黄昏時の音楽室。私達はいつものように窓辺で喋っていた。
「そうか、そうか花菜乃は、その時彼氏にまたときめいてしまったのね」
「恥ずかしいし、先輩に聞こえるからボリューム下げてよっ」
パーカッション担当の
薄々感じ取っている方もいるだろうが、私は先輩と付き合っている。
「いよっす。
「ふえっ?!」
先程までいたはずの二人は消え、目の前いやあと1cmでぶつかるぐらいの近さに霧崎勇気先輩がいる。私の彼氏だ。
あまりの近さに少し後退りしながら訪ねる。
「ど、どうして先輩がここにいるの」
先輩は私の手を掴み軽く抱き締められる。そして耳元で囁く。
「先輩じゃなくて名前で呼んで」
部活中じゃないですか。って言ったら絶対拗ねる。言う直前で止まって良かった。
「二人だけでいるときは俺だけのことかん......」
「勉強中と学校いるときは適用しない。今部活中」
「せっかく恋バナ好きと恋愛小説家様にいい雰囲気つくってもらったのに」
夕陽め。彼女は恋愛小説投稿サイトで総合ランキング一位になったりとすごい作家様で、出版した作品のほとんど重版がかかるほど人気である。普段はうっかり者だが、知らないみなさまにとっては雲の上の存在。
ちなみに夕陽の書くジャンルは
心地よすぎる低音で夕陽の溺愛台詞を耳元で囁かれるとつらい。恋に溶けてしまいそうだ。
「ほんとにさ花菜の唇食べちゃいたい。丹花の唇だよね」
私の脳が警鐘を鳴らす。これはね、ね。逃げてしまいたいけど、恋に溶けた私は逃げれそうにない。