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第8話《弟子と始まり篇》A New Magician. A New Legend.

ルミエールside

「やっほ〜!」

私はそう言いながら冒険者ギルドの扉を開いた。

「エリア!なんか良い依頼ある?」

「はい!ありますよ!」

そう言って一枚の依頼書を見せてくる。

『ホワイトヴァイパー討伐』

報酬:金貨10枚

「なるほど……」

「最近、森などを移動しているのが目撃されています。被害に遭った村なんかもあるそうです」

「わかった。この依頼、受けるよ!」

「出来れば傷なく回収したいのですが……」

「任せといて!このポーチ、最強だから!」

私はポーチを触って言った。

「ポーチ、ですか?」

「そう!正式名称は《多重次元収納ポーチ》!」

この《多重次元収納ポーチ》にも『魔石』を応用している。

仕組みとしては単純明快で、魔石の魔力で空間を広げている。

倒したモンスターを入れれば、魔力を吸収し、魔石に魔力を充填する仕組みだ。

これの何が便利って、魔力は血液中にも含まれているので血抜きが出来るという点だ。

だから買い取りの際に褒められる。

「じゃあ行ってくるね!」

「はい、お気をつけて!」

私は冒険者ギルドを出る。

「蛇退治にレッツゴー!」

《シエル》に跨り、空へと飛び立った。

さて……ホワイトヴァイパーが相手か……

勝てない相手では無い。

というより、余裕で勝てる。

それ以外で心配なことがある。

ホワイトヴァイパーというモンスターはヴァイパー系の中で最大の大きさを誇る。

その分パワーもある。

だが、それよりも厄介なのが、半径2km以内で発生した音を完全に感知できる。

これの何が厄介かって?

これは村が近くにあればそこを容赦なく破壊し尽くすということだ。

音を立てなければ気付かれることはないが、流石に無音で生活しろというのも無理がある。

すでにいくつかの村が被害に遭っているそうだ。

勿論、そこの村は全滅。

アルタイルに侵攻していないということはアルタイルからは2km以上離れている。

それに加え、襲われた村の位置関係から察するに、アルタイルから南東に10kmほど行ったところにいるはず。

急がなきゃ!!

私は少し速度を出した。

到着した時、被害を受けた後の村を見つけた。

私は村に降り、周囲を見回す。

痕跡からしてさっき襲われたばかり……

生存者の確認をしないと……!

まだ近くにいる可能性がある。

村に遮音結界を張らないと!

私は村の中心に急いだ。

私のブーツには足音を軽減する仕組みが搭載されている。

だからホワイトヴァイパーには気づかれることはまずない。

だが、もし生存者がいた場合、動く可能性がある。

その際に発された音でホワイトヴァイパーが戻ってくる。

もしそうなれば戦闘すればいいが、生存者を巻き込む恐れがある。

だからまず、この村に遮音結界を張る必要がある。

そこで私の発明品の出番!

その名も、《設置型結界起動装置ver.『シャットサウンド』》!

これは作るのに凄いコストがかかったため、一個しかない。

しかも使い捨てだ。

貴重だが、人命には変えられない。

私は村の中心に設置する。

起動!!

私がスイッチを押すと遮音結界シャットサウンドが展開される。

「これでよし!」

そして村を走り回って生存者を探す。

こんなことする時間はあるのか?

答えは『ある』。

ホワイトヴァイパーの移動速度は人間が歩くのと同じほどの速さだ。

それに被害はいずれもこの周囲でのみ起きている。

すなわち、巣が近い。

なら、音がしなければ巣に戻るだろう。

万が一移動していても、最も近い村までは6kmある。

村の生存者を救助した後でも十分間に合う。

だから探している。

「生存者いませんか〜!!」

「静かにしろ!!」

子供に言われた。

「大丈夫!《シャットサウンド》を使ってるから!」

「そうか……」

「そうだ!生存者は?」

「一応何人か見つけてるけど……」

「案内して!私なら助けられる!!」

「わ、わかった!」

私は少年に案内され、生存者を救助していった。

「よかった……みんな助けられた……」

奇跡的に死者は0人だった。

「ありがとな!」

「君のおかげだ!よくやった!少年!」

私は少年の頭を撫でる。

「「「───っん、う〜ん……」」」

「みんな!起きたか!」

「あぁ……ジョウ……お前が助けてくれたのか?」

「いや、あの姉ちゃんが助けてくれたんだ!」

少年は私を指さす。

私を見た瞬間、村の人達の顔が凍りついた。

「あ、貴方様は……!!」

「知り合いなのか?」

少年は不思議そうに聞く。

どうやら私のことを知らないらしい。

まあ、当然か!

この年齢くらいならほとんど表舞台には出てないから知らないよね〜!

「「「ル、ルミエール様!!!」」」

「ルミエール?」

「こら!王女殿下に失礼だぞ!!」

「お、王女殿下!?」

「改めまして!私はルミエール=ラウエル!よろしくね!」

「マジかよ……」

「ジョウ!早く頭を……」

「いいの!今日の私はミスリルランクの冒険者として来ているんだから!」

胸を張って言った。

「じゃあちょっとぶっ倒してくるから!」

私は《シエル》に跨り、目星を付けていた巣と思われる場所に向かった。


─────────────────────


とりあえず巣の近くに降りてみた。

どうやらあっていたようだ。

絶賛お眠り中だった。

さて……一発入れてみようかな!

私は右腰から《クレシェンテアルク》を取り出す。

ボタンを押し、弦と矢を生成する。

狙いを定めて矢を放つ。

私の矢はホワイトヴァイパーの額突き刺さる。

浅い……

だが、その一撃でホワイトヴァイパーは目を覚ます。

私は《クレシェンテアルク》を右腰に戻す。

今度は《ラファールランス》を組み立てる。

「キシャァァァ!!」

喉は急所になるだろうか?

とりあえず……

「行っけええ!!」

私は《ラファールランス》をホワイトヴァイパーの喉元に投げる。

投げた槍は喉を突き刺した。

だが、それでもホワイトヴァイパーは動く。

「キシャァァァ!!」

ホワイトヴァイパーは体をうねらせる。

「危なっ!」

私は《シエル》に乗って回避する。

「キシャァァァ!!」

首を斬り落とすしかないか〜……

私は左腰から《ファンタズムエッジ》を取り外し、ボタンを押して刀身を展開する。

「苦しみなく、殺してあげる!!」

私は《シエル》から降りると、ホワイトヴァイパーとの距離を詰めていく。

「キシャァァァ!!」

強力な毒を口から放ってくるが、勿論避けたり、斬ったりする。

見えた!!

「せりやぁぁ!!」

スパンと首を斬り落とした。

「いっちょあがり!」

私はホワイトヴァイパーをポーチにしまう。

「それにしても大きかったな〜!」

全長は30mほどあった。

それにしても気になることがある。

それはホワイトヴァイパーという存在だ。

このホワイトヴァイパーは本来、こんな人里近いところにいるモンスターではない。

森の奥の奥にいるはずだ。

何故そんなモンスターがこんなところにいるのか。

少し気になるな……

後であの人のところに行ってみようか……

私はとりあえず冒険者ギルドに戻った。

「エリア、この村の支援をお願い。」

「承りました。」

「それとこのホワイトヴァイパーなんだけど……」

「ここで出さないでください!!」


─────────────────────


ホワイトヴァイパーを買い取って貰った後、私はある場所に来ていた。

「やっほ〜!」

「冷やかしなら帰れ!俺は忙しいんだ!」

しっしと手で追い返すような仕草をする。

この人はリスカル。

探偵だ。

とは言っても、探偵の概念をこの世界に持ち込んだのは私だ。

リスカルは元々、盗賊だった。

盗賊とは言っても義賊だ。

私はギルドの依頼でリスカルをとっ捕まえた。

義賊だからと行って見逃すわけはない。

「捕まえた〜!」

「な、なんだお前!放せ!俺は捕まるわけにはいかないんだ!」

「獄中生活はいや?」

「当たり前だろ!!」

「じゃあさ!私のプライベートアイになってよ!」

「プライベートアイ?」

「そう!プライベートアイ、探偵さ!」

「探偵?」

「探偵っていうのは依頼を受けて調査とか色々するの!」

「へぇ……?」

「簡単に言えば盗みをしない盗賊、かな?」

「なるほど……」

「お金は依頼人から貰えるから!ね?」

「いいな!それ!」

「私も技術を提供してあげるよ!」

「技術?」

「私は一応、発明家だからね〜!」

「面白そうじゃねえか!」

「じゃあ冒険者ギルドに報告にいこ〜!」

「あぁ!」

「ちなみに次に盗みとか犯罪したら……」

私は人差し指を立てて、満面の笑みで。

「死罪だからね!」

「お、おう……」

当時のリスカルは若干引いてきた気がする。

そんなに怖かったかな?

そしてリスカルは[[rb:探偵 > プライベートアイ]]になった。

それから色々な発明品を提供し、時々依頼したりしていた。

結構繁盛しているようだ。

「色々提供したのにそれはないでしょ!?」

「うるさいぞ!戦乙女パンドラ!」

「だからルミって呼んでよ!」

「黙れ!」

「それと冷やかしじゃないし!ちゃんと依頼持ってきたし!」

「よし、話を聞こう」

「切り替えはや!」

「お前の依頼は金がいっぱい入ってくる」

「やっぱ金かこの野郎!」

「いいから聞かせろ」

「はぁ……全く……」

私はリスカルと向かう合うように座る。

「この近くでホワイトヴァイパーが確認されたの」

「ホワイトヴァイパーだと!?」

「うん。でもそれは私が倒したから問題ない。」

「さすがは《戦乙女(パンドラ)》だな」

「うるさい」

「で、要はなんでホワイトヴァイパーがこんな近くまで来ていたのか、だな?」

「そう!頼める?」

「任せとけ」

「よろしく!」

依頼をした後、私はリスカルの事務所を出た。

すると警報が響いた。

行かなきゃ!!

この警報はアルタイルに何かが迫った時に発令するものだ。

概ねモンスターの襲来だけど……

ホワイトヴァイパーの件も気になる。

それに関連してなければいいけど……

そんな不安を抱えながら、私は冒険者ギルドに駆け込んだ。

「何があったの!!」

「ルミ様!!」

「アルタイルの北西でドラゴンが確認されました!!」


─────────────────────


「ドラゴン!?ホントに!?」

「はい」

ドラゴン。

それは生態系の頂点に立つ、最強のモンスター。

それは国一つ滅ぼす力を持つ存在。

それは私が越えなければいけない存在。

「私、行きます」

「今回は流石にルミ様でも倒せません!!」

「私は越えなきゃいけない。ドラゴンを」

「それは許しません」

私がエリアとそんなやりとりをしていると聞き覚えのある声が背後から聞こえてきた。

「カーニャ!リファ!」

「どういうつもりですか?ドラゴンを討伐しに行くなどと」

「行かなきゃいけないの。」

「何故ですか!!」

リファが声を荒げた。

「私は……能力じゃなくて私自身を見てくれる貴方様を失いたくありません!!」

それがリファの本音……

「せっかくできた信じられる人を……私は……私は……!!」

リファは涙ながらにそう言う。

この子は誰も信頼出来なかった。

その中で見つけた光が私だったんだ……

「そっか……リファ、ありがとう」

そう言って私はリファを抱きしめた。

「え……?」

「私は死ぬつもりは無いよ。君を残してなんて死ねるわけがない。」

「だったら……!!」

「でも、ドラゴンは倒す。」

「なんで……!!なんでそこまでして……!!」

「私が私であるための証明のためだよ」

「証明……?」

「だから大丈夫。アルタイルには手を出させないし、死ぬつもりもない。だから待っていて欲しいんだ、帰ってくるのを。」

「ルミ様……」

リファは手を離す。

「ありがとう。行ってきます」

「必ず帰ってきてください。」

「死んでも戻ってくるから」

それだけ言って冒険者ギルドを出た。

外にはカーニャがいた。

「ルミ様、どうするおつもりで?」

「《[[rb:戦乙女 > パンドラ]]》の力を解放する」

「しかしそれでは……!!」

「わかってる。どうにかするから」

「全く……」

「だから美味しい料理、作って待っててよ!」

「承りました」

私は《シエル》に跨り、ドラゴンの元へと向かった。


─────────────────────


私が私であるための証明。

それは私が作り出した魔法でドラゴンを倒すこと。

そうすればきっと、私が魔法が使えるんだ、と胸を張って言える。

そんな気がする。

そのために、戦うんだ。

これは私のための最後の戦い。

見えた。

「あれが……ドラゴン……」

私はポーチから錠剤の入った瓶を取り出す。

この錠剤の名前は《超強化薬》。

これを使えば一時的に身体能力は上昇する。

そのデメリットは──────。

「さぁ、勝負だ!!」

私は《クレシェンテアルク》を取り出し、弦と矢を生成する。

そして数発発射する。

しかし、効果は無さそうだ。

槍を投げても関係ないだろう。

なら剣で斬るしかない。

錠剤を飲む。

「うっ……!!あぁ……!!」

熱い。

体が燃えるように熱い……!!

これから10分で決着をつける!!

箒の上に立ち、《ファンタズムエッジ》を構える。

「はああぁぁぁ!!」

私はドラゴンに斬りかかる。

しかし。

「くっ!!」

皮膚が硬く、弾き返される。

「グロウオォォォォ!!」

「強い……!!でも!!」

私は再び斬りかかる。

「グロウオォォォォ!!」

炎のブレスを吐いてくる。

「くっ!!」

私はそれを紙一重で回避する。

「グロウオォォォォ!!」

ドラゴンは大きく羽ばたく。

その風に私は吹き飛ばされ、墜落する。

「うあぁぁぁ!!」

私は地面に叩きつけられる。

「かはぁ!」

強い……最強なだけある……

でも……

それでも……

「負けられない!!」

私は立ち上がる。

ドラゴンが飛べるのは羽があるから……

なら羽を破壊すれば!!

私は左腕のブレスレットに触れる。

それと同時に《シエル》が飛んでくる。

私はそれを掴み、空中に飛び立つ。

「うおおぉぉぉぉぉ!!」

私は全力で羽の付け根を狙う。

「届けえぇぇぇ!!」

刃は障壁で止められる。

越えるんだ……!!

こんなところで止まれない!!

私は錠剤をさらに飲む。

「行っけえぇぇぇぇ!!」

バリンという音と共に障壁は割れ、翼を斬った。

「グロウオォォォォ!!!!!!」

そしてドラゴンは墜落する。

それを見て私も地面に降りる。

「《諸刃の剣 (リミット・オーバー)》!!!」

その宣言と共に、刀身はドラゴンよりも大きくなる。

《ファンタズムエッジ》には隠し機能を搭載していた。

それが《諸刃の剣 (リミット・オーバー)》。

これは魔石の中に封じ込められた魔力を全て解放して、刃に変える。

これを使えば、《ファンタズムエッジ》は壊れる。

だから最終奥義にして切り札。

「はああぁぁぁぁぁぁ!!!」

「グロウオォォォォ!!!!」

私は剣を振るう。

その一撃でドラゴンは真っ二つになった。

「はぁはぁ……うっ……!!」

やばい……反動が……!!

その前に……!!

私は限界の体を動かし、ドラゴンに近づく。

「君の力を私に頂戴……」

私はドラゴンの血を全て採取する。

そして、ドラゴンの遺体と回収した血をポーチに入れた時、限界がきた。

身体中から血が噴き出た。

「うああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

《超強化薬》の反動、それは超強化に追いつけなかったことで体のありとあらゆるところから血が噴き出る。

「はぁはぁ……勝った……証明……出来た……私は……魔法を……つか……える……んだ……」

そして意識が無くなった。


─────────────────────


いつからだっただろう。

魔法を使えないことに負い目を感じていたのは。

もうそんなことも覚えていない。

《記憶喪失薬》の影響だろうか。

そんなことはどうでもいい。

あの日、私は記憶を取り戻した。

そして、魔法への憧れを思い出した。

元の世界には魔法は無い。

だが、この世界にはあった。

前の世界で手が届かなかったものがこの世界にはあった。

でも、この世界に来ても、神様は私の望みを叶えてくれなかった。

どんなに練習しても、どんなに勉強してもそれは手に入らなかった。

その代わりにとでもいうかのように『完全記憶能力』を持っていた。

でもその力は苦しみを増やすだけだった。

私は全てを覚えている。

嫌でも覚えてる。

テイル姉様が火魔法を使ったこと、カルマ姉様が水魔法を使ったこと、マロン姉様が土魔法を使ったこと。

どれだけ部屋にいても思い出してしまう。

どんなに忘れようとしても忘れられない。

それが私の運命、そう思っていた。

そんな時、私は思い出した。

そして作った。

私の魔法、私だけの魔法を。

でも、受け入れられなかった。

貴族は『あんなのは魔法じゃない』『子供の遊戯だ』などと言った。

それが悔しかった。

何がなんでも認めさせたいと思った。

だから私は冒険者になった。

確かに将来の為という理由はあった。

でもそれは二番目の理由だ。

本当の理由は『私の魔法を認めさせるため』

その最後の目標がドラゴンの討伐。

最強生物を倒せば認めてもらえると思った。

私は魔法が使えると言い張れると思った。

そして私はドラゴンを倒した。

私の願いは叶った。

現実はすぐには変わらない。

でも……少しずつでいい。

私の発明を、魔法だと言ってくれれば……

それで私はきっと……きっと……

──────魔法使いになれるから


─────────────────────


「───っん、う〜ん……」

「ルミ様ぁ!!」

私が目を開けた時、そこには涙をいっぱい溜めたリファがいた。

その隣には泣き腫らしたような顔したカーニャがいた。

「心配かけないでください!!」

「心配かけてごめん。でも、約束したから。死んでも戻ってくるって」

そう言って私はリファをギュッと抱きしめた。

「カーニャもする?」

「………はい」

私はカーニャもギュッと抱きしめた。

「ですが、お説教はします。」

「えっ」

「《超強化薬》のことについて聞きました。」

「カーニャ!?」

「ルミ様を回収しようと行こうとした時に引き留められ、問い詰められました。」

「マジかぁ……」

「本当にルミ様は──────」

それから二時間ほどお説教された。

無茶はやめておこう。

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