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bos

 ピコン♪


「よしっ!!」


 アナウンスがなった事でステータスに視線を向けると、そこには燦々と煌めく『魔法陣解読』と言う5文字が。

 1時間弱、レオトールが書いた作用文字と見比べつつ魔法の効果や法則を調べた甲斐があったと言うものだ。

 目に見える成果は、達成感に直結するのだから…


「効果は……、魔法陣に関する大まかな内容がわかる……? 鑑定の魔法陣版? って感じか? うーん、考えるより使った方が早そうだな。『魔法陣解読』」


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解読結果

 主要属性:火

 魔法陣階位:初級

 効果:火 増幅 拡大 形状成形 矢 使用者 前方 発射

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「……、火の矢を前に飛ばす魔法ってことか」


 こんな簡単な内容に、自分はどれだけ頭を捻っていたのか。

 そのことに呆れを含みながら呟き、背筋を伸ばす。

 ゲームのアバターでスケルトンの自分は疲れることがない、とは言えど精神的疲労は感じるし動けば動くほど動きは鈍る。

 有用性どうこうではなく気分的に、少なくとも気を軽くするために体を伸ばした黒狼は地面から立ち上がった。


「どうした?」

「スケルトンを狩ってくる」

「そうか、無用な心配だと思うが死ぬなよ?」

「死んでも生き返る、問題ねぇよ」


 そう言い、槍を手に取りながら安全と思わしき場所を後にする。

 仄かに明るい洞窟を警戒しつつ、歩く骨一体。

 あまりにも滑稽な姿だが、本人は至って真剣だ。

 薄らと聞こえる物音に敏感に反応しつつ、槍を振る。


 カランカラン……。


「発見、だな?」


 直後、一歩踏み込み槍を突き刺す。

 敵影は全てで二つ、非常に少ない。

 苦戦はあり得そうだが、それでも死ぬとはとても思えないだろう。


「よしッ!!」


 先程と打って変わって速く動くようになった骸の体躯を走らせ、槍を引き抜く。

 骨にヒビが入ったのか、スケルトンはそのまま崩れ去った。

 わずか一撃、スキルを入手したことで成長したのか。

 その事実に驚き、結末を片目で見つつ。

 もう片方で、こちらを攻撃せんと動いているスケルトンを観測する。


「いいよ来いよ、殺ってやる」


 挑発に答えたのか、仲間を殺された怒りからか。

 どちらにせよ、激昂したスケルトンは何も持たない手を振り上げながら襲い掛かってくる。

 だが、動きは遅い。

 称号が効果を与えているのか、味方を殺されたことからか。

 感情があるかすら不明なスケルトンの攻撃を、黒狼は両眼で見つつ動き出す。


「ふっ、あまりにも甘いッ!!」


 上から槍を叩きつけ、頭蓋を殴りつける。

 相手の頭蓋が地面をバウンドし、骨の結束は瞬間で解ける。

 呆気なく終わった戦闘に心を馳せつつ槍を軽く一閃、空を切る音が鳴った事を耳にしながら一回転させ真ん中あたりを持つ。


「楽勝だったな、やっぱ戦闘パッチをつけたら動きやすさが段違いだ」


 今までも不便さを感じるほど動きづらかった訳ではないが、とは言えど激しい動きをした時に若干の動きと感覚の乖離があった。

 だが、それが一切と言って良いほどになくなったわけである。

 今の黒狼には過ぎたものかも知れないが、悪い買い物ではないと思えるほどだ。


「じゃあ早速攻略するか、目指すは宝箱の発見ってな」


 先程あんな事があったと言うのに懲りないバカである。

 だが、実際打開策はそれしか無い。

 この槍もかなり摩耗している、あの波をもう一度経験すれば壊れるほどに。


「武器を発見するために、武器を摩耗させる。ゲームじゃなきゃゼッテーやらねぇな、現実だったらただのクソだ」


 ここはゲームだ、死んでも再度復活できる。

 死なないように立ち回れと、死んだらここにリスポーン出来るかも分からないと脅されていたが……。

 そんなもの恐れるに足らない、恐れるはずがない。

 確かに、ここに戻って来れない可能性はある。

 もしかしたら他のプレイヤーが殺到しているであろう洞窟に復活し、殺され続けるかも知れない。


 だが、そのリスクを甘んじて受け入れ進まなければ何も得られないのだ。


「さぁて、やるか」


 走り出さず、決して慌てず。

 油断なく、焦りなく、淡々と、機械的に、無機質に。

 敵を倒す。


*ーーー*


「コレで何体目だ?」


 時間感覚はない、ただ歩いた道を脳内に記憶するだけ。

 ただそれだけの作業だが、退屈凌ぎにはなるだろう。


「宝箱は未発見、獲得した骨の量はどんどん増えてきたな」


 ステータスに視線を向けスキルや自分のレベルなどを確認し、ステータスの成長を見る。

 思わず笑みが溢れそうだ、成長画面見えるのは非常に楽しい。


「技量も上がってきてるとは思ってたがスキルレベルも上がってたか、中々悪くない成長値だな」


 そうほくそ笑むと、槍の状態を素人ながら確認する。

 いや、どう見ても良くはない。

 だから、壊れていないかの確認というよりかは壊れないように補修すると言ったのが正解だろうか。


「やっぱりかなり劣化し出してるな。そろそろ装備変更を検討しなきゃならんか……」


 軽く振るとミシミシと音が鳴り始めていのだ、もう長くはない。

 今回だけで軽く100体以上は倒しているのだ、使えるだけで幸運だろう。


「……、よしあと5体。5体倒したら問答無用で帰ることにするか」


 そう言い、静かに立ち上がる。

 使い慣れたとは、未だ言えない。

 長過ぎず短過ぎず、されど適切な長さではない手製の槍は愛着こそ湧いたものの使い勝手の悪さは際立っている。


 そんな愚考に耽っていると、目の前にスケルトンをが踊り出た。

 慣れた手付きで睨みながら、頭蓋を砕く。

 手元に伝わる軽い感覚を噛み締め一歩、二歩と前に。

 三歩目で壁に叩きつける槍を引き抜き、縦に半回転させ頭蓋を割る。

 それだけで絶命したスケルトンを一瞥し、はうっと溜息を吐く。


「残り四体、一向に宝箱は見つからねぇな」


 カツン、カツンと反響する音を意識しながら愚痴を溢す。

 警戒は怠らない、ただ疲れで警戒心は薄れつつある。


 最初こそ多めだったスケルトンはもう既に疎となり、対敵することは少なくなってきていた。

 宝箱を開け、スタンピートを発生してから時間が経ったからなのか。

 もしくは、別の理由。

 それこそ例えば、


「……、先にコッチを見つけたか。」


 ボス部屋の周辺であるからか。

 理知はそのままに、興奮を押し殺す。


「運がいいのか悪いのか。いや、この場合は悪運が強いのか?」


 扉は黒狼より20メートルほど先。

 大きな空間を横断する様に敷かれた石レンガの道、それを挟むように置かれた八つの像。

 黒狼は異様な雰囲気を醸し出す空間を進む。


「戻れば一つ、進めば二つってよく言うが安全策を取るべきだよな?」


 誰に問うまでもなく、自問自答をした後に扉に掛けようとしていた手を落とす。

 そして、扉に背を向けた時視界に明らかに雰囲気の違う何かを発見する。


「なんだあれ?」


 石レンガの中にひとつだけ質感が違う物がある。

 なんと言えば良いか、意識せずに見ればただの石レンガだが気づいてしまえば明らかな異質なものだ。


 好奇心に駆られ、されどゆっくりと慎重に近づく。

 近づくとその異質さはより明確になった。

 他の石レンガと比べ、滑らかな作りだ。

 そして他が他色も混じった薄灰色に対してコレは薄灰色には違いないが余分な汚れがない。

 他にも石レンガは敷き詰められているが隙間がないわけではない。

 だがコレは、それにしても隙間が開き過ぎている。


 恐る恐ると言った具合に隙間に指を入れ両手で挟む。

 神経が通らぬ手ではあるが質感は間違いなく石だ、石であるのには間違いない。

 持ち上げられるか? と言う疑問が頭をよぎる。

 滑りやすそうだが不可能なことは無いだろう、力を込め上に上げようとする。


「あれ? 軽い?」


 いざ持ち上げようとすれば、予想した以上に軽く思わず手が離れてしまった。

 だが、この程度の重さとわかればどうと言うことは無い。

 再度持ち上げ、地面に置く。


 大きさは丁度、少し前に開けた宝箱ほど。

 それこそ下手に、勘繰る必要もないだろう。


「宝箱、でいいんだよな?」


 そう問いかけながら、上部を開く。

 質感、重厚さ、形状全てが違うが開いた中はあの宝箱と同じく。

 ただ内容物だけが変わりながら入っていた。

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