「ねぇ...桜の花言葉って知ってる?」
桜舞い散る中、弁当をもぐもぐと頬張りながら、幼なじみ松風桜はそう尋ねた。
「確か純潔とか優美な女性だった気がする。」
幼なじみである彼女の花屋を小さい頃から手伝ってきたお陰で、花の知識はそこそこある。
「うん、正解。それじゃあフランスでの桜の花言葉はなんでしょう」
フランス。彼女はあと2ヶ月でそこに旅立つ。
「フランスでの桜の花言葉は、私を忘れないで。」
私を忘れないで。遥遠い異国の地に旅立つ彼女はこれほどまでに揺れていたとは、気が付かなかった。
「桜。俺は待っているから、紫のアネモネと共に」
彼女の一番好きな花はアネモネ。きっとわかってくれるはずだ。
「ふふっ。ありがとう羽衣松、私は貴方を信じているから。」
彼女は本当に花が好きなんだと、改めて思った。