11月19日 05:58 下北屋 320号室 和室
「……ここは……」
見覚えのない天井、普段居るはずのない和室…。
う〜ん……あ、下北屋か!
青森行くって、言ってたな!
隣を見てみると、彩華が寝ていた。
顔がほんのり赤くなっており、酔っていることが推測出来る。
「しっかし可愛いな…」
しかし、足の方を見てみると布団に大小様々なシミが出来ていた。
はだけた浴衣、布団のシミ。
どちらから襲ったかは知らないが、こりゃ確定だな。
クッソ、アイツめ、羨ましい。
今日は俺が襲ってやる。
「さて…朝飯か」
インフォメーションブック…インフォメーションブック…あった!
朝飯は1階のお食事処で食べる様だ。
朝は7時から開いていると書いてある。
「7時か…彩華が起きたら行くか」
まだ彩華は起きない。
多分…0820位になったら起きると思う。
さ、テレビテレビ。
音量を出来るだけ小さくして、彩華を起こさない様にする。
スピーカーに近づけるだけ近づいて聞く。
〈おはようございます。午前6時のNHKニュースをお伝えします〉
アイツはラジオの方が好きらしいが、俺はテレビの方が好きだ。
やっぱ、映像があった方が面白いだろ?
ニュースを見てみるが、特にこれと言った話題は無い。
誰かが死んだとか、何か事故が起こっただとか、誰かがHR打っただとか、普段と変らない。
ま、何も無いのが1番。
「お、雪降ってんじゃん」
雪が降っている。
横須賀でも雪は降るが、これ程では無い。
流石は青森と言った所。
「良いな…和室で雪、こたつがありゃ完璧何だがな」
こたつ、こたつは何処だ。
和室には暖房じゃなくてこたつだろ!
…ま、どっちもあるべきだけど。
「む?」
広緑の上の机に熱燗が2本置かれている。
ははーん、昨日はこれを飲んだのか。
んで、酔った勢いでそのまま……そんな所だろう。
「残って…ねぇか」
ま、残ってたとしても冷え切ってるだろうし、美味くは無いだろう。
さーて、彩華が起きるまでゴロゴロしとくか~。
08:20
「…んにゃ……?」
「おはよう、彩華」
「んぅ~…おはよう…」
予想通り、0820に起きた。
俺は彩華の上に、馬乗りになっている。
彩華は驚く事無く、両手をこちらに伸ばす。
"起こして欲しい"
そう訴えかけているのは誰の目から見ても明白。
「よいせっ」
両手を引っ張り、勢いよく起こす。
その反動で自然と抱き合う。
「…おはよ、紫風ちゃん」
「あぁ、おはよう」
やっぱ俺、この匂いが無ぇとやってらんねぇわ。
彩華は相変わらず俺にスリスリしている。
可愛い。それ以外に感想が出てこない。
「紫風ちゃん良い匂い…うへへ…」
「そうか」
もう数分もすれば彩華の意識は完全に覚醒する。
それまではこうして居よう。
08:31
彩華が完全に起きた。
もう少ししたら朝飯に行こう。
「紫風ちゃん」
「何だ?」
「お腹空いた!」
「お、そうか」
良し、朝飯行くか。
朝飯は1階にある食事処に行けば良い。
「じゃ、行くか」
「うん!」
鍵と貴重品を持って部屋を出る。
浴衣にスリッパ、典型的な旅館での服装。
にしても…。
「エレベーターあっちだよ」
「おう」
彩華は俺の手を引いて、エレベーターまで連れて行く。
可愛いなぁ、ホント。
08:36 1階 お食事処”春夏秋冬”
「美味」
「うん!美味しいね!」
「な~」
朝飯はマグロ丼だった。
大間で獲れたマグロだそうだ。
めっちゃ美味い、最高。
「こんなに大トロ使って良いのか?」
「赤身も中トロも沢山…!」
やっぱ本場で食うマグロは違うなぁ~。
…ま、三崎に行けば似たようなのが食えるんだが。
でも、こんなマグロ丼は初めてだ。
「うめぇ~、幸せ」
「あ、そうだ!」
「どった?」
「次、いつ出港するか決まった?」
「いいや、まだ」
出港はまだ未定。
まだ地上の司令部で指揮する事になりそうだ。
「久しぶりだね、こんなに出港が決まらない事」
「そうだな」
これまではポンポン出港が決まっていたが、今は全く。
次はいつ出港するのか、何処へ行くのか、何も知らされずに居る。
他の潜水艦は次々出港し、それぞれ平時の哨戒任務に着いているが、伊820にその気配は見られない。
「「ごちそうさま」」
そんな事を話している内に、俺も彩華も食べ終わった。
どんぶり1つと汁物1つだったから、20分もかからなかった。
「戻るか?」
「う〜ん…」
観光するにはどの施設・名所も遠すぎるし、かと言って旅館だけで時間を潰せる程広くは無い。
なーんでアイツは2泊にしたのか…。
「戻る」
「おう」
彩華が部屋に戻ると言うので部屋に戻る。
アイツは部屋を見たかもしれないが、俺は見ていない。
時間をかけてゆっくり見る事としよう。
08:52 320号室
部屋に戻ると、布団が片付けられて居た。
あのシミが付いた布団を見て、果たして従業員は何を思ったか。
ま、何か言われたら水をこぼしたとでも言っておこう。
〈―――先の戦争により被害を受けた北海道は急速な復興が進んでいます〉
テレビには復興が進む札幌市街や稚内の映像が映し出されている。
災害からの復興に似た物を感じるが、所々に銃弾や砲弾の弾痕が見られ、確かに戦後復興である事が伺える。
テレビを横目に彩華のほっぺたをムニムニする。
弾力性が桁違い、可愛い。
「うへへ〜」
普通にムニムニしたら、一気に伸ばす。
これをずーっと繰り返す。
「気持ち良いか?」
「うん〜」
彩華の魅力は3段階に分かれている。
1段階目は”クール”。
主な理由は目付きと態度・口調であり、出会って最初の方はかなりの塩対応だ。
最近はこの面を見る事も少なくなって来たが、ロシア語モードの時は誰が相手であろうがこの面が出てくる。
2段階目は”可愛い”。
同僚・親しい人間が最も多く見る一面。
伊820の人間は皆がこの一面を見ている。
3段階目は”エッチ”。
俺とアイツ以外ほぼ見る事のない一面。
皆、可愛いに目を取られてその奥にあるエロさに気づかない。
ふと、顔から視線を下にやると豊満な胸がある。
「おっぱいがどうかしたの?」
「いいや、何もっ」
彩華の胸目掛けて飛び込む。
少しの困惑の後、俺を抱きしめてくれた。
彩華の暖かさが俺を包む。
「彩華」
「ん〜?」
「好き」
「私もっ」
彩華の匂いは何度嗅いでも飽きない。
それ所かずっと嗅いでいたい匂いだ。
「彩華」
「ん〜?」
「………」
「ど、どうしたの?」
彩華の目を見つめる。
最初の方は”何かあるの”と言う目でこちらを見つめる。
「………」
「な、何?」
しばらく見つめると目を逸らそうとする。
だけど、俺を見ていたい欲求とぶつかって目を逸らせずにいる。
これがまた可愛い。
「………」
「う、うぅ…」
赤面する彩華。
可愛い、めっちゃ可愛い。
赤面している彩華に口付けをする。
見つめた後の恒例行事。
当然舌は入れる。
「んっ…んんっ…」
しっかり口内を舐め回す。
時々漏れる声が更なる興奮を誘う。
数分間キスをし続けていると、流石にお互い息が持たなくなって顔を離す。
見事な唾液ブリッジが出来ている。
俺も彩華も興奮しきっており、このままヤりそうな勢い。
「紫風ちゃん…紫風ちゃん…」
「ん…?」
「シよ?シよ?」
「あぁ、シよう。ベッド、行くか?」
「うん、行く!」
時刻は0913。
朝からヤるなんて久しぶりだ。
その後、俺達は昼飯の時間までヤり続けた………。