さあ、これから楽しいゲームを始めよう。
君がプレイするゲームは『Ground Brave Quest』と呼ばれるもの。
剣と魔法のファンタジーRPGだ。
では、
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≪Ground Brave Quest≫
異世界ブライトス。
この世界は争いごとが繰り返された。
人と人、種族と種族、国と国……。
闘争という悲しみの歴史の糸を紡いでいった。
多くの血と涙が流され中、人々は争いを繰り返してならぬと気付いた。
そこで国同士あるいは部族、種族間で法と秩序を定めていった。
時間はかかったが、相互理解と妥協により、争いごとは少しづつなくなっていく。
そう、悠久の時と努力を続け、世界は平和を作り出していったのだ。
しかし、平和な時代は長く続かない。
突如として、絶大なる魔力を持つ魔族の男が登場したのだ。
名はドラゼウフ。
自らを魔王と名乗り、その力とカリスマ性で魔物達を束ね、世界征服を宣言。
各国へ侵攻を開始し、魔軍の領土を拡げていった。
そこで各国は同盟を結び、魔王ドラゼウフの討伐に乗り出した。
勇気ある冒険者に〝勇者〟の称号を与え、討伐の旅へと向かわせたのだ。
そして、今日も勇者が誕生する――。
▶ New Game
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イリアサン王国。
美しい大自然と豊かな文化が融合する大国、物語の中心地だ。
唯一、イリアサンだけは魔王軍の侵攻を免れていた。
それは『ルビナスの霊泉』と呼ばれる水脈が流れていたからだ。
この霊泉は女神ルビナスの祝福を受け、大地から聖なる力を放出させていた。
流石の魔王軍でも、この国だけは攻略しにくい土地であったのだ。
「来たか! 勇者よ!」
イリアサン王国領内。
そこにステンドグラスに囲われた美しい館があった。
館の名はシテン寺院。
イリアサンを守護する女神ルビナスを祀る大寺院である。
君はこの大寺院から〝勇者〟の称号を与えられるのだ。
「魔王ドラゼウフを討伐するのだ」
女神像の前に男が立っている。
サイネリア色の頭巾を被り、白いマントで体を包む小柄な男だ。
名は大聖師、このシテン寺院の最高責任者。
本名はわからないが、君の冒険をサポートする心強い味方である。
「勇者試験を突破した君なら、必ず世界に平和を取り戻させてくれると信じている」
勇者試験。
イリアサン王国の優秀な若者を集め、勇者を一人選出する試験だ。
過酷な訓練、試験、課題をクリアしたものでなければ勇者を名乗れない。
これはイリアサン王国独自の選定法で、世界で一番厳しいと言われている。
君は見事、この難しい試練を乗り越え、勇者の称号を与えられたというわけだ。
「さて、冒険の出発前だけど聞きたいことはあるかい?」
大聖師は笑顔で話しかける。
君は冒険に出るにはまだ不安がいっぱいだろう。
わからないことがあれば聞いてみるといい。
「一人だけでは心細い? ふーむ……」
これから過酷な冒険が始まる。
一人だけではやはり厳しいものだ。
仲間が必要になる。
「仲間にするなら戦士、魔法使い、僧侶がいいだろう」
前衛の戦士、後衛の魔法使い、僧侶。
大聖師はRPGにおける王道的なパーティ構成を強く奨める。
やはりバランスが一番大事だ。
ソロプレイや、縛りプレイもいいが、基本に忠実な方がクリアはしやすい。
「仲間が欲しいなら、街の酒場に行くといい。そこにジルという魔法使いがいるだろうから、話しかけてみるといいよ」
大聖師は丁寧にも、仲間の一人であろう名前を口にした。
どうやら、街の酒場にジルという魔法使いがいるようだ。
おそらく勇者の仲間となる男であろう。
「勇者イグナス、期待しているよ」
勇者イグナス・ルオライト。
この物語の主人公、君の分身となるキャラクターだ。
「はい、世界に必ずや平和を取り戻させます」
これより、偉大なる冒険が始まろうとしていた。
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