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始まり

 気疲れを起こしつつ、後で運営にクレームを言う決心を行う黒狼。

 だがそう言う縛りプレイは悪くない、むしろそんな状況でも彼は楽しめる類だ。

 満足に行動できない状況、だが進める物事は変化しない。

 説明の一環で教えてもらった初心者ミッションをクリアするために、彼はステータスを開き……。

 そして、己のステータスを見る前に通知のポップアップに邪魔される。

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通知:初心者ミッションが解放されました。

 本文

 初心者ミッションが解放されました。

 初心者ミッションをクリアする事で様々なアイテムやポーション、スキルツリーを解放できます。

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初心者ミッション

 ・モンスターを討伐せよ!! (0/1)

 ・アイテムを10個取得せよ!! (0/10)

 ・装備品を装備せよ!! (0/1)

 ・レベルを上げよ!! (0/1)

 ・スキルのレベルを上げよ!! (0/1)

 ・スキルを10個取得せよ!! (0/10)

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 現れたポップアップ、中に記載されている内容を見つつふと疑問に思う。

 違和感、少し思考を巡らした上で辿り着いた回答。

「レベル? そんなモノあったか?」

 疑問符を頭につけながらステータスを見るとnewの文字と共にレベルとスキルポイントが追加されている。

 新たな仕様の発見、驚き半分興奮半分でより詳細に調べようと記憶を掘り返しながらも色々見ていく。

「コレらはあそこでは出て無かったはず……、地上に降りてから分かるタイプの奴か。」

 初心者に優しくないゲームだなとか思いつつ(実際は説明されていたが普通に聞き流していただけ)開いたタブの説明を読み、理解を深めていく。

 とはいえ、ソレらは決して難解なものではない。

 単純にレベルはプレイヤーがどれだけ成長しているのかを示すモノであり、スキルポイントはスキルを取得したりスキルのレベルを上げるために使うモノということがすぐに理解出来た。

「クッソ、取得方法もレベルの上げ方も記載されてないのがイヤらしいな。自力で見つけろってか?」

 ブツブツ言いながら周りを見渡し、パッシブスキルかつ種族特性として渡された暗視で周辺に生えている苔に周期的に光るモノを発見する。

 暗視を用いなければ見えないほどの弱い光、流石にこの程度では死なないらしい。

 とはいえ、若干警戒しつつそのコケに近づく。

「なんだコレ?」

 近づいて凝視すると、空中にポップアップが浮かび鑑定結果が表示された。

 どうやら存外この世界はプレイヤーに優しいようだ、この程度のスキルならば意識的に念じずとも勝手に発動するらしい。

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鑑定結果:ヒナゴケ

 ・暗闇に生えており加工すれば簡易回復薬の素材となる。

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「あ、コレ採取ポイントか。」

 そう理解すると同時に、骨の手で上手く剥がしてみたところ『アイテム:ヒナゴケ』がドロップする。

 目線を初心者ミッションに向けてみると『取得せよ!!』の経過を示す欄が(1/10)に変化していた。

 どうやら採取、採掘も初心者ミッションの一つのようだ。

 簡単にミッションを達成できないか、悪知恵を働かせ手に持った苔を地面に落とし拾う。

 だが、数字は変化しない。

 流石にこんなズルは許してくれないらしい、軽く息を吐き残念そうに肩を竦め息を吐く。

「落として拾って……、は無理だな。流石に楽はさせてくれないか。」

 独り言、同時に周囲を見渡す。

 そうすると他にも4、5個ほど同じようなポイントが発見できた。

 ポイント、と言うより群生地か?

 ともかく、採取できそうな予感がある。

「とりあえず、取れるだけ取るか。」

 そう呟きながらポイントの苔や石を慎重に剥ぎ取っていく、手で掘ればすぐに獲得できたのは嬉しい誤算だろう。

 集められたアイテムは10個に満たないが、それぞれ錬金術などに生かせる有用なもの。

 黒狼は明確に喜びこそしていないが非常に嬉しく思う、物資とは力となるのだから。

 そして取得したアイテムに鑑定を用いた、その鑑定結果は以下の通り。

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鑑定結果:凝固石

 ・錬金術に使用する摺鉢の素材。環境変化に強くまた壊れにくい。他にも鍛治によって加工すれば武器にもなる。

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鑑定結果:洞窟蜘蛛の

 ・洞窟蜘蛛の脚。鍛治、薬学、錬金術で加工ができる。熱に弱いが冷気に非常に強い。品質が悪い。

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鑑定結果:洞窟蛇の表皮

 ・洞窟蛇の表皮。薬学、皮学によって加工可能。品質が悪い。

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「……レアっぽいやつは軒並み品質が悪いのか。」

 若干ガッカリしてはいるが、そこまで落ち込むことでもない。

 そもそも、ここは何度かのリスポーンでたどり着いた場所であり、そんな場所でノーリスクでレアなアイテムを獲得することはあり得ないのだ。

 そう考えれば、運が悪いと言う認識は要らずどちらかと言えば運が良いと言う方にはいるのでは無いか?

「ま、もし高品質でも今の状態だったら基本扱えないだろうし素直に幸運だと思うか。」

 黒狼もそう思い直した様で、手に入れたアイテムを端っこに纏めておくと使えそうなモノを探す様にあたりを見渡す。

 だが同じような群生地やアイテムは見つからない、結局これだけしか存在しないのを理解させられる。

「うん、まぁ、無いよな。」

 はぅ、と溜息を吐き洞窟の奥へと向かうべきか思案し出す。

 ここに居ても何も得るものは無いが、移動すれば何か手に入るかもしれない。

 だが、再度死んだらここに戻ってこれる保証は無い。

「考えるまでも無い、か。」

 そもそも先に進まなければ何も始まらないのは発覚している。

 ならば、悩むこともない。

 リスクを犯さなければ物事は進まないし、それにコレはゲームだ。

 失うものなど殆どないのにリスクを恐れると言うのは、それはあまりにも滑稽極まるだろう。

 ふと、直感が働いた。

 虚な眼孔で、闇の先へ視線を向ける。

 斜めになっている洞窟の先、そこに1匹の人型生命体がいるのが伺えた。

 どうやらそこにいるのは、ゴブリンらしい。

 つまりは殺すのに丁度いい獲物がいる訳だ、まさしく好都合だろう。

 その目に、迷いはない。

「いくぞ。」

 短く告げ、地面を蹴りゴブリンにタックルをかます。

 驚いた様な顔を見せるモンスター、反応は数秒遅れ地面に倒れる。

 そんな中でゴブリンを笑いながら睨み、己の骨でできた拳を顔面に叩き込み醜悪な顔を歪ませる黒狼。

「オラ、よッ!!」

 地面に倒れ伏せたゴブリンの腕を絡みとり、やや躊躇しながらも腕を逆関節に折って行く。

 手から伝わる生きている鼓動を無視し、思いっきり捻り上げそして何かを折った感触と共に掴んでいた筈のゴブリンの感覚が消えていった。

 初勝利、その余韻に軽く浸っているとその直後にポリゴン片が舞い散りゴブリンの姿がかき消える。

 なんとも言えぬ感触を噛み締め、勝利の雄叫びをあげようとしたその直前。

 一つのポップアップが、黒狼の目の前に浮き出てきた。

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・モンスターを討伐せよ!!(1/1)

 ミッションをクリアしましたのでアイテムを贈呈します。

 スキル構成から有用なアイテムが送られます。

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 確認ボタンを押すと、目の前にBOXが現れ自動的に開かれる。

 中からは皮で作られた、例えるのなら鞄の様なものが現れ地面に落ちた。

 落ちた鞄を手に取り、まじまじと眺めそして所感を述べる。

「……、箱のショルダーバッグ?」

 箱なのか鞄なのか分からないがまあ、それは兎も角として黒狼は癖になりつつある鑑定を行う。

 鞄を凝視し、半ば無意識で発動した鑑定スキル。

 そうして現れたポップアップを確認し、存外優秀な性能に驚きの声を上げた。

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鑑定結果:錬金箱鞄

 ・錬金術に関する道具のセットが入っている。内容物は簡易的なものかつ初心者向けであるが箱鞄の性質として中身が劣化しずらいなどの利点があるため熟達した錬金術師も愛用する一品。また加工などをして箱鞄の性能を上げるのも良い。

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「おおっ、至れり尽くせりだな。」

 喜びながら鞄を開けると、中には様々な調合道具がある。

 一つ一つが新品そのもの、真新しい物がゆえに匂いを嗅ごうとし。

 そして自分が骨であったことを思い出す、そう今の彼はアンデッドなのだ。

「乳鉢にフラスコに……、釜に簡易溶鉱炉ぉ? 質量保存の法則はどこいった? と言うか、火力絶対に足んないだろ、コレ……。」

 若干呆れつつ、中に入っている品を見ていく。

 案外、意外性は低くハンマーやピンセット、ハサミや濾布などが入っており一般的なイメージの錬金術ができる最低限の環境は整っている。

「ま、ぶっちゃけまだ使えないんですけどね。」

 はぁ、と溜息をつく。

 道具があっても、結局素材が無ければ加工はできない。

 今集めたアイテムでは碌なものが作れない、ある意味完全な手詰まりとも言える。

「ま、序盤は大きく道から逸れずにクエストをこなすか。」

 初っ端の種族選びからずれている人間が何をいっているのやら、と言う話ではあるがそれはそれ。

 RPGの基本であるクエストをこなすのは、やはり鉄板と言える。

 それに、チュートリアルの重要性は態々語り直すまでの内容でもない。

「次に簡単そうなのは……、やっぱりアイテム取得か。」

 何を以てアイテム取得としているのかは知らないがとりあえず地面に転がっている石を拾う。

 そして鑑定をしてみると、そのまま石と表示されるだけで何も起こらない。

「うん、だろうな。というか、この石じゃクエスト達成はしないのか。面倒くせぇ……、マジで。」

 その次に先程拾ったアイテムを再度拾い、ミッションを確認してみるが特に変化なし。

 ズルは許されないかと、分かっていた結果を再確認し洞窟の奥に降りることを再度決意。

 そうして、洞窟の奥に降りることを決意するのだった。

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