大地が轟々と轟く。
その攻撃が地面を抉り、破壊したことによりアマゾネスがもう3人も死んだ。
「『ブレイクアウト』」
直後、四方から襲いかかるアマゾネスの凶刃から身を守るため。
咄嗟に開き取り出したそのメイスを左手に持ち、迎撃する。
右手に持つメイス、そこから繰り出される一撃。
それだけでアマゾネスの武器は曲がり、破壊される。
だが、それだけでは無力化には程遠い。
女性特有のしなやかな肉体を駆使し、近接それも格闘戦に持ち込んできたのだ。
ソレを肌で感じたレオトールは両手の武器から手を離し、インベントリに仕舞う。
「小癪な、 『
「カッ、ハッ!!」
先ずは一人、お団子に纏められた髪を無造作に掴むと人体破壊の一撃を見舞う。
それだけで彼女は体をくの字に曲げ、髪を千切られながら飛んでいく。
「『インパクトラッシュ』」
瞬時に二人目を捉える。
先程の女性とは違い今度はやや大柄、純粋な耐久力が上がっているのを確認しスキルを選択する。
『インパクトラッシュ』、その拳の一撃一撃に槍術の『インパクト』の効果が乗っている複合スキル。
その攻撃の脅威は、単純な火力ではない。
本来ならば打撃属性となる拳の攻撃が、複合化したことにより刺突属性へと変化する。
つまり、貫通攻撃に変化するのだ、
その拳で叩かれたアマゾネスは、薄い防具をいとも容易く破壊された後体を貫かれる。
生かすことを一瞬も思考しない、殺意しかない攻撃。
これでも、通常の槍術スキルである『インパクト』よりも貫通能力は下がっているというのは信じられない話だ。
ここまでで、開戦から約10秒。
『
「『龍撃』」
「グルァァァァアアアアア!!!」
落ちてくる岩石を足場に迫ってくるアマゾネスに対し、カウンターとしてスキルを発動する。
獣のような唸り声を上げるアマゾネスを、冷徹に睨みながら迫り来る相手より早く攻撃を放つ。
瞬間、アマゾネスの体は。
否、攻撃が当たった拳から爆散しゆく。
「黒狼ッ!!」
「安心しろ!!」
最後の一人を睨みながら、行動不能な他3人のアマゾネスを認識し黒狼が無事かの確認をする。
ソレを聞いたレオトールはより一層気合を入れ、落ちてくる剣を掴んだ。
*ーーー*
一方、黒狼はというと口でこそそう嘯いているものの実際余裕がある状況ではない。
認識できない場所から、高速で放たれる矢。
数少ない防御策は一撃で破壊されるという現状、ソレに焦りを隠さず魔法を使い続ける。
「チッ、クソッタレが!!」
「せめて壁があれば……!!」
知覚した時には『ダークシールド』が破壊されている以上、ゾンビ一号の盾で防ぐという手も取れない。
攻撃の方向さえ絞れば取れる手は増えるものの、ここは森林。
木を盾にしようが、二人を守り切れるほどの大きさはない。
一時凌ぎにはなるかもしれないが、安心して身を預けるには程遠い。
正に、袋の鼠そのものだ。
「くそっ!! 『ダークシールド』!! これじゃあ魔力が持たねぇ!!」
「一応攻撃のパターンは分かりましたが……、防ぐのにはあまり期待しないでください!!」
「最初から期待してない!!」
叫ぶように互いに声を掛け合いながら、ゾンビ一号は接近するアマゾネスを威嚇し反撃する。
レオトールは先ず敗北しない、あの状況でも苦戦しているのは地形が原因でしかない。
その地形も先の一撃で大きく変更させたお陰で、かなり有利な状況に持ち込んでいる。
ならば先にそちらを攻略して貰うのが最善手だ。
ただ、問題はあちらがいつ片付くのか。
その見通しが一切できないことだ。
気配でわかる、攻撃頻度でわかる。
二人は舐められている、そして攻撃を後回しにされている。
レオトールに対して包囲網が敷かれている、だからこそさっきの質問なのだ。
今ならばそちらを助けられるぞ? と。
その安否確認をしたのは。
「頼れるか、馬鹿野郎……!!」
静かに、吐き捨てるようにそう告げ槍剣杖を構える。
ここで頼れば、黒狼という人間はレオトールの付属品になって仕舞う。
ソレはダメだ、絶対にダメだ。
最強の座は、最も強い存在という立場はいくらでもくれてやる。
だが、このゲームをプレイしているのは。
この物語の主人公は
ならば、彼に負んぶに抱っこされるわけにはいかない。
黒狼とレオトールは肩を並べて戦う戦友であり、教えを乞い与える教師と生徒ではないのだから。
「ゾンビ一号ッ!!」
「なんですか!!」
「意地でも耐え抜け、レオトールがアイツらを鏖殺するまでなァ!!」
「当然、です!!」
叫ぶようにそういうと、ゾンビ一号は襲いかかってくるアマゾネスを剣で弾く。
黒狼はその追撃として、腹に槍を突き立てる。
逃げる訳にはいかない、負ける訳にはいかない。
このゲームで、この世界で、この仲間をこの窮地に陥らせたのは自分だ。
その自分が、真っ先に逃げ腰になる訳には。
ましてや、目的を諦めてまで負ける訳にはいかない。
高潔さからではなく、我欲から。
その覚悟を結んだ黒狼は、槍をアマゾネスに突き刺し声高らかに叫ぶ。
「『インパクト』!!」
火力は低い、速度は遅い、タイミングはズレている。
だが、その一撃は明確にアマゾネスに対抗しうる一撃になった。
槍から放たれる衝撃で大きく怯むアマゾネス、そこに追撃としてゾンビ一号の骨剣が振り下ろされる。
「キクカっ!!」
跳ねるように避けるアマゾネス。
そして即座に森に隠れる、一瞬にして視界からその存在が消えたかと思うとゾンビ一号の死角もう一人が襲ってきた。
「転がれ!!」
「ッ!?」
無様に地面に身を投げ出すと同時に、飛び蹴りを透かしたアマゾネス。
地面に片足をつけた彼女は、飛び蹴りの勢いを利用してその場で半回転。
即座にゾンビ一号を手に持つ剣で仕留めようと動く。
「させるかよ!!」
そこに槍剣杖を捻じ込み、咄嗟にその攻撃を止める黒狼。
さらに飛んでくる矢を、避けるために動く。
アマゾネスに当たらないように射出された矢。
ソレを避けるのは簡単だ。
戦闘においてフレンドリーファイアは避けるべき事象、ではソレが起こらないようにするにはどうすればいいか?
答えは、そもそも味方に当たらない位置に撃ち込めばいい。
なら避けるのならば、相手の近くに行けば必然的に当たらない。
恐怖心を噛み殺し、一気に接近すると剣で腹を突き刺す。
強靭ながらしなやかな腹筋に剣が刺さった手応えを感じると、一気に引き抜き槍で頭部を串刺しにする。
「コロシタ!! コロシタな!!」
「殺すさ、相手が敵なら!! その覚悟もねぇのか?」
その顔には現れないものの、興奮したようにそう叫ぶと足で頭部を抑え刺した槍を思いっきり引き抜く。
瞬間、ポリゴン片になるアマゾネス。
ソレを踏みつけた足の感触で確認すると、再度周囲を見渡す。
相変わらずアマゾネスの姿は見えない、だがこのフィールドに慣れたことも相まって大体どこら辺にいるかは察し始めた。
「ありがとうございます、黒狼。」
「礼なら後だ、すぐに立て。」
そして、森林に紛れているであろうアマゾネスを睨んだ。