目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
第26話 金鉄銅銀音vs丹羽斗刺嫌、林世死飽、斎藤詐利③

【南蛮武家敷地竹林/決闘場 丹羽斗刺嫌、林世死飽、斎藤詐利】


 斎藤の合図で一斉に3人が飛び出した。


「し、死ねぇーーッ!!」


 林が涙声で叫びながら飛び出した。


「くそォッ!!」


 丹羽が苛立ちを隠さず、悪態を付きながらも飛び出した。


(よし! 馬鹿が叫んだ! もう銃口はこちらに向かない!!)


 斎藤が、飛び出しながら思惑通りに感謝し走り出す。



【金鉄銅銀音】


「ッ!!」


 ドクン――

 金鉄銅の心臓がひと際強く脈打つ。


 3人の一斉突撃――

 ドクン――


 金鉄銅は一瞬迷う――事無く、前方に向かって駆け出し、ハイレディポジションから腕を突き出し――ガンガァンッ!!


「ギャッ!!」


 2発の弾丸が発射され、林が倒れた。

 右胸と腰に1発ずつ。

 およそ3mの距離での射撃だったが、さすがにライフリング無しの滑空銃であっても、ここまで近づけば当てるだけなら問題ない。

 金鉄銅は、今、銃に対する認識を遠距離武器から近距離武器へと、頭の中の認識を無理に書き換えている。

 つまり獲物は銃だが、扱いは槍のつもりで戦っている。

 長距離戦では勝ち目ゼロなら思い切って接近戦に徹する。

 これも戦略の一つとして朱瀞夢銃理に叩き込まれた戦法だ。


 ドクン――


 次に獰猛な殺気を隠しもしない丹羽に突進しつつ、2発の槍を突き出した。

 つまり弾丸を2発撃った。

 その弾は、丹羽の右膝と右太腿を貫いた。

 丹羽は翻筋斗打もんどりうって倒れた。


 林は致命傷では無いが、戦闘不能。

 丹羽も命に別状は無いが、機動力を失った。

 2人とも生きているだけの死体となった。


 金鉄銅はそのまま振り返り、斎藤に銃を向けた。

 心臓は爆発的に動き続けていた。



【斎藤詐利vs金鉄銅銀音】


「ま、マジかよ……。必勝の作戦だったのに……! そんな素人の構えなのに!」


 斎藤は驚愕で足を止めてしまった。

 斎藤から見れば、ほんの一瞬の出来事であった。

 斎藤の号令から2秒かからず2人を倒されてしまった。

 金鉄銅と最後の獲物の斎藤との距離は7m。

 あの銃では当たらない可能性が高いが、勝つには近づくしかない。


「ハイレディの事? お前を誘い出す罠に決まってるじゃない」


 ハイレディポジションは誘いだったのだ。

 強姦された者として、この場で一番邪悪なのは斎藤だと知っている。

 その斎藤を誘い出す為の演技だったのだ。


「でも考えたわね。この銃の弱点を突いた戦法は見事だったけど、この程度で負ける訓練はしていないのよ!!」


 金鉄銅は斎藤から視線を切らさずに、右手で銃を構え、左手で、ナイフと催涙スプレーを拾い、これまた冷静に林の側に行って、スタンガンを拾った。


「武器は3種類。まさか貴方が素手とはね。囮で死ぬつもりだったの?」


 死神の鎌を斎藤の首筋に当てながら詰問する――のは気のせいでは無いだろう。

 ここにいる誰もが、金鉄銅の放つ殺気から死神を連想していた。


「ケッ! よく言うぜ! レイプされている時は何も抵抗できなかった癖によ!!」


 そんな死神に対し、命乞いをしないどころか、更なる悪態で煽る。


「黙れッ!!」


 金鉄銅が銃を突き出しながら怒鳴る。


「喘いで気持ちよさそうだったぜ?」


 斎藤が体をくねらせる。

 今この瞬間、世界で一番気持ち悪い人間だっただろう。


「貴様……ッ!! デタラメを言うなッ!!」


 屈辱の記憶が怒りを呼び起こし、金鉄銅が斎藤に向かって歩く。

 その足取りは、巨人が台地を踏みしめるが如く、自信に溢れた歩きだった。

 敵の武器は全て奪い、あとは丸腰の奴が1人。


(よし……あと3mまで来い!)


 だが、この状況こそが斎藤の作戦だった。

 勿論、作戦Aで仕留められれば言う事は無いが、失敗も考えての、自分だけが生き残る為の作戦B。


(全ての武器を奪ったんだ。油断は大きい! 背中の竹槍は見えていない! それに奴は気が付いていない! 自分の致命的ミスを!)


 斎藤の煽りは冷徹な計算と作戦Bの為だった。


「どうだい? もうアンタの勝ちは確定だろう? 最後に俺のチンコを味わってイキながら俺を殺すのもアリじゃない?」


 斎藤はジーパンのジッパーを下げて、汚い粗末なモノを出した。

 全国放送で困った行動だが、被害者の顔以外にモザイクは掛かっていない。

 例え内臓が飛び出したとてモザイクは掛けないので、イチモツが出た程度で慌てるのは民放だけだ。


「ほら見ろよ! 俺様の立派で大きなイチモツをよ!! またブチ込んで欲しいだろ!? 思い出せよ!!(あと3m近づけば間合いだ!)」


 両手を広げて斎藤が近寄る。


『こ、こんなクソ野郎が存在するのかッ……!!』


 全国視聴者の感想だ。


 流石の斎藤も全国放送で股間を披露するのは恥ずかしいが、勝つ為に恥ずかしがってはいられない。

 そう。

 これは勝つ為の作戦なのだ。


(ゼロインで3発、林に2発、丹羽に2発ずつ! 7発撃ち切った! つまりあの銃は弾切れ! 弾切れに気が付かせるな! 煽れ! 怒らせろ!)


「ほれほれ」


 斎藤はイチモツをしごきだし屹立させた。


「貴様……ッ!」


 斎藤は狂った行動に対して、心は極めて冷静だった。

 南蛮武の家に、同じ銃があるのも運が良かった。

 あの銃のマガジンには7発しか弾が入っていない。

 つまり金鉄銅は残段数を勘違いしているか、怒りでソレどころではないかのどちらかなのだ――


 斎藤が腰を振りつつ、歩み寄る。

 実に滑稽で器用で、ダンサーの資質を感じる奇妙な動きで残り3mまで近寄った。


「……フフフ! アハハ!」


「ッ!?」


 突如、金鉄銅が笑い出した。


「お前の狙いは知っているぞ! お前がこの期に及んで勝つ可能性を放棄しているはずが無い!」


「ッ!? ね、狙い!? 狙いは最後のセックスだけど……」


 狙いを当てられ動揺する斎藤。

 だが、背中の竹槍は見えていないはずだ。

 そう思いながら、なおも斎藤はにじり寄る。


「お前が予想以上のゲスで安心したわッ!! 希望通り、最後の勝負と行きましょうかァッ!」


「なっ!?」


 驚いた事に間合いを詰めたのは金鉄銅だった。

 ドクン――

 金鉄銅の、今日一番の心臓の鼓動が鳴ると共に、3発の銃声が鳴った。


「えっ(銃声――何で――弾切れ――馬鹿な!!)」


 1発目の弾丸が、斎藤の前歯左側に命中し、そのまま左側の奥歯までの歯を全て粉砕し、頬から弾丸が突き抜けた。

 2発目の弾丸が右肩を貫き、斎藤は体を前後させられた。

 3発目の弾丸は右肩甲骨に当たり、骨を砕いて弾丸は体内に収まった。


「弾……切れ……じゃ……」


 斎藤が倒れながら、半分砕けた口から辛うじて声を発した。


「馬鹿ね。あんた達が密談している間に、新しいマガジンに交換したに決まっているでしょ。残弾は今がゼロなのよ!」


 金鉄銅がマガジン排出ボタンを押すと、空マガジンが地面に落ち、新しいマガジンが装填された。

 鷲掴みでスライドを引き、初弾をチャンバーに装填させ、改めて斎藤に向けて構えた。


「今、7発に戻ったけどね!」


 林は腰椎を砕かれ、右胸は右肺を貫いたのだろう。

 息はしているが、しているだけだ。

 丹羽は太ももと膝を砕かれ、這いずる事しかできない。

 怒りの表情を崩さないのは大した根性だが、それだけだ。

 そして斎藤は左顔を砕かれ、利き腕の右肩を貫かれ、右肩甲骨まで砕かれた。

 そんな状態で、竹槍を振るうどころでは無い。


「何かあるとは思ってたけど、武器を自作したのね」


 金鉄銅は斎藤が撃たれた衝撃で落ちた竹槍を拾って、斎藤の腹部に突き刺した。。

 完全決着であった――

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?