12月24日 13:31 東京駅 東北新幹線南乗り換え改札
「まだまだ来ない?」
「来ないねー」
乗る予定のはやぶさ29号は発車標にすら出てきていない。
今並んでいるのは12時代の新幹線ばかり。
…動くかな?
「改札…入っておこうか?」
「うん」
彩華に切符を渡して、改札内に入る。
改札内も人でごった返していた。
多くはスーツを着たサラリーマンである。
「あ、待合室あるよ!」
「良いね、そうしよう」
待合室に入る。
待合室も人でごった返していた。
空いている座席は無く、立っている人もいる。
コンセントも全部埋まっていた。
駄目だこりゃ。
私達は待合室を後にした。
ホームの待合室に行こうとも一瞬考えたが、座れないだろうと言う事が目に見えているから、止めた。
仕方ない、コンコースで待つかぁ。
…新幹線、動く分かんないけど。
16:41 21番線
[21番線に14時28分発、はやぶさ29号、新青森行が10両編成で参ります。この電車は、上野、大宮、仙台、盛岡、終点新青森に停まります]
新幹線は無事に来た。
まぁ、ここから動くかは分からないけれども。
[はやぶさ号は、全部の車両が指定席です。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車です。尚、全車両禁煙です]
放送に従い、グランクラスの乗車位置である10号車へ向かう。
全ての乗車位置に列が出来ていた。
しかし、自由席の列程では無い。
[間もなく21番線に、はやぶさ29号新青森行が10両編成で参ります。黄色い線までお下がりください]
緑と白のツートンカラー、ピンクのラインを施した先頭が長い新幹線が入って来る。
この前、青森に行った時もこの車両だった。
[21番線ご注意ください。2時間遅れ、はやぶさ29号、新青森行の到着でーす]
グランクラスの列には16人が並んでいる。
私達を含めて18人。
グランクラスの定員丁度だ。
[列車が到着しましてもー、車内の清掃を行いますからー、ご乗車は今しばらくお待ち願いまぁーす]
新幹線が到着すると、車内から乗客が一斉に吐き出される。
乗客の降車が終了すると同時に清掃員が車内へと向かった。
後…何分位でこの寒さから解放されるのかな。
16:49
[お待たせしました、車内清掃が完了しました。只今からご乗車頂けます]
放送と同時に清掃時に一度閉じた扉が再度開く。
今度は人を吸い込む為に。
車内に入り、座席に向かう。
座席に着いたら、トランクを座席上部のハットラックに入れて帽子を脱ぐ。
「帽子を入れれる所は…」
「無さそう」
「そうね」
仕方なし、彩華の分も上のハットラックに入れる。
彩華は既に座席をリクライニングさせており、既に
私もリクライニングさせて身体を楽な体勢にする。
[ご乗車ありがとうございます。はやぶさ29号新青森行です。信号が変わり次第発車します、車内でお待ちください]
放送があってから数秒後、新幹線はゆっくり動き出した。
約2時間遅れ、新青森に着くのは何時になるのやら。
[ご乗車ありがとうございます。次は上野です]
車掌さんは少し焦っている様な気がする。
少し早口で、声も張ってるし。
[本日、大雪の影響により列車に大幅な遅れが出ております。お客様には大変ご迷惑をお掛けしております事をお詫びします]
天候はどうしようも無い事だ。
車掌さんが謝る事じゃないし、責任も存在しない。
[また、本日、グランクラスのサービスを中止させて頂いております。ご了承下さい。間もなく、上野です。21番線到着、お出口左側です]
上野駅のホームに入る。
東京駅と同じく、上野も多数の人々が溜まっていた。
しかし、実際に乗車する人は少数。
殆どは後続の新幹線の乗客だった様だ。
[はやぶさ29号、新青森行です。間もなく発車します、扉にご注意下さい]
遅れを取り戻すべく早々に扉を閉めて発車する。
…特にやる事も無いし、寝よ。
起きる頃には新青森に着いてるでしょう。
20:31 はやぶさ29号 10号車
[―――終点新青森です。奥羽本線はお乗り換えです。お忘れ物の無い様、お仕度ください。本日も、日本国有鉄道をご利用下さいましてありがとうございました]
「ん~…?」
「あ、おはよう」
「うん…おはよう」
お外真っ暗!
まぁ、当然か。
[ありがとうございました、新青森に着きます。20時30分現在、奥羽本線は大雪の為全線で運休しております。お客様には―――]
と、言うと…?
奥羽本線が止まってると…。
[――新青森からの在来線へのお乗換は出来ません。新青森から在来線へお乗換頂く事は出来ません、ご了承下さい]
タクシー、使うしかないかぁ。
…あ、車じゃ海渡れんやんけ!
[また、北海道方面も全列車が運休となっております]
今日は新青森止まりかな…?
うーん、まぁ仕方ない。
「紫雲ちゃん」
「ん?」
「津軽海峡、船で渡れたりしない?」
「艦?」
「船」
「え、大湊から1隻借りるの?」
「違う違う、フェリーだよ、フェリー!」
「あ、フェリーかぁ」
艦かと思ってた。
危く職権乱用で降格される所だった、危ない危ない。
…そうか、フェリーなら動いているかもしれない。
ただ雪が降り積もっているだけだし。
「フェリー乗ろうよ、紫雲ちゃん」
「うん、そうしよう」
21:01 青森フェリーターミナル
タクシーを使って港まで来た。
フェリーなんて久しぶり。
潜水艦なら毎日の様に乗ってるけれど。
「乗船券確保~」
0230発の便にした。
2225の便もあったけど、0205に函館着かれても困る。
0230発なら0610に到着するから丁度いい。
「乗船まで何しよっか?」
「う~ん…」
また待つだけ。
売店は閉まってるし…待つしかないかぁ。
12月25日 02:00
乗船が開始された。
ボーディングブリッジを通って船内へと向かう。
あぁ、伊820に乗る時もこんなのがあったらいいのに。
「部屋は上?」
「そう、上」
階段を上り、自分の部屋へ向かう。
今回は2人用のスイートを取った。
ルームキーを刺してドアを開ける。
トランクを窓沿いの丸机に置いて、ベッドに飛び込む。
「はぁ~もっと早く乗せてよ~」
彩華がベッドに突っ伏せながら愚痴を言う。
私も強くそう思った。
「分かる~!船はもっと前から居たのにね?」
「ね~!」
「あ、鍵掛けないと」
起き上がって部屋の鍵を掛ける。
これで安全。
「あ、お風呂あるんだ」
あまりに眠すぎて気づかなかった。
ん~…朝起きてからでいいや。
彩華と一緒に入ろ。
「彩華~…あ、寝てる」
彩華は既に寝てしまっていた。
仕方ない仕方ない。
私も寝よう。
上着とベストを脱ぎ、窓際の片方の椅子に掛け、刀を壁に掛ける。
そして、ベッドに飛び込む。
数秒もしない内に眠りに落ちた。
~~~~~~~~~~~~~
12月25日 04:35 ブルールミナスⅡ 403号室
「ん~…?」
見覚えが無い天井…第一種軍装のシャツ…。
どっかに出張中か…?
彩華は隣のベッドで寝ていた。
上着もベストも脱がずに、帽子もベッドの上に転がっている。
可愛いなぁ。
「何処…だ?…ココ」
窓の外を見てみる。
まだ外は暗かったが、海の上である事は分かった。
洋上を航行する音が聞こえるから。
「テレビテレビ……ってか臭ぇな…まーた風呂入ってねぇのかアイツは」
まーた風呂入ってねぇのか。
この船がいつ出港したのか知らねぇが、風呂入ってから寝ろよな…全く。
「風呂…あんのかな」
取りあえず、出入口の方に進んでいく。
こういうのは大抵出入口の方にある。
「あ、あったあった」
予想通り、お風呂があった。
トイレ付きのタイプ。
お湯を溜めないとなぁ…。
温度を調整してお湯を出す。
数十分もあれば溜まるだろう。
「テーレビッ」
彩華に配慮してテレビを付ける。
画質はあまり良くない。
まぁ、船の上だから仕方ないか。
「…こりゃ函館の局か?」
函館の局か。
つまり、ここは津軽海峡?
青森の局の電波が入るか確かめてみよう。
チャンネルを回して見れるテレビを調べる。
予想通り青森の局が入った。
あぁ、ここは確かに津軽海峡だ。
数分後
「さて、溜まったかなぁ…?」
お風呂を見に行く。
あ、タオル…おっ、あんじゃん。
「溜まってる~」
服を脱ぎ捨てて、扉を閉めてシャワーを浴びる。
シャンプーもボディーソープもしっかり備え付けられていた。
「~♪」
はぁ~、これで臭いがマシになる。
朝風呂も良いが…しっかり、夜に入ってくれよなぁ。
05:42
「はぁ~さっぱり…あ?」
身体を拭いて、お風呂を出ると脱ぎ捨てたはずの服が無くなっている。
はて、何処に行ったのか。
タオルを巻かずにベッドに戻る。
居るのは彩華だけだし、何も問題無い。
「おっ」
ベッドに戻ると、彩華が起きており、その上でベッドの上に脱ぎ捨てたはずの服が綺麗に畳まれていた。
「あ、おはよう紫風ちゃん!」
「あぁ、おはよう」
畳まれた服を展開して着る。
その上で窓際の椅子に掛かっていたベストと上着を着て、壁に掛けてあった刀を腰に携える。
「なぁ、何時に着くんだ?」
「0610だったと思うよ~」
「OK」
後20分程度か。
結構ギリギリだったな。
「朝飯どうすっか?」
「自販機でかにめし売ってたよ!」
「おっ、買いに行くか!」
鍵と最低限の貴重品を持って部屋を出る。
階段を下り、自販機ゾーンへと向かう。
「ほー、ほー、こんな感じか」
自販機が4台並んでいる。
右端からアイス、食事、食事、お酒。
その手前には食事用の机が並んでおり、数人が食事をしていた。
右側には電子レンジが並んでおり、ここで温めて食べるのだろうと思われる。
「おっ、これか」
お金を投入して買う。
最初に買った物を彩華に渡し、もう1つ買う。
1つづつ電子レンジに入れて熱する。
「部屋で食うか?」
「うん!」
温め終わったら冷めないうちに部屋に戻って食べる。
折角温めたのに冷めたら無意味だ。
05:56 403号室
「ってか到着まで後14分じゃねぇか!」
「早く食べちゃわないとね」
ゆっくり味わいたいが、時間が時間なのでさっさと食べてしまう。
ま、美味いのだけは分かる。
味の詳細は良く分からない。
「お
「お、そうか。行く途中に買ってくか?」
「んんっ…うん!」
「OK」
06:15 函館フェリーターミナル
「着いたー!」
「目的地じゃねぇけどな」
めっちゃ雪が積もってる。
すげぇなぁ、こりゃ。
「取りあえず函館駅まで行く?」
「…さぁ?」
室蘭への行き方が分からない。
新千歳空港からバスかタクシー使うつもりだったし。
それなのに起きたら函館に連れて来られてる。
訳分かんねぇよ。
取りあえずスマホで地図を確認する。
函館から室蘭までの距離感を…。
「……遠いなぁ?」
「遠いね」
「タクシーは無理そうだなぁ」
「取りあえず函館駅まで行こうよ」
「おう」
ロータリーに止まっていたタクシーに乗り込んで函館駅まで向かう。
函館から…特急乗りゃいいか。
07:01 函館駅前
「かぁ~、やっぱ寒いなぁ」
「北海道だもん」
「そりゃなぁ」
冬の室蘭、懐かしい。
特急座席取れっかなぁ。
「早く駅入ろ」
「おう」
さっさと駅舎に入る。
入るや否や、指定席券売機に向かう。
「特急…特急…何乗れば良いか分かんねぇけどよ…」
適当に経路検索で出た特急に乗る。
函館…室蘭っと。
「東室蘭で乗り換えか」
室蘭学校は室蘭駅からかなり遠い所にある。
当然タクシーを使う。
適当に承諾を押してカードを挿入。
すると、切符が出てくる。
「よし、改札入るか」
「うん」
改札を通り、ホームと駅舎を隔てる自動ドアを抜けると冷気が一気に流れ込んで来る。
あぁ、寒いなぁ全く。
駅の中で待ってた方が良かったか?
「お、もう居んじゃん」
列車は既に停車していた。
よしよし、これで凍えずに済む。
「早く乗ろうよ」
「おう」
さっさと車内に入る。
1号車4D4C…お、ここか。
「やっぱ
「えへへ、暖かいね」
「おう」
後ろは誰も居ないから椅子を倒す。
乗ってきたらまぁ…少し位は上げるか。
[ご案内いたします。この列車は7時37分発、特別急行北斗3号札幌行です。五稜郭、森、八雲、長万部、洞爺、伊達紋別、東室蘭、登別、白老、苫小牧、南千歳、新札幌、終点札幌の順に停車して参ります]
7駅目か。
やっぱ遠いなぁ…。
「なぁ、彩華」
「なぁに?」
「俺達の寝室、残ってると思うか?」
「どうかな?もしかしたら残ってるかも…?」
「卒業して出てった時のままかもなぁ~」
卒業して以来、あそこには一度も訪れていない。
今回が卒業後初めての訪問となる訳だ。
流石に今回は校内で襲われたりはしないだろう。
あぁ、楽しみだな。