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第13話:お見舞いとキスの嵐。




 ベッドの中でゴーロゴロ。

 ジョルダン様の攻め攻めな誘惑から二日目の夜。

 あの日、卒倒してから夜に高熱を出し、今日も寝込んでいます。

 熱はほぼ下がったのですが、まだちょっと残っている、といった感じです。


「心労を与えてすまなかった」


 困り眉になったジョルダン様がベッドの横に座り、ゴーロゴロしている私の頬を撫でています。

 お仕事帰りに立ち寄って下さったのですが、手土産がえげつないです。超高級な超甘い果物たち。


「ほら、あーん」

「…………あーん」


 もぐもぐ。

 美味しすぎます。なんですかこの桃は。

 とろけるのにしっかりとした歯ごたえのある果肉、甘さの奥にある酸味が程よい爽やかさを演出していて、ついついついついついつい。


「あーん」

「ハムッ…………おいひいです」


 ついつい、もりもりと食べてしまいます。

 私、ダイエット決心してたはずなんですか?

 それのせいでジョルダン様と結構なすれ違いをしてしまっていたのですが?


「このオレンジは母の実家から届いたもので、栄養価がとても高い。沢山食べなさい」

「ふぁい……」


 真面目な顔であーんされるので、素直にあーんでモリモリと食べていますが、ダイエットは明日から現象になっている気がします。

 いえ、美味しいし、ありがたいのですが。

 果物大好きですし。


「あーん」

「……あーん」


 お皿に盛られた果物を全て食べてしまいました。


「ん。ソフィ、無理なダイエットはしないでくれ」


 心配そうな御顔でさすさすと頬を撫でられますが、卒倒したのは間違いなくジョルダン様のどエロい攻めのせいですが。

 ダイエットといっても、毎食のロールパンを三個から二個に減らしていただけですが。


「ご心配ありがとうございます」


 おでこにチュとキスが降ってきました。


「ん。また明日も顔を出す。しっかりと寝ていなさい」

「たぶん、明日には熱が下がっていると……」

「ん? 寝ていなさい」

「……はひ」


 有無を言わせない笑顔に反論できず、明日もベッドでゴーロゴロが決定してしまいました。




「ん、ちゃんと寝ているな」

「ふぇい!」


 ついさっきまで部屋の掃除をしていたなんて言えない状況です。


「少し息が乱れてるな……まだ熱が?」

「ひょぇっ!?」


 ジョルダン様が覆いかぶさるようにして、私の頭の両側に手を置かれました。

 ジョルダン様のお顔がどんどんと近付いてきて、私のおでこにジョルダン様のおでこがピタリ。

 近い!

 近すぎる!

 ちょ、ジョルダン様の肌の艶がエグいんですが!?

 翡翠のような瞳が美しすぎて吸い込まれそうなんですが!?


「っ…………そう、艶めいた顔をするな……堪らない」

「ちちちちちちちがっ! ジョルダン様に言われたくないです!」


 ジョルダン様なんて、夜の帝王のくせにぃ!

 絶対に故意的にこういうことしてるくせに!

 だって、いつも私の反応を見てクスクス笑ったりしてるものっ。私は騙されないのです。


「ふふっ……ん、ただ私が待ち遠しいだけだ」


 ジョルダン様のおでこが離れてしまいました。

 ちょっとだけ寂しいような気持ちになっていましたら、心臓を締め付けられそうな言葉と鼻の頭にキス。


「んきゅ……」

「……どういう声だ、それは。可愛いな……もう一回鳴いて?」


 びっくりしすぎて漏れ出た声が、なぜかジョルダン様の癖にぶっ刺さったらしく、鼻や頬や目蓋に何度も何度もキスが降ってきました。


「ひょわ……あの…………んにゃ……ちょ…………しつこいっ!」

「んはははは。ん、元気そうでホッとした」


 キス攻撃を終えたジョルダン様が、少年のように笑いながらイスに座り直しました。

 穏やかな笑顔で本当に良かったと呟かれたので、本当に心配をお掛けしたんだなと、ちょっとだけ反省。

 ムクリと起き上がってジョルダン様の瞳をしっかりと見つめます。


「ジョルダン様、ご心配おかけしました。お見舞いありがとうございます」

「ん」

「でも、もう元気なので、ジョルダン様はまっすぐご自宅に帰って、しっかりと休まれてくださいね?」


 脳筋兄がどうやって私のお見舞いの時間を捻出してるんだ? と首を傾げていたので、きっと無理をしてくださっているのです。

 私はお仕事に打ち込むジョルダン様がとても好きですが、無理はしてほしくありません。


「……ん」


 ジョルダン様が泣きそうなお顔でくしゃりと笑われました。どうしたのでしょうか?

 ぎゅむむむむっと抱きしめられてちょっとだけ苦しいです。


「こんなに人を愛せると思わなかった。こんなに心が動くとは思ってもみなかった。君の存在が、尊い。ソフィ、ありがとう」

「ほへ?」


 ジョルダン様は何か思い至ることでもあったのか、お仕事で疲れていたのでしょうか。

 お見舞いを言い訳に私に会いに来て、癒やされていたと呟かれました。

 本当はこんなに長居をして、私を気疲れさせてはいけないのに、と。


「連日お会いできて嬉しいですよ?」

「ん、私もだ。君と早く共に過ごしたい」


 なんだかこの数日でジョルダン様のほうが弱ってきているような?

 脳筋兄が言うように、本当にお忙しいのでしょうね。

 ぎゅむむと私を抱きしめるジョルダン様の頭をよしよしと撫でると、もっとと言われたので、何度も何度も撫で続けました。




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