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第4話《弟子と始まり篇》私が弟子をとる!

私がカインズの部屋に戻ってから三十分ほど経つと、カインズと受付嬢が入ってきた。

「悪い、待たせたな!」

「全然大丈夫だよ!」

資料を読んで時間潰してたしね〜!

私は二人と向かい合って座る。

「まず、これが冒険者カードだ。」

そう言って差し出されたのは銀色のカード。

「ホントはミスリルにしてやりたかったんだが、こいつが『シルバーにしておいた方がいいです!』言うもんだから……」

冒険者にはランクシステムが導入されている。

ランクはブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリルの五種類だ。

もちろん後半に行くにつれ、高ランクだ。

「ルミエール様、僭越ながらシルバーランクにした理由を述べさせてください!」

受付嬢の声と体は少し震えていた。

相当勇気を出したのだろう。

「そんなに思い詰めた表情をしないで?」

「え?」

受付嬢は気の抜けた声で返事する。

「それに……私、そんなに怖く見える?」

「い、いえ!そういうわけでは……」

「思っていることを話してみて?」

まぁ、皆目見当はついている。

「えっと……ミスリルにしなかったのには勿論理由があります!その理由は二つあります!一つ目は依頼に慣れてもらうためです!ギルドマスターに圧勝したとはいえ、最初から危険な依頼ばかりではなく、少しずつ慣れていって欲しいと思っています。それから二つ目、多分ですがミスリルにしてしまうとルミエール様が楽しくないと思いまして……」

理由は予想通りだった。

私は思わず俯き、プルプルと震える。

「え、あ、な、何か失礼なことを申しましたでしょうか……」

受付嬢は恐る恐る聞いてくる。

「違うよ〜!私のことよくわかってる〜!」

私は思わず受付嬢を抱きしめた。

「ふぇ!?あ、ル、ルル、ルミエール様!?」

「ルミでいいよ!」

「で、ですが……」

「ルミ様がこう言ってるんだ!いいんだよ!」

「それとカインズ、この子、私の専属の受付嬢に出来ない?」

「わ、私がですか!?」

冒険者ギルドには『専属受付嬢』という役割が存在する。

一定のランクがある冒険者、もしくはお金で契約できる。

勿論、双方の承認が必要だ。

お金で契約が出来るといっても、契約金の全てが受付嬢に振り込まれる訳ではない。

実際振り込まれるのは二割ほどだ。

残りの八割はギルドの資金になる。

「ダメかな?」

「私なんかでよろしいのでしたら……」

受付嬢は少し自信無さげに言う。

私はそんな受付嬢に右手を伸ばし、彼女の額に人差し指を当てる。

「私なんかって言わないの!ね?」

そう言ってウインクする。

「ルミ様……」

「なら決まりだな!」

「じゃあどれくらいがいい?」

「お金は要りません!」

「だけど……」

「私にとってルミ様の専属受付嬢になれるということが名誉なことですから!」

本当にいい子だ。

この子に巡り会えてよかった!

「改めてルミエール=ラウエルだよ!よろしくね!」

「ルミ様専属受付嬢のエリアです!よろしくお願い致します!」

私達は堅く握手する。

「では、冒険者ギルドの仕組みについて説明させてください!」

そしてエリアはギルドの説明をしてくれた。

ギルドで依頼を受けるには一階にある掲示板に貼り出されている依頼書を取り、受付する。

依頼を完了した際は証拠品を提出する。

その証拠品は種類によって設定されているものが異なる。

また、ランクを昇級させるためには一定数依頼をこなす必要がある。

昇級すればすればするほど昇級のための依頼の数が増える。

それにランクによって受けられる依頼に制限がある。

薬草採取などの簡単な依頼を高ランクの冒険者に取られないようにする為の措置だろう。

冒険者に対する懲罰に関してだが、禁止事項は三つある。

一つ、冒険者同士の殺し合い。

二つ、一定期間依頼を受けない。

そして三つ、死ぬこと。

二つ目に関して、一定期間依頼を受けないと資格が剥奪される。

剥奪されれば再び発行しなければならない。

だが、ランクはブロンズからになり、昇級の為の必要依頼数は2倍になる。

しっかりした厳罰だと思う。

「───以上がギルドの説明になります!」

「わかった!」

「じゃあルミ様、これからよろしくな!」

「えぇ!よろしく!」

こうして私は冒険者になった。

ギルドから出た後、私はシエルに乗ってアトリエへと戻る。

「遅くなっちゃったな〜!」

外はすでに暗くなっており、星空が広がっていた。

「早く帰らないと怒られそう……でも、お母様がアトリエに来ることなんて滅多にないからな〜!」

実際、お母様はかなり忙しい。

お父様より遥かに忙しい。

別にお父様を馬鹿にしているわけではない。

だから私が冒険者になったこともバレない。


─────────────────────


───と思っていた時期が私にもありました。

「な、なんで……?」

私がアトリエの玄関を開けると仁王立ちするお母様がいた。

「あら、どこに行ってたのかしら?」

「いや、ちょっと実験に……」

「カーニャ?」

「はい、冒険者ギルドに登録しに行っていました。」

「カーニャ!?」

「カーニャはこう言ってるけど?」

こ、怖い……!!

鬼だ!鬼ババアだ!

「誰が鬼ババアですって?」

「く、口に出てた!?」

「えぇ、そんな事を思っていたのね?」

「ひぃぃぃぃぃ!!」

私は恐怖を感じ、逃走を図ろうとした。

しかし、

「どこに行くのかしら?」

私はガシッと肩を掴まれる。

オワタ \(^o^)/

私は捕まった時点でどこに連れていかれ、何をされるかは既にわかっていた。

というより、それは私が開発したからだ。

なんでそんなのも開発してるんだ、という話になるが……

べ、べべ、別に個人的な目的で使う為じゃないから!!

そして私は王宮の懲罰室に連れていかれる。

そこにはXを中心で90°折ったような台座がある。

それを見て少し鼓動が早くなる。

こ、興奮してるんじゃなくて、こ、怖いだけだから……

自分にそう言い聞かせる。

お母様が指をパチンと鳴らすと使用人達が現れ、私を下着姿に剥き、台座に拘束される。

足指ひとつひとつも。

「しばらく反省しなさい?」

そう言ってお母様は懲罰室から出て、外にあるボタンを押し、どこかへ去っていった。

するとマジックハンドが伸び、私の体の様々な箇所にピタッと置かれる。

腋に脇腹、首、太腿、鼠径部、土踏まず、足指の間、踵etc……

そして一斉に動き出す。

「あははははひゃひゃははははははひゃひゃはははひゃひゃははははははひゃひゃははははははは〜くしゅぐたいいいひひひひひひひひひひひ〜あはははははひゃはひゃはひゃはははははひゃはははははひゃひゃ〜」

それから二時間ほど、色んな方法でくすぐられ続けた。

潤滑油を使われたり、筆を使われたり。

筆に関しては足裏の分はインク付いてて、足裏が真っ黒になった。

くすぐり方が変わったせいで何回かイっちゃった。

個人的には満足。

って私何言っちゃってんの!?

ち、違うから!

別に気持ちよくなってないから!!

その翌日、私は家族の目の前に立っていた。

「さて……みんなに説明しなさい、ルミエール?」

「はぁ……はい、お母様……」

仕方なしに私は家族に説明した。

私が冒険者になった理由。

そのために発明した武器。

そして『魔石』。

「なんてものを開発してるんだよ……」

「これは戦争の火種になりかねんな……」

「やっぱりそう思います?」

「当たり前だ!これを量産することは出来るか?」

「材料があれば不可能ではありません」

「その言い振りからするに生産に時間がかかるのですね?」

カルマ姉様が的を得た発言をする。

「そうなんです!」

「なるほどなぁ〜!じゃあ弟子かなんかを取ってみたらどう?」

マロン姉様はそんな提案をする。

「なるほど……ですが、そんな人いませんね……」

全く思い当たらない。

個人的には弟子は女性がいい。

「とりあえず、内密にしておきますね!」

「ああ……」

「じゃあ私はちょっと用事があるので!」

私は腰から《シエル》を取り外し、元のサイズに戻す。

そしてベランダに出て、箒に跨る。

「行ってきます!!」

私は王宮を飛び出して、冒険者ギルドに向かった。

勿論用件は依頼を受けるために!


─────────────────────


冒険者ギルド前に到着した私は箒からおり、ストラップサイズに変更して、腰につける。

そしてギルドの扉を開き、中へと入っていく。

「ルミエール様!昨日はありがとうございました!」

「酒、美味かったです!」

「良かった〜!楽しんでくれたみたいで!それと冒険者なんだから敬語なんて要らないよ〜!」

そんな事を言いながら受付に向かう。

「エリア!おすすめの依頼を見繕ってくれない?」

「はい!お任せください、ルミ様!」

そう言ってエリアは奥に入っていく。

待つこと二分。

戻ってきたエリアは一枚の依頼書を持っていた。

「こちらなんてどうでしょうか?」

差し出された依頼書は『オーク討伐』。

報酬は銀貨5枚。

「いいね!じゃあこれを受けるよ!」

この世界の通貨には硬貨が用いられている。

銅貨、銀貨、金貨、白金貨が存在している。

日本で言うところの、100円が銅貨、1000円が銀貨、5000円が金貨、10,000円が白金貨だ。

オーク自体、そこまで珍しくもないモンスターだ。

それにそれほど強くもない。

ゴブリンやコボルト、スケルトンと並ぶ、初心者向けのモンスターだ。

初めての依頼にはぴったりだ。

「じゃあ行ってくる!」

「はい、お気をつけて!」

私は冒険者ギルドを出て、《シエル》に乗り、オークの出現報告のあったその場所に向かう。

街を抜け、国璧を超えて、私は森の上空を飛んでいる。

そしてある程度来た時、私はオークの群れを見つけた。

私はとりあえず上から狙撃するべく、右腰から《クレシェンテアルク》を取り出し、ボタンを押し、攻撃用意をする。

そして《シエル》の上に立ち、弦を引き、何発か放ち、オークを撃破する。

だが、あまり減らない。

矢を放つには数秒のラグがあり、効率よく倒せない。

なら降りたほうがいいか……

そう思い、私は《クレシェンテアルク》を再び右腰に装着する。

今度は《ラファールランス》を組み立てる。

そして地上に降り、オーク達との距離を詰める。

「ふっ!はっ!せりゃぁぁ!!」

私は的確にオークの心臓を貫いていく。

背後から攻撃が飛んでくるも、私はそれをしっかりと弾き、仕留める。

「こんなものかな!」

私はオークの討伐証拠である指を切り落とし、それを袋に詰めて、ギルドに戻る。

討伐時間は40分ほどで終わった。

「ただいま〜!」

「お、おかえり!ルミエール様!」

「初依頼、どうだった?」

「意外と疲れなかったかな〜!」

「それはルミエール様が強えだけだ!」

他の冒険者とそんな会話をした後、受付に証拠を提出する。

「はい、確認しました!依頼達成おめでとうございます!これが報酬の銀貨5枚になります!」

「ありがとう!」

私は報酬を受け取り、アトリエへと戻った。



私はルミエール=ラウエル、16歳!

冒険者になってから三年が立ち、私もついにミスリルランクの冒険者になった。

そんなある日、今日も今日とて私は依頼を受けていた。

というより、出動要請を受けてきていた。

理由は単純明快。

駆け出しの冒険者が薬草採取の依頼に出たところ、オークの超上位種の『ハイオークキング』が出現したという。

ハイオークキングはゴールドランクなら倒せるのはずなのだが、現在、高ランク冒険者が根こそぎ出払っている。

理由は最近発見されたダンジョンに潜るためだそうだ。

私も行きたかったが、カインズに何かあった時に高ランクの冒険者一人は残って欲しいと言われ、仕方なく残った。

そんな時にこの事件だ。

「とりあえず行ってくるね〜!」

「ル、ルミエール様!あなたで大丈夫なんですか?」

まぁ、駆け出しなら心配して当然か……

「安心して!私は大丈夫だから!」

そう言って私は目撃報告にあった場所に向かった。

「なぁ、新人。ルミエール様が冒険者の間でなんて呼ばれてるか知ってるか?」

冒険者の一人の言葉に首を横に振る。

「あの方は……」

少し溜めて言う。

「───《戦乙女(パンドラ)》」


─────────────────────


私が目撃情報のあった場所の上空を飛んでいるとハイオークキングを発見した。

そこまでは良かったのだが……

「はぁ!?」

思わず声が出た。

何しろ、私を同い年ほどの少女が勇敢にもハイオークキングに立ち向かっていた。

というより、立ち向かわざるを得ない状況だった。

なんでこんなところに……?

「こ、来ないで!!」

その少女の剣は震えていた。

よく見ると少女から少し離れた場所には近衛兵らしき人達が倒れていたり、馬車が壊れていた。

どこかのご令嬢だろうか?

とりあえず助けなきゃ!

私は左腰から《ファンタズムエッジ》を取る。

そしてシエルから飛び降りる。

その間にボタンを押し、剣先を展開する。

「せいやぁぁ!!」

私は着地と同時にハイオークキングを真っ二つに斬り伏せる。

ドサリという音を立てて、真っ二つになったハイオークキングは倒れた。

「───え?」

私はその子の顔を見た瞬間、

「好き……」

「え!?」

一目惚れした。

「ねえ!君、私の弟子にならない?」

その発言はどう考えても下心しかなかった。

でも、それでよかった。

─────これが私とリファの運命の出会いだった。

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