目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第9話《姉の異変篇》休日の過ごし方

ルミエールside

「そういえば私、どれくらい寝てたの?」

「一週間ですね」

「ふぁ!?一週間!?マジで!?」

するとドアがノックされた。

「はい」

「見舞いに来たが元気そうなんで帰るわ!」

「待てえい!」

私はリスカルに枕を投げていった。

「もしかして一週間も寝てたのに見舞いに来たのって今日が初めてなの?」

リスカルの背後から聞いたことのある声が聞こえてくる。

「あ!お前!」

「邪魔」

リスカルは蹴り飛ばされた。

「痛えな!このクソババア!!」

「誰がババアじゃ!私はまだピチピチの180歳だ!」

それはピチピチなのか……?

「ルミの何その『それはピチピチなのか?』みたいな顔は!」

「ギクッ!」

「効果音自分で言うな」

「この方たちはどなたですか?」

リファが疑問を浮かべる。

「そっか!リファは二人と初めて会うんだったね!」

「俺はリスカル、探偵だ。よろしくな!」

「私はメディスン、エルフよ。気軽にメディと呼んでね?一応、ルミの薬を調合しているわ」

このメディというエルフとは森で会った。

その当時、冒険者になって間もない私は依頼を受け、森にいた。

そんな時、怪我をしているところを見つけ、まだ《即効完全薬》はなかった。

だから普通の手当てしか出来なかった。

とりあえず膝枕をしてあげた。

「───っん、う〜ん……」

「気がついた?」

「貴方は……?」

「私はルミエール=ラウエル。よろしくね!」

「メディスンよ。よろしく。」

「それにしてもひどい怪我だけど……どうしたの?」

「里を追い出されたんだよ……」

「理由は?」

「気味が悪いから」

「それだけ?」

私の問いにメディスンは頷いた。

「そっか……」

「私の居場所はもうどこにもない……」

メディスンは少し悲しそうな表情を浮かべた。

「なんで気味悪がられたの?」

「私は薬を調合出来るの」

「たったそれだけ?」

「そう……」

確かに、人間というのは異分子を排除したがる。

それは種族が違っても同じなようだ。

「これからどうしようかな……」

薬の調合が出来る、かぁ……

もしかしたら私の『完全記憶能力』に対する薬とか、強くなる薬とか作れるかもしれない!

「じゃあ私の薬剤師になってよ!」

「薬剤師?」

「そう!薬を調合する仕事!」

「でも……」

「大丈夫!私と来て!」

私はそう言って手を差し述べた。

こうして私はメディを王宮の薬剤師として雇った。

その結果、メディは自分の居場所を手に入れた。

「この子はリファリア=リヴェルベロ。私の弟子だよ!気軽にリファって呼んであげて!」

「ルミの弟子!?」

「薬の調合!?ということは貴方が《超強化薬》を調合したんですか!!」

「そうだけど?」

「副作用は知っていたんですか!?」

「ちょっと眠くなるってやつでしょ?」

あっ、やべ。

「違いますよ!?」

「ルミからはそう報告を受けたのだけど?」

「本当の副作用は体中から血が噴き出るというものです」

カーニャが冷静にそう言った。

「ルミ〜?」

メディが詰め寄ってくる。

「だ、だって!本当の副作用言ったら使わせてくれないでしょ!?」

「当たり前よ!!恩人に危険な薬を与える薬剤師がどこにいるのよ!!」

「ご、ごめんなさい……」

「いいじゃねえかクソババア!!恩人の望みくらい叶えてやっても!!」

「叶えて死ぬんじゃ意味ないだろ!それにクソババアじゃない!」

「まぁまぁ、喧嘩しないで?」

「「お貴方のせいだ(よ)!!」」

仲裁したらツッコまれた。

「お二人とも。喧嘩するなら出ていってもらってもよろしいでしょうかこの野郎」

「なんでそんな喧嘩腰なんだよ」

「失礼致しました。アホとババアと話していると口が勝手に」

「「誰がアホ(ババア)だコラ」」

「出ていってください!!」

「「はい……」」

リファのあまりの見幕に二人とも思わず敬語になり、出ていく。

リファこわ……


─────────────────────


私が意識を取り戻して二週間後、完全復活を遂げた私は冒険者ギルドに来ていた。

「やっほ〜!」

私がそう言ってギルドの扉を開いた時、

「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!」」」

めっちゃ盛り上がった。

なんで?

「ドラゴンを倒すなんて凄えぜ!!」

「さすが《[[rb:戦乙女 > パンドラ]]》だ!」

「ルミ様!!」

そう言って私に飛びついてくるのはエリアだ。

「心配かけちゃったね!」

「全くです……!!」

「まず買い取りをお願いしたいんだけど」

「ドラゴンだな!待ってたぞ!!」

「カインズ!!」

「こっちで出してくれ!」

「はいはい」

私はギルドの試験場に呼ばれる。

「ここなら問題ないだろう!」

私はドラゴンをポーチから取り出す。

「真っ二つかよ……」

「なんかマズかったですかね?」

「いや、片翼が斬られているとはいえ……まさかこんな綺麗な状態だったとは……」

「まぁ、このポーチ内だと時間は止まってるからね〜!」

「とりあえず買い取らせてもらうからな!」

「うん!持ってても意味ないしね!」

「買い取り料金は……」

「やはりここにいましたか」

その声に、私の背筋は凍った。

「リファリア嬢?」

私はさりげなく腰の《シエル》に手をかけた。

「これ以上逃げるのであれば、お仕置きしますよ?」

リファのお仕置きはヤバい。

今回の時にやられたのだが、お尻ぺんぺんだ。

舐めてはいけなかった。

次の日、座れないくらい痛かった。

それを覚えているのでスッと手を下ろした。

「それでいいのです!では行きましょうか、ルミ様?」

「はい……」

「鬼嫁だな……」

「はい……」

私たちの去る姿を見て、カインズとエリアが呟いた。

ホントは依頼とか受けたかったんだけどな〜……

「貴方様の事ですから依頼を受けたかったとか考えているのでしょう?」

「!?!?」

「図星、ですか」

「わかっているのですか?《ファンタズムエッジ》は修理したからいいとして、ルミ様の体にはまだ反動のダメージが残っているんですよ?」

「それは……わかってるけど……」

因みに《超強化薬》はメディに没収された。

今度ドラゴンの血で新しいの作って貰わないとなぁ〜……

《ファンタズムエッジ》を修理したけど、それ以上に大切な物を発明していたといったら怒るだろうか。

怒られてお尻ぺんぺんは嫌なので黙っておくが。

「今日は休息日にしましょう!」

「休息日……?」

「はい!ですので私とデートしませんか?」

「ホント!?」

「はい!お忍びデートです!」

「だね!」

私たちはデートするべく、街へと繰り出した。


─────────────────────


リファリアside

ルミ様はやっぱりズルい。

一人でどんな困難も乗り越える。

弟子である私の意味が無いじゃないか。

そう思ってしまう。

でも、カーニャからルミ様の真意を聞いた時、これは彼女一人で越えなければいけないものだとわかった。

「ルミ様……」

「リファ様。何故、ルミ様があそこまでドラゴンに拘るのか、知っていますか?」

カーニャの言葉に首を横に振る。

「ルミ様が魔法を使えないからです。」

「それとドラゴン討伐に何の関係が……」

「ルミ様の発明品は、ルミ様にとっての魔法です。ですがその発明品は貴族たちには受け入れられませんでした。もちろん、素晴らしいといってくれる貴族もいたのですが、それでも否定派の方が多かったのです。ですので、そんな輩を認めさせるためにドラゴン討伐は必要不可欠なのです。」

「それがルミ様の言う『私が私であるための証明』……」

その言葉にカーニャは頷く。

あんなに明るく、元気な中にあったルミ様の本心。

自分だけ魔法を使えない。

たったそれだけの違いでルミ様は人の悪意を受け続けた。

どんな逆境でも挫けない。

私はルミ様の強さの理由が垣間見えた気がした。

「美味しいね〜!」

だけど、今目の前にいるにはただの可愛い生物だ。

なんで食事してるだけでこんな可愛いんだ!?

現状ルミ様は食べ物を口いっぱいに含み、まるでリスのような見た目になっていた。

うん、めちゃくちゃ可愛い。

この人はズルい。

可愛い時もあればかっこいい時もある。

何といっても、ルミ様をいじめたくなる時がある。

しかもこの心理はカーニャ達も同じく働いているらしい。

本当にズルい。

まだ、手を出すのはやめておくが。


─────────────────────


ルミエールside

リファとのデートの翌日。

私は庭にリファを呼んでいた。

「ルミ様、何か御用ですか?庭に呼び出して」

「私の目標を達成したから本格的にリファに色々教えていこうと思って!」

「おぉ〜!待っていました!」

「リファはもちろん魔法を使えるよね?」

「はい!ですが姉には劣ってしまいます……」

「大丈夫。心配しないで?そのお姉さんよりも強くなるから」

「え?」

「でもそれは君の努力次第だけどね?」

私は人差し指を立てて言った。

「頑張ります!」

「その前にプレゼントがあるんだ!」

「プレゼント、ですか?」

「そう!カーニャ!」

私がカーニャの名を呼ぶと鞘に入ったレイピアを持ってきてくれる。

「はい、これ!」

「これは……?」

「私が作ったリファ専用の武器!」

「私専用の……」

「名前は《アムールエスパーダ》。意味は愛の剣。」

「《アムールエスパーダ》……」

「ちょっと試してみて!」

「はい!」

リファは《アムールエスパーダ》を抜く。

「魔法を上乗せ出来るからやってみて!」

「はい!」

リファは目を閉じて集中する。

すると剣先は炎を纏う。

「どう?違和感はない?」

「はい!むしろ楽な感じがします」

「まぁ、余分な魔力を吸収するように設定してるからね〜!」

「それにしてもいつ作ったんですか?一日で作れないでしょうから……」

「いや、えっと、それは……」

「《ファンタズムエッジ》を修理する時に、作成なさっていました。」

「カーニャ!?」

う、裏切り者……!!

「どうやらお仕置きが必要なようですね?」

「し、しし、師匠にそんなことしたらダメだと思うなぁ〜?」

「そんなの関係ありませんよ?悪いことをしたら叱る。それだけです」

その後、お尻ぺんぺんの刑に処された。

痛い……


─────────────────────


「だから塗り薬を持ってきてくれってことなのね?」

お尻がパンパンに腫れたのでメディとの予定は寝室でお尻丸出しの状態ですることになった。

「もう少し期間空けて渡せばよかったのに……」

メディはお尻に薬を塗りながら言ってくる。

「だってぇ〜……」

「出来がよかったからすぐに渡したかった、でしょ?」

「そうなの!」

「ホントに子供ね……」

「うるさいぞ〜」

「はいはい。で、話って何だったの?」

「カーニャ!」

私がいうと瓶に入ったドラゴンの血を持ってくる。

「これ、まさかとは思うんだけど……」

「ドラゴンの血だよ!」

「はあぁぁ……」

メディは大きなため息を吐いた。

「で、これを使って何すればいいの?」

「《超強化薬》の改造版を作って欲しいの!」

「嫌よ」

「なんで!?」

「どっかの誰かさんが副作用を虚偽報告してくるからよ!」

「うっ……そこをなんとか!おねが〜い!」

「い、や、よ!」

「メディ様。私がしっかりと報告致しますのでどうかお願い致します。」

「貴方が嘘を吐く可能性があるわ」

「吐きません」

「そうだよ!カーニャは嘘つきじゃない!」

「ルミ様……」

「ただ意地悪なだけなんだよ!!」

私はメディに力強く言った。

すると顳顬が痛みだす。

「い゛た゛た゛た゛た゛!!」

上を向くと、カーニャにグリグリされていた。

「い゛だい゛でず!」

「謝罪を要求します」

「ごべん゛!ごべん゛な゛ざい゛!」

カーニャは手を離してくれる。

「カーニャ、貴方ホントに従者?」

「はい。私はルミ様の従者にして調教者です」

「要らんこと言うな!」

「ルミ……貴方、まさかだけど夜はもっと酷い感じ?」

「いや、ちがっ……!」

「はい。時々、気持ちよくしてくれと強請ってきます」

「カーニャ!!」

「それに加え、夜な夜なお一人で遊ばれているようで」

「なんで知って……!!」

「威厳もへったくれも無いわね……」

秘密にしてたのに……

そんな肩を落とす私の耳元で、メディが。

「媚薬でも作ってあげようか?」

甘い声で囁いた。

「やめてよ!」

「あら、その時は言ってね?対価は貴方の体になるけれど」

どうやら私は狙われているらしい。

貞操の危機だ……!!

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?