けたたましい声が空に響く。
俺はロックバードと呼ばれる怪鳥の背に乗っていた。
背に乗るパーティメンバーはラナン、ハンバル、フサーム。
これより、魔王イオにより与えられたクエストをこなすためにロックバードにまたがっているのだ。
(イオは魔物を使役できる『ビーストテイマー』の能力が扱えるとは驚いた……ただの人間ではないということか)
勇者であり魔王を名乗るイオ。
彼女は勇者でありながら魔物を使役する『ビーストテイマー』の能力を持っていた。
ビーストテイマーとは、特別な才能を持つ者だけが得られる希少な能力を持つ職業だ。
通常、人間に危害を加える魔物たちを従わせ使役する力を持つ。
魔王を名乗るに相応しい能力といえよう――。
(……これからどうなるか)
俺はアレイクを見つめる。
これから巡る旅は作られたシナリオ、ゲーム設定を破壊していく旅路。
そう、この世界の俺達は
ゲームマスターにより作られたMAPを巡り、ダンジョンを探索し、与えららたイベントをクリアし、置かれた魔物をただ倒し、感動のエンディングを目指していくというもの――。
「ガルア、何を考えているの?」
「いや、何でもない」
「そう……」
ラナンが俺にそう静かに問う。
この時の俺達はまだまだ知らない。
俺達はこの世界でプレイヤーを楽しませるだけのゲームキャラであることを。
「ハンバル、次はどこの街にいくんだ?」
「ゴルベガス、砂漠にある歓楽都市だ」
ハンバルとフサームの会話から出た『ゴルベガス』。
そこには魔物の闘技場があり、人間達は魔物同士を殺し合わせる娯楽を楽しんでいるという――。
(人間の業……魔物とはいえ命を弄ぶなどと……)
魔王イオから与えられたクエストは『闘技場の魔物の解放』。
イオから詳細を伝えられた俺は人間の浅ましさにほとほと呆れていた。
人間であるはずの俺は少しづつこの世界について、疑いを持ち始めていたのだ。
本当に人間は守るべきものなのか、魔物は絶対的な悪なのか。
これまで持たなかったであろう疑問の数々――。
「この世界はおかしい」
俺は小さくそう述べた、自然と声に出ていたのだ。
ラナンは俺の独り言に反応する。
「……どうしたの?」
「少し……考え事をしただけだ」
ラナン・シャルト。
後で知ることになるが、彼女もゲームマスターに操られるゲーム管理者、大聖者により作られた存在。
勇者イグナスが果たして、この安っぽいゲームの主人公に相応しいか否かのために急遽作られたノンプレイキャラ。
シナリオのために誕生した使い捨ての登場人物であるのだ。
「あまり、考え過ぎてはダメよ」
ラナンの言葉に俺は笑みがこぼれる。
「……魔族のお前に気づかいされるとはな」
「ダメかしら?」
「そんなことはない……少し気持ちが落ち着く。ありがとう」
「人間から『ありがとう』なんて言われるなんてね」
「ダメなのか?」
「ふふっ……そんなことはないわ」
本来であればシナリオ後に消されていたかもしれないキャラクター。
その彼女はイオと出会うことで存在を見出され、新生魔王軍、つまりゲームキャラクター達の自立した意志により作られた軍勢の一員となっている。
そう俺達はこの世界のシナリオを壊していく『バグ』を起こすのだ。
この作られた幻想世界を壊すための『虚空の旅』――。
「俺は俺の意志で戦う……」
俺は戦士から闇の勇者の意志として旅立つ。
これからを作る物語のために――自由意志のために――。
この世界で生きる俺達は、誰かのために動くのではない。
それを知るための旅が、やっと今始まったばかりだ。
ここまでの旅を記録しますか?
▶はい
いいえ
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≪Ground Brave Quest≫
ぼうけんのきろく1
ガルア レベル18 しょくぎょう:やみのゆうしゃ
ぼうけんのきろく2
イグナス レベル13 しょくぎょう:ゆうしゃ
ぼうけんのきろく3
セーブデータなし
ぼうけんのきろく4
セーブデータなし
ぼうけんのきろく5【クリアデータ】
イオ レベル70 しょくぎょう:ゆうしゃ
RPGソフト 制作:株式会社ハズレ
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