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第16話 強姦魔 丹羽 斗刺嫌、林 世死飽、斎藤 詐利

【最高裁判所】


「主文。魂の殺人を認定し被告人、丹羽斗刺嫌としや、林世死飽よしあき、斎藤詐利さとしを死刑とする」


 その瞬間、被告の丹羽、林、斎藤は苦い顔をして項垂れるも、まだ希望を持っていた。

 一方、被害者は一定の安堵の表情を見せるも、更なる憎悪に瞳を燃やしていた。


「被告の事情には汲むべき点が全く無く、非道な強姦に酌量の余地は無く、一審からの判決を支持しを認定、死刑を止むを得ないと判断する」


 丹羽斗詩嫌、林世死飽、斎藤詐利は自らの欲望を満たす為に、被害者を拉致監禁し凌辱した。

 どんなに精神異常を考慮しても、終身刑しかないと連日ニュースでも言われており、世間も同じ感情を持っていた。


という年齢を考慮しても、断罪すべき大罪である」


 ただ、加害者が全員中学生だった事が話題となった。

 大統領が制定した大人の定義にさっそく引っ掛かり、さらに最低でも死刑の強姦を犯した無法者の3人で、容赦なく顔が晒され報道されたのが話題の焦点だった。 


 北南崎が大統領就任以前より、強姦は魂の殺人との議論が根強く、北南崎が『仇討ち法』を施行すると同時に、死刑についての範囲を改め、殺人は当然、他の罪にも広範囲で死刑が適用され、その中でも強姦は魂の殺人を認め死刑に量刑が引き上げられたのだ。


 結局は世間の予想通り、と言うか、女性の圧倒的支持を経た上で至極当然の判決が出た訳であるが、裁判官が言葉を続けた。


「以上の様に、裁判として死刑を決定しましたが、異論はありますか?」


 死刑に対して、遺族に異論の確認を取る裁判官。

 傍聴席から被害者に一斉に視線を向けられ、被害者の金鉄銅かねくろがねどう銀音しろがねが答えた。


「……異論はあります!」


 傍聴席からざわめきが起こる。

 究極の刑罰である死刑に対して異論を唱える遺族。

 奇妙なやり取りがあったが、ここは、最高裁の判決に異論を唱える事が出来る国。


 この裁判は、年々増加する男女問わない強姦罪に対し、現大統領が肝入りで決めた政策の、2例目として適用される可能性がある裁判として注目を集めていた。


 被害者の異論は、その注目と期待に応えた形でもあった。


「それは権利を行使する、と言う意味でよろしいですか?」


「はい!」


 被害者の金鉄銅は改めて断言した。


「ほ、本当に宜しいのですか……? 私が認定したら、もう覆りませんよ?」


 裁判長は前回の決闘を現地で見ていた1人。

 被害者が希望するなら、認定するのが決まりだが、つい、翻意を促してしまった。

 認めれば、女1人対男3人の決闘となるのだ。

 どんなハンデが与えられるかは不明だが、見ていられない決闘になりそうで心が痛んだのだ。


「構いません!」


「わ、分かりました。被害者より異論が出ましたので死刑を棄却し、『被害者ニヨル加害者ヲ裁ク権利』の適用を認めます!」


『被害者ニヨル加害者ヲ裁ク権利』


 通称、『ハンムラビ法典法』或いは『仇討ち法』と呼ばれるこの法は、犯罪の種類と故意偶然を問わず『死刑』にのみ適用される法律。

 被害者感情に配慮し、刑罰を遺族の手で執行させる法である。


 ただし、あくまで仇討ちであって、死刑執行を遺族の手で執り行う法ではない。

 この法が適用されると、仇討ち法に則り、決闘場が設けられ遺族は犯罪者と戦う場が与えられる。


 つまり、直接恨みを晴らせるのだ。


(またあの残酷ショーを見せられるのか……)


 裁判長の白州御 拷鬼しらすお ごうきは、傍聴席の騒めきに何の対処もせず、被害者、加害者の退廷を命じ、裁判を終了させるのであった。

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