「ほう、肉を落とすのか。」
「え? つまりレオトールが遠慮する理由がなくなったってことか? よし、これで遠慮なくこき使えるぞ!!」
「フン、ソレは構わんがその場合はお前も付き合うことが条件だぞ。」
「ウマいばなじバナイっでごどでずね。」
そう言いながらドロップした肉や皮、骨や牙を回収する。
総量としては多くはないが、さっきのアナウンスの後ステータスを確認した時に称号『生まれの蛇』を手に入れた事を確認しており今後、何度も手に入れることができるだろうと予想をつけている。
「と言うか、ここもまだダンジョン内なんだな。バチクソに明るいけど俺死んでないし。」
「一見すればただの平野だが、実際には壁も天井もある仮初の物だ。尤も……、草や土などは本物みたいだが。」
「あ、まずダー。このグザだべれマズよ。ワリどおいじいでず。」
「え? マジ?」
「……、ソレ毒草なのだが……。」
「うわッ!? 危ねぇ!! ぺってしろ、ぺって!!」
「おいじー」
……、ゾンビ一号も肉体が腐敗している影響で多少の毒ならば食らえど問題はないようだ。
ソレはそうとして何故ゾンビ一号は唐突に草を食べているのだろうか?
「本人が問題ないのならほっといてやろう。」
「そう言う問題じゃねぇだろ!! 常識的に!!」
「ナニ、私も若い頃は毒を食い泥水を啜ったモノだ。」
「遠い目をしてんじゃねぇ!! と言うかまだまだ若いだろ!!」
「ふっ……、時間とはすぐに過ぎ去るモノだ若人よ。」
何故か、老人ムーブを始め出したレオトール。
なお、実年齢は26歳の模様。
「過去回想に浸っているとこ悪いけどさっさと次に行こうぜ? レオトール。」
「ああ、その事だがここで何度も戦って先にお前らのレベルを上げようと思うのだが……。なに、文句がありそうな目をしているな?」
「あだりまえデズ。」
「えぇ〜、別に先に向かってからでもいいだろ別に。」
「ハァ、私がそれだけの理由でここに居座ると思っているのか?」
「逆にどんな理由があってここに居座ろうとしてるんだよ。」
「分かりきっている話だが、今のお前らは経験がなさすぎる。」
「レベルの話か? 単体の強さが低いのはお前で補えるだろ。」
「違う、戦闘経験の話だ。戦闘中に魔術の組み替えなどを行うなど言語道断、はっきり言って話にもならん。」
「……、じゃぁ聞くが俺はあの状況でどのように動くべきだった?」
「その行動を起こさせるためのレベルが足らん。」
「……、全くもって嫌になる正論だな。」
「その割に納得はしているようだが?」
「納得せざるを得ない、の間違いだバロー。今の言い方からしてお前を主力に俺たちが側で見守っていても邪魔にしかならない感じだろ? いや、今の状況で十分邪魔にしかなってないか。」
「よくわかっているじゃないか、その通りだ。」
そう言うと、落ちている槍を掴みインベントリに収納する。
「……、ハァ。結局やることは変わりなし、か。」
「ソレどころか前より悪化している。この空間に来るまでならそこまで急がなくとも問題なかった、それこそ戦力増強としても迷宮から出た後でゆっくり時間を確保し強化できた。」
「けど、違うと?」
「ああ、ハッキリ言おう。この状況は完全な想定外だ、ソレもただの想定外ではなく未知数の想定外だ。そして撤退可能な道もない、この空間もどれだけ信用できるのか……。ソレに先程のアナウンス、これは最低限の力を測るモノならば最悪……、いや下手な考えはよそう。」
「客観視してる場合じゃねぇのか。」
「ぞこでむりやりデモワダジだじのぎょうがをズルンデずね。」
「理解してもらえたようだな。そう言う訳だ、私はこの空間の大きさを確認する。その間に貴様らは魔術や魔法、武器武装を整えておけ。次はある程度弱らせるが貴様ら二人で討伐して貰うからな。」
「「えぇー!!」」
「文句は言わん、余裕があるうちに行動を起こせ。」
「「はーい……。」」
と言うわけで若干嫌々ながら二人は準備に取り掛かる。
「ってもうかなり離れてるな、アイツ。」
「ずでーだズがジガイずぎまずがらね。」
「……、早速準備しますか。」
そう言って、黒狼はドロップしたアイテムとその場に落ちている宝箱を睨む。
あの宝箱は
そして口にこそ出していなかったが言外に、『
何も言わず、箱に手を掛ける。
豪華絢爛な装飾、ソレに裏付けられた重みを体感しつつ無造作に開く。
中にあるのはスキルオーブ、ソレが合計三つ。
「……、へぇ。」
ボソリとそう感嘆を漏らす、思考からは嫌な予想が止め止めなく溢れる。
今までダンジョンで出てきたアイテムはその殆どが最低品質であり、実用性に富んだものでは無かった。
だが、今出てきたのはスキルオーブ。
どんなに低品質だろうが粗悪品だろうが、スキルオーブというだけでソレは絶対的な有用性を伴うものだ。
だからこそ、嫌な予感が脳裏をよぎるのを抑えられない。
メタ読みすればコレは、
「……、まぁいい。貰えるものは貰い有効活用する、ソレが俺のやり方だ。」
鑑定を発動し、得られるスキルを見る。
示されたスキルはそれぞれ、『騎士の誇り』『リベンジ』『
「……、騎士の誇りはヘイト上昇と防御力の向上。リベンジは受けたダメージを跳ね返す。蛇呪は自分に蛇の呪印を結ぶ。前二つはゾンビ一号に渡すか、おい!! ゾンビ一g」
「もういマズ。」
「え? マジだ。とりあえず、その二つのスキルオーブをやるから肉壁として一層精進してくれ。」
「ニグがべでずか……、ぞうでずが……。」
「文句あるのか?」
「いいえナニも。」
そう言うと、スキルオーブに触れる。
ゾンビ一号が触れた瞬間、スキルオーブは一瞬で粉々になりポリゴン片に変化する。
「『リベンジ』……、はずどうジダミダイでずね。」
「ダメージを受けてないと体が光るだけか?」
「あー、いやバツドウちゅうにごうげきヲウゲダらばんしゃずるミダイでずね。」
「うわっ、使い辛ッ!?」
「ぎじのぼこりドベイヨうズればいいがんじデズ。」
「……、ソレでも使いづらくね?」
「……。」
互いに無言になりきまずい雰囲気になったので黒狼は蛇呪のスキル内容に含まれる蛇の呪印とは何かを調べる。
「……うわっ、コッチもなかなかに面倒臭い性能してんな。」
「どんなガンジで?」
「お前的に言えばHPをMPに変えるスキルだな、ただし発動したらHPが1になるまで解除不可能。ソレにMPの最大量を超えても変換され続けるしMPは増えない。」
「……、どんなごみズギルデズか?」
「俺も思う。」
溜息を吐きながら自分のステータスを再度確認し、どのように行動すればあの蛇を倒せそうか考える。
「……、とりあえずアイツが帰ってくるまでに戦略を練るか。」
そう呟きつつ、黒狼は溜息を吐いた。