目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第47話 懐かしき再会



「レイ、レイ!」


「どうしたんだアピラ、そんな興奮して……」


「こ、こんにちは」


 興奮するアピラを落ち着かせようと、声をかける……その最中、別の声が割り込んでくる。

 それは、アピラの正面にいた人物のもの。顔が見えるように、アピラは横にずれた。


 その顔を見て、俺は、一瞬黙り込み……その顔を、思い出す。


「り、リーズレッタ、さん!?」


「どうも、レイ様」


 そこにいた人物……その顔を見て、俺は驚いた。

 これは、アピラがあんな声を上げるのも、確かに納得だ。


 顔見知り……それも、俺とアピラ共通に、記憶に深く残っている人物。

 リーズレッタさんが、そこにいた。レポス王国ではない、この場所に。


 一瞬、誰だかわからなかった。

 だってそうだろう、彼女と別れてから……あれからもう、十三年になるだろうか。


 それだけの時間があれば、人は、変わる。


「お、驚いたな……また、会うなんて」


「私もです」


 うっすらと微笑む彼女は、女性としての魅力がはるかに上がっていた。

 長かった白髪を、肩付近でバッサリと切っていた。今は、セミロングヘアといった髪型だ。


 凛とした佇まいはおとなしさを見せ、どこか落ち着いた雰囲気を見せていた。

 だが、彼女への注意点を引くものは、他にある。あの頃と変わった容姿もそうだが、それ以上に……彼女のお腹が、ぽっこりと膨らんでいた。


「その、お腹……」


「えぇ、赤ちゃんがいるの」


 その告白に、アピラは「きゃっ」と短く歓喜の悲鳴を上げた。

 俺も、驚いた……リーズレッタさんは、妊娠していたのだ。彼女は少し、気恥ずかしそう。


 ということは、そうか……結婚、したのか。十三年だもんな、そりゃそうか。


「おめでとうございます、リーズレッタさん」


「おめでとう!」


「ふふ、ありがとう」


 思わぬ再会。できれば、ゆっくりと語らいたいが、そうも言っていられない。

 ここは料理屋で、俺は店主で、彼女はお客様だ。旧知の仲でも、店をほっぽっておくわけにはいかない。


 ……そう思っていたが、タイミングがいいというべきか、客足が減ってきた。

 それに……


「ここは俺らに任せてくださいよ!」


 他の従業員たちが、自分たちがやっておくのでと、俺たちに自由な時間をくれた。

 まだ数日の付き合いなのに、いい人たちだ。近々ボーナスをあげよう。


 ということで、空いている席に座る。リーズレッタさん、その隣にアピラ。正面に俺だ。

 リーズレッタさんが頼んだのはパスタで、作ったのはアピラだ。


「……うん、おいしい」


「よかった」


 アピラの作った料理は好評のようだ。嘘偽りのない笑顔に、アピラも嬉しそうだ。

 食事中、俺たちはたくさんの話をした。お互いのことを、話し合った。


 リーズレッタさんは、今から三年前にレポス王国の兵士をやめたらしい。

 理由は……いわゆる寿ことぶき退職。



『好きです! 私と結婚を前提にお付き合いを!』


 とある旅人がリーズレッタさんに一目惚れし、何度もアプローチをかけたらしい。


 当初、自分にアプローチしてくれる男性がいることに嬉しく思いつつも、誘いを受けるつもりはなかったらしい。

 だが、日々続く猛烈な熱意に、次第にリーズレッタさんも折れ……最終的には、プロポーズを受け入れた。


 リーズレッタさんが兵団をやめることに、誰もが賛成していたわけではないし、多少の反対はあった。

 だが、リーズレッタさんの部下や、未だ現役として兵士をやっているガルドローブさんの後押しもあり、兵士をやめたのだという。


 優秀な兵士だが、強い反対もなかったのは、最近は治安も良く、兵士が活躍する機会が少なくなっているかららしい。

 その後、リーズレッタさんはその旅人とレポス王国を出て、俺とアピラのように各地を旅して回っていたようだ。


「けど、子供ができたの。だから、この国に住むことになって……今では、新居だってあるのよ。今度遊びに来て」


「うん、行こうレイさん!」


「あぁ、必ず」


 リーズレッタさんは、自分の幸せを見つけたんだな。

 あの時、俺に告白してくれた女性が、今や一児の母になろうというのだ。


 なんだか、不思議な気分だ。


「レイ様とアピラちゃんは、相変わらず旅を続けているのね?」


「えぇ。ていうか、いい加減レイ様はやめてくださいよ」


「あは、なんだか癖で……喋り方も、なんだか少し変かも」


 久しぶりに会って、お互いに距離感を掴みそこねているのか。

 しかし、アピラだけは平常運転だった。


「でも、リーズレッタさんが幸せなら、よかったよ〜。私、ずっと気にかかってて」


「それを言うなら、私もよ。まさかこんなに大人っぽくなってるなんて……あのアピラちゃんが、『スキル』を授かって、なんだか不思議だわ」


「ふふん! 私ももう、立派な大人なんだよ!」


「ふふ、そうね」


 変わらないアピラの様子に、リーズレッタさんも安心したようだ。

 それから、なぜか俺とアピラとを、チラチラと交互に見つめていた。


「それで、その……二人はもう、付き合ってるのよね?」


「ま、まあ……」


「ふーん。まさか、かつて自分が好きだった人と、妹みたいに感じていた子が、ねぇ」


「……あげませんよ?」


「あっはは、もう吹っ切れてるわよ!」


 俺とアピラは、付き合っている……

 いくら『スキル』の問題もあるとはいえ、自分を振ったくせに他の女とくっつくなんて、とリーズレッタさんは思っていないだろうか。

 そんな心配もあったが。


 リーズレッタさんはもう吹っ切っているようで、笑い飛ばしてくれた。


「でも、レイ様も気をつけないとだめですよ?」


「と、いうと?」


「だって、アピラちゃんこんなに美人になっちゃって。きっと、たくさん声をかけられているわよ?」


 ぅ……なかなか、痛いところを突いてくるな。

 そう、リーズレッタさんの言ったように、アピラは実際、他に数多くの男から声をかけられている。

 しかも、隣に俺がいてもお構いなしに、だ。


 きっと、俺のこと、弟がなにかだと思われているのだろう。

 だが、アピラはそんなことは、気にしない。


「大丈夫ですよ、私はレイ一筋だから」


「お、ヒューヒュー」


「いやどんな冷やかしだよ」


「確かに、しつこく声をかけてくる人もいるけど……そういうときは、こうするの!」


 と、アピラは立ち上がり、俺の隣にやって来る。

 そして、俺の腕を抱きしめ、ニコリと笑顔を浮かべて、言うのだ。


「この人が、私の大切な人です、ってね!」


「果報者ねぇ、レイ様は。大切にしないと、だめよ?」


「もちろん、わかってるよ」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?