黒狼が作り始めて既に1時間弱。
軟膏は6つ完成しており、一時的な休憩を取ろうと作業の手を止めた黒狼は一瞬首を捻る。
「どうした?」
「いや、俺に軟膏って効くのか? って思ってな。効くもんだと思って作ってたけどよくよく考えたら骨に薬が効くのっておかしくない? レオトールは何か知ってるのか?」
「……いや、生憎と普通の人生で骨に軟膏を塗り込む様な行為をしたことが無いのでな。」
「え? もしかしたら俺……、クッソ無駄な事をやってたってことか?」
「試してみれば良かろう?」
と言われたので早速自分に塗ってみるが……、当然HPが減少して居ないので判明しない。
「あー、レオトール? ダメージ与えてくんね?」
「効果の確認か、構わんが力加減が分からんぞ? VITは幾らだ?」
「ん? VIT?」
「あー、そうだな……。生命力は幾らだ?」
「俺の場合耐久力になってるやつかな? それなら53、って久々に見たら魔力とかもかなり増えてるな。」
「弱い内の数値の上昇は早いからな、最もそれに慢心して技量やスキルの使い方を学んで無ければステータスが劣っている相手に負けることもあるが……。」
「マジか……。俺、魔法系スキル全然使って無いからそっちも戦闘で使う様にしようかな……?」
「それがいいだろう、一番スキルレベルが高いのは?」
「一応、光魔法。」
「あー、お察しだな。大人しく闇魔法を鍛えておけ。」
そう言って、手頃な骨を取り出すレオトール。
ソレを見て身構える黒狼。
「いくぞ!!」
静かに告げて、その骨で黒狼の体を叩きつける。
シッと音が鳴り、瞬間ピキっという音が。
身構えて居たのに、黒狼の体が軽く浮きそのまま大きく仰反る。
「……、痛った。」
「こんなもんだろう、半端な攻撃では元が悪すぎて碌なダメージが入らん。」
「にしてもここまでする必要はあるんですかねぇ!?」
「ふっ、念のためだ。」
そう言いつつ3分の1まで減った体力を見て改めて驚愕する。
抵抗しなかったとは言え、ただの骨でそこまでの威力が出るのだ。
初期値の3倍近い耐久力を保有しているはずなのにその3分の1をただの骨で一瞬で全損させてくるのだ。
(無いとは思うけど、絶対敵対したくねぇ……。)
それだけの感想を抱かせると同時に一つ疑問が浮かび上がる。
「そういや、なんであの蜘蛛に遅れを取ってたんだ? 普通にレオトール強いよな?」
「……そうだな、今の状態なら問題なく勝てるだろう。だがあの時は……。」
レオトールは何かを堪える様な顔をしながら骨を握り込み、手の中で粉砕する。
その様子を見ながら黒狼は、ヒビが入った骨に軟膏を塗り込む。
「あの時は、信頼して居た仲間に毒を盛られステータスの低下が著しかった。ある意味で買われてたのだろう、アレだけしなければ私に勝てないと。」
「……へぇ、そうか。で、レオトールはソイツらに復讐したいか?」
何の気なしにそう聞く。
相手を気遣わない発言、ソレを聞いたレオトールは睨む様に黒狼を見つめる。
「言葉は慎め、竜の尾を踏みたくなければ。」
「間違えんな、レオトール。わざと竜の尾を踏みに行ってんだ。」
「降らん、馬鹿馬鹿しい。態々リスクを犯して貴様にどれほどの得がある?」
「知るか、得なんて後から着いてくるさ。」
腰の剣に手を添えつつ、レオトールは黒狼を睨む。
同様に背負っている槍剣杖を手に取りいつでも応戦出来るようにする。
勿論、結果は目に見えているが。
「俺は聞いてんだよ、復讐をしたくはないのか? ってな。」
「無い、奴等が正解で正しいと思い決定したのならば私個人の意志が介入する隙間などない。」
「バカか? なら正面から告げればいい。態々高度な毒を使った毒殺なんてする必要がない。闇討ちの真似なんてするはずが無い。」
「そんな事分かりきっている!! だが、その上で奴等の意思で決定されたのであれば残念にこそ思えど恨む理由になどなるはずが無い!!」
剣から手を離し拳を握り締めながらそう告げるその姿を見て黒狼は静かに見つめた後、槍剣杖から手を離す。
「レオトール、お前の思いはわかった。」
「……。」
「敬意を払う、尊敬もする。」
「……、ならば問おう。俺は、間違っているか? この答えが間違っているのか? この選択は本当に正しいのか?」
「……知るかボケ、それぐらいテメェ自身で考えろ。煽ったのは俺だが、それで得た知見をどうこうするのはテメェ自身だろ。」
「ふっ……、私はそんな風に無責任にははなれそうに無いな。」
「だろうな、お前の様な人間は最後の最後まで全力で譲れない何かを守り続けるんだろうな、嫌に想像できちまう。ひたすら直向きに、自己を顧みず他者から理解されない境地で微笑みながら死ぬ。」
そう告げると、黒狼は槍剣杖を担ぎ自身のHPの回復速度が上昇しているのを確認した。
「ちょっくら狩に行ってくる。」
「そうか。」
「何をしたいか、何をすべきか。考えておけ、レオトール。」
「貴様は、口の使い方を考えろ。」
「フン。」
手痛い返しを聞きながら、黒狼は槍剣杖を握る。
やる事はまだまだある、それと同時にやらなければならない事。
レオトールを殺そうとしたもの達がどの様な意図を持って居たのか、それを考えるのは今では無い。
そう心に刻みながら、洞窟に進み出した。
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*ステータス*
名前:
性別:男
種族:アンデット族
生命力:ー(なし)
耐久力:53 *種族特性です
魔力:82
スキル
魔力視 Lv.10 *種族特性です
状態異常無効 Lv.ー(上限) *種族特性です
錬金術 Lv.1
調合 Lv.1
闇魔法 Lv.2
光魔法 Lv.4
魔力操作 Lv.1
魔力活性 Lv.1
解体 Lv.1
鑑定 Lv.1
暴走 Lv.1
棒術 Lv.1
槍術 Lv.3
棍術 Lv.2
言語 Lv.2
跳躍力増強I Lv.3
腕力強化I Lv.3
視覚強化I Lv.2
インベントリ Lv.1
地図 Lv.1
火魔法 Lv.1
造形 Lv.1
加工I Lv.1
石工 Lv.2
投擲 Lv.1
書籍集 Lv.1
剣術 Lv.1
魔法陣解読 Lv.1
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