいとかいう邪な考えが浮かんだがなかったことにしておく。

それにしてもこれでリスカルを助けに行く準備は整ってきたね!

あとはメディの作る薬だけ!!

ドラゴンの血を使った薬だからとびきり強くなれそう!!

副作用はなんだろう……

材料が違うから副作用も違うはずなんだよね〜……

それは試す時のお楽しみかな!

それに今はとりあえず、オニキスに全身の角質を食べてもらって美しい体にならないと!

そう思い、ルンルン気分でアトリエに戻るのだった。


─────────────────────


メディスンside

「はぁ……」

私は今、非常に疲れている。

一ヶ月ほど前にルミからドラゴンの血を貰った。

彼女は『それで強くなる薬作って〜』と私に頼んできた。

本当に自由な人だ。

私はルミに救われて以降、王宮の薬剤師として働いている。

何かあれば王宮直属の医師が私の元に薬の相談をしにくる。

前回のは副作用が強すぎたとか、効果が弱すぎたとか。

正直言って忙しい。

それに調合は繊細で疲れる。

でも、それは苦じゃない。

それは私のことをルミが、王宮が必要としてくれているからだ。

同族と暮らしていた時は忌み嫌われ、せっかく作った薬を飲めるわけがないだろと床に投げられ。

私に居場所が無かった。

でも新しい居場所をくれたのはルミだ。

相手は王族なのに敬称はつけないのかとよく言われる。

ルミは敬われるのは苦手みたいだ。

彼女は誰とでも同じ目線で居たいと考えている。

だからこそ、私はそんな彼女の願いを叶えるべく、『ルミ様』ではなく『ルミ』と呼んで敬語も使わない。

あの人は誰にでも優しい。

だからあんな盗賊の心まで掬い上げ、更生させた。

更生させたと言っても話を聞く限り、半ば脅しのようなものだ。

カーニャはいい子だ。

彼女もルミに救われている。

ルミのお陰で人間らしさを取り戻した。

だからこそ、同じ目線に居るとはいえ、死ぬほど敬っている。

普段の言動からはそう思えないかもだけど。

そして新たに救おうとしているのはリファ。

最近は二人の距離はかなり近づいたように思える。

でも、ルミとあの盗賊が動いているということはまだ完全に救えていないのだろう。

なんでそんなことを知ってるかって?

カーニャが報告に来てくれるからだ。

私が忙しい以上、なかなかルミに会いに行けない。

向こうも向こうで忙しくしているので会いに来ることも少ない。

だからカーニャに色々報告してもらっている。

何となく妹のように感じているから。

それに何か弱点があれば、堕とせる気がするから。

さあ、今日も頑張ろう!

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?