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第6話 食事休憩

 リアン姫が無事に勇者達と合流できることを祈りながら、俺はある領地を目指すことにした。

 暴動が起きた王国には、もう用はない。

 圧政に苦しんでいた国民たちがより良い暮らしのために反旗を翻す。

 国が滅ぶのは統治者の責任、過激とはいえども国民に罪はない。

 下手に介入して、悪評が広がったら堪ったもんじゃないしな。

 新しい計画プランへと移行しよう。

 その名も『竜王の支配から解放』だ。

 ある国の領地を我が物顔で支配する竜の王様がいる。

 遠い昔、魔王と人族の軍によって根絶やしにされた竜族の生き残りである。

 隠れて平穏に暮らせばいいものの、竜族の長『竜王』を名乗り、私欲のために人を支配している悪役だ。

 そいつを倒せば支配を受けていた人々が解放される。

 ロベリアへの世間の印象も少しは変わるかもしれない。

 ストーリーでは英傑の騎士団の竜騎士ジークという男が竜王を倒すのが正規ルートとなっているのだが、一足先に俺がクリアさせておこう。

 その前に、次の町に到着したら休憩をしたい。

 時間短縮のためとはいえ、魔術の移動を何日も休まずに続けていれば疲れるからな。

 ―――――

「ご、ご……ごご、ご注文は以上でよろしかったっ……でしょっ、ですか……?」

「ああ、頼む」

 治安の悪そうな裏町で食事を取ることにした。表にある普通の飯屋に顔を出しでもしたら騒がれてしまう。

 ただ、裏街とはいえ注文をとってくれていたウェイトレスが明らかに怯えていた。

 ゴロツキが当たり前のように暴れる酒場でも怖がられるのかよ。

 追い出されるよりかはマシか。

「な……なあ、あんた。ちょっといいか?」

 体格のいい大剣を背負った大男が、隣に座ってきた。

 冒険者ギルドを証明するギルドカードを首にぶら下げている。

「アンタ……傲慢の魔術師のロベリアさんなんだろ? ここで会えて光栄だぜ」

「……」

 もしも俺の人格がロベリアのままだったら『気安く隣に座るな、害虫どもが』と魔術をブッパしていたところだろう。

 ここは平常心のまま、無視をしよう。

「アンタの悪名っぷりが全土に知れ渡っているから、知らない奴なんて殆どいねぇだろうな。腕っぷしは本物なんだろ? そんなアンタに良い話を持ってきたんだが、協力してくれたら嬉しいなぁ、なんて」

「……興味ない。他を当たれ」

 余裕があるのなら手を貸してやってもいいんだけど、生憎と他に目的があるので承諾は出来ない。

「冷てぇな〜あそこにさ、英傑の騎士団がいるんだが、分かるか?」

 男は、壁際の席の方にこっそりと視線を向けた。白い鎧を纏った黒髪の少女が座っていた。

 目を奪われるほどの可愛さである。

 英傑の騎士団クラウディア。

 正義感が高いため、ロベリアを最も嫌っている登場人物じゃないか。

 まさか、この町に来てから監視されていたのか?

 そんなことを考えていると、男にグラスの水をぶっかけられた。

「……」

「人の為、世の中の為に尽くしている冒険者の俺か、悪名高い魔術師さん、どっちのせいにされるんだろうなぁ?」

 腹に蹴りを入れられそうになるが、難なく避ける。

(コイツら……初めからこれが狙いだったのか……)

 苛つきながら手のひらに魔力を込めるが騒ぎに気づいたクラウディアに視線を向けられ、俺はとっさに攻撃魔術を中断した。

 そのせいで背後にいた男の仲間に羽交い締めされてしまう。

「そのまま押さえてろ!」

 相手は屈強な冒険者だ。

 実力からしてAクラスだろう。

 生前の体で殴られたら痛いだろうけど、最強の魔術師の肉体なら痛くも痒くもないかもしれない。

 それでも何もせずに攻撃を受けるだけなのは癪だ。

 羽交い締めをしてきている男との間に微量の風属性魔術【衝撃】を発生させ吹き飛ばす。

 そして、殴りかかろうとしている冒険者の背後へと瞬時に移動。

 恐ろしく速い手刀で気絶させる。

 たったの数秒。

 喧嘩をおっぱじめた冒険者とその仲間が手足も出せずに倒れてしまったので酒場は大騒ぎだ。

 周りから見たら唐突に倒れたもんな。

 休もうとしただけのに結局、騒ぎを起こしてしまった。

 絡んできたコイツらが百パーセント悪いけど、本当のことを言ったところで信じてくれる人は多分いないだろう。

 面倒が増える前に逃げよう、そうしよう。

 倒れた冒険者たちを介抱する客たちの間を抜けながらコッソリ店を後にする。

「あ、あれ、お客様! ご注文した料理は……」

 皿を両手にカウンターへと戻ってきた店主に呼び止められたが、聞かなかったことにしよう。

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