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ep01.呪われた戦士

 ――イグナスは宝箱を開けた、なんとカタストハンマーを手に入れた。


「これお前が装備しろよ」

「俺が?」


 俺の名前はガルア・ブラッシュ。これでも一応戦士だ。

 勇者イグナス・ルオライトのパーティに加入している。

 今日は迷宮の森で、イグナスから呪いの武器『カタストハンマー』を渡された。

 当たれば会心の一撃であるが命中率は1/3……曰く付きの武器だ。


「イグナス、これを武器に俺は戦えと――」

「いいから装備しろっての、いつまでたっても鋼の剣じゃあダメだろ」


 イグナスは金髪碧眼、いわゆる美青年だ。

 だが人格は勇者と呼んでいいのかわからないほどだ。

 俺にまともな武器を渡さず、行く先々のダンジョンで手に入れた呪いの武具を装備させる。

 パーティから抜けたい気持ちがないと言えば嘘になる。


 でも、それは出来なかった。

 イグナスは、世界を恐怖に陥れる魔王ドラゼウフを倒すために旅する勇者。

 そして、俺はその勇者直々に選ばれた戦士だ。リーダーに従うのがパーティメンバーの役目。

 一刻でも早く魔王を倒し世界を平和に導きたい、ここは勇者イグナスに従い我慢するしかない。

 ……とはいうものの納得が出来ない。


「そろそろ、まともな武器や防具を装備させてくれよ」


 説明すると、今の俺の装備はこのようなものだ。

 腰に差す黒鞘に入ったのは鋼の剣、冒険途中の武器屋で買った既製品だ。

 そして、頭から順に述べると人骨を模ったスカルヘルム、体には赤黒い血のような色をした鎧ブラッドアーマー、左手に持つ黒いドクロの紋章が刻まれ暗黒の盾を持つ。


 武器以外は全て呪われた装備だ。

 体にはずっと倦怠感がある。

 恐らくは呪われた防具のせいだろう。

 いつしかずっと、俺はそんなものをイグナスに渡され続けている。

 ――武器まで呪いの装備を渡されてはたまったものではない。

 クエストをクリアした後、金さえ払えば街や村にある教会で呪いは解ける。

 ……がそこまで体が耐えられるか不安だ。


「ガルアは勇者の意見に反対なの?」


 亜麻色のショートカットの少女が詰め寄って来た。

 ああ……まただ。俺は頭を抱える。

 彼女の名前はミラ・ハーリエル、パーティのサポート役である僧侶だ。

 ミラはイグナスのことが好きなようで、いつもヤツの無茶な意見に同調する。


「イグナスの言う通り、さっさと装備しなさいな」


 俺はチラリと黒い長髪の男を見た。

 彼は同じパーティメンバーのジル・ディオール、魔法使いだ。

 赤いローブ姿が強さを醸し出していた。

 普段は物静かだが、確かな魔法と溢れる知識で幾度も冒険の窮地を救ってくれた。


「先を急ぐぞ」


 ジルは興味もなく、先へと進んでいった。

 迷宮の森深くにいる『青の暴君』と呼ばれる凶悪なドラゴンを倒すためだ。


「ちょっとジル!」

「いいからコイツを装備しろ、いいな!」


 イグナス達は無理矢理、俺にカタストハンマーを渡すとジルの後をついていった。

 残された俺はカタストハンマーを片手に握る。

 その悪魔的なデザインは、明らかに呪いの装備であることを雄弁に物語っていた。


(この音……やはり呪われていたか)


 嫌な音が俺の頭に鳴り響いた。

 案の定、カタストハンマーは呪われていたのだ。

 今日も俺は呪いの武具を装備する。

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