「え? 職業システム?」
そう言いながら、ピックアップされている職業システムのチュートリアル開始ボタンを押す。
そうすると、一気に複数のタブが開きステータス画面がややこしい状態になった。
「……、とりあえず自分のステータスから確認するか。」
物事が起こるにはなんらかのきっかけがある。
そのきっかけに何かステータスが絡んでいないか? と黒狼は考えたのだ。
「ふむふむ、
諸悪の根源を発見した黒狼は鑑定をする。
屍従属の効果は自分以外のアンデッドを使用した戦闘行動に補正がかかったり、アンデッド系モンスターとの好感度が高まるというもの。
従属主は従属させている存在の進化やスキル獲得を早める効果だ。
「ちょいちょい好感度が上がるって書いてあるけど、一切実感した覚えがねぇ……。本当に効果出てんのか?」
眉を顰めつつ、職業システムのチュートリアルの方を確認する。
そっちには職業に関する説明が書かれていた。
「えっと? 職業っていうのはスキルやレベルシステムとは別枠で基本ステータスなどを増やすシステムですぅ? HPとかMPとかが増えるってことか? そういう理解でいいんだよな?」
と、問いかけてみるがステータスは一切返信をしない。
まぁ、当然といえば当然な話だ。
ただのシステムが返事をするはずが無いのだから。
「で、そのほかにスキル? も手に入ると。手に入るスキルは職業に即したものになるのか。突飛な職業とか選んだらどうなるんだ……?」
ブツブツ文句を言いながら、選べる職業を探していく。
選べる職業は『
「あれ? 思いの外多いぞ……。ということはスキル数がキッカケか?」
選べる職業の数の多さに驚き一瞬驚くが、すぐにその原因を考え出した。
だがその思考も長くは続かない、だって手元にある情報が元々少ないのだ。
下手な考察は黒狼の得意とするところではない。
暇な時にまとめサイトなどでも見て自分の考えが合っているか確認しよう、などと思考を締めくくると職業を選び出す。
最も、今やっているのはゾンビ一号を戦闘にこき使う事だ。
ならば選ぶ職業は『
ピコン♪
「システムの解放とスキル習得の通知ね、はいはい。えっと、ゲットしたスキルは……。指揮? ありきたりだな。嫌いじゃねーぞ?」
偉そうに言いつつ、職業欄が新たに追加されそこに『
また職業欄にもレベル表記がありコレもレベルを上げることができることがわかる。
「で、上限まで上がればまた別の職業になれるのか……。上限は……、不明。重要なとこだろソコ!! 書いておけよ!!」
ゲームの醍醐味である未知への探求を全力で投げ捨てているその様子には多少の好感は持てるが、ゲームプレイヤーとしてソレはどうなのか? という疑問を抱かざるを得ない。
「……、まぁいいか。おい、ゾンビ一号!! 狩に行くぞー」
「あ゛ー」
やれやれという様に肩をすくめつつ、黒狼に近づくゾンビ一号。
レオトールは苦笑いでソレを見守っている。
「頑張ってこい、ゾンビ一号。」
「あ゛ー!!」
レオトールの声に応える様に言うと黒狼の後ろを歩き始めた。
*ーーー*
「あ゛ー!!」
「ナイスアシスト!!」
ゾンビ一号が棍棒を振りながら敵のゾンビを足止めしている隙に黒狼が剣で敵の頭部を切り落とす。
上手い具合に連携を取りながら二人は狩をしていた。
「やっぱ仲間っていいよな、連携プレイ最高だぜ!!」
「あ゛ー!!」
黒狼が最高だと言わんばかりの横でゾンビ一号は呆れと怒り半々で黒狼を睨む。
連携自体は決して悪くない、ソレどころか黒狼が下手な二刀流に拘っている事を差し引けば良いぐらいだろう。
では何故ゾンビ一号が怒っているのか? その答えはただ一つ。
「連携プレイじゃねぇって? 気のせいだよ、体だって千切れてないし。」
「あ゛ー!!」
まぁ、黒狼がゾンビ一号を酷使しているからだ。
ゾンビというものは元来、痛みを感じず足が切れても蠢きながら襲いかかってくるもの。
反面、素早い行動はできない。
その性質を利用し、黒狼はゾンビ一号を壁役という名の囮にしているのだ。
確かに役割としてゾンビ一号は壁役という名の囮に相応しい。
ゾンビ一号もその事をよく分かっている、だがそれにしても黒狼はゾンビ一号の扱いが適当だった。
見殺しにする直前で助けていると言ってもいいだろう。
勿論、黒狼も悪意があってやっている訳ではない。
そもそも黒狼は基本、ゾンビ一号を見ながら戦闘などしていない。
いや、それだけの余裕がない。
頭部を落とすか、上半身と下半身で分けるか。
ソコまでしなければ確実に殺したと思えない敵相手に味方を見る余裕はない。
ゾンビ一号もちゃんとソコも理解している、言ってしまえばただの八つ当たりだ。
ついでに
「まぁ、悪いって。けどお前も質が悪いけど剣もゲットしただろ?」
「あ゛ー!!」
「確かに攻撃力は足りないし決定打にはなってないけど、ソコら辺は仕方ないだろ。お前のスキルが少ないのが悪い。」
「あ゛ー……。」
黒狼の言っている事が割と正論なのでゾンビ一号も項垂れるしかない。
勿論ゾンビを増やして数で圧倒するという闘い方もある。
だがそれは黒狼はあまり望んでいない。
理由はいくつかあるが、結論から言えばゾンビ一号でも最低限の連携しかできていないからだ。
と言うか、連携を指示しなければならないはずの黒狼が前衛のメインアタッカーであり指示できない状況があると言うところが正解か。
一人でもそんな状況だ、二人三人と増したところで決定打のある攻撃は黒狼にしか行えない以上改善される見込みは薄い。
ソレどころか、互いに邪魔をし合い致命的な攻撃を食らってしまうかもしれない。
この階層は、打撃武器を持つゾンビがおり黒狼も油断できない。
複数体来て仕舞えばいくら強くなったとは言え、無視できないダメージを負ってしまう。
軟膏も万能ではないい以上、その選択肢はあまりにもあり得なかった。
「っと、また来たな。ゾンビ一号、左の一体を頼む。俺は右の二体をやるから。」
「あ゛ー」
ゾンビ一号の元気? な返事を聞くと同時に、黒狼はゾンビに接近する。
難しく戦う必要はない、片方は槍で頭部を貫き大きく後退させる。
「『インパクト』!!」
槍で貫く瞬間、アクティブスキルを発動させ大きく仰け反らせる。
大きく後退したのを確認すると、棍棒を振り上げて襲い掛かる二体目に目を向ける。
「『スラッシュ』!!」
凡剣一閃、アクティブスキルを上手く使い首を一発で落とし切る。
何度も戦い、効率よく倒す方法を覚えた黒狼にとってコレぐらいは朝飯前だ。
一歩後退、頭部に槍を刺されて動きが止まっているゾンビに向き直る。
「とっとと死ね、『スラッシュ』!!」
いくら素人とは言え二刀流、その強みを活かし武器を手放す戦い方を黒狼はしている。
故に一回戦闘を行えば大きな間が生まれてしまう。
チラリとゾンビ一号の方に視線を向け、問題なさそうだと判断した黒狼はゾンビから槍を引き抜きゾンビ一号が戦っているゾンビに横から襲い掛かる。
「『スラッシュ』!! ッチ、『インパクト』!!」
スキルを使用し首を狙ったその一撃は人間相手なら致命傷を与えただろう。
だが相手はゾンビ、人の常識は通用しない。
二の矢とばかりにもう片方の手で持っていた槍でパッシブスキルを発動。
半ばまで切り裂いた首を槍で突き貫き無理矢理落とす。
「よし、完全勝利!!」
「あ゛ー!!」
黒狼は達成感と疲れから若干の空元気を含みそう告げる。
その言葉に対してゾンビ一号は、ギリギリな戦闘に文句を言いつつ黒狼の言葉に賛同した。