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「はぁ、はぁ、は……疲れたなぁ」
宛もなく、旅を続けていた。
今いるのは、巨大な砂浜の上……とでも言うべきだろうか。
いや、わかりやすく言うならば砂漠だろう。
照り続ける太陽、そして踏みしめるたびに足が埋まる砂の地面は、確実に俺から体力を奪っていく。
手にしていたボトルを、口に含む。中に入れていた水が、喉を潤していく。
だが、もうこれで水は空だ。ボトルを逆さにしても、一滴の水すらも出てこない。
「……水を出すことができればなぁ」
一人、解決もしない言葉を呟いた。
一人だと、なにも喋らないと気が滅入ってしまう。とはいえ、この暑い中で喋るのも疲れるものだ。
どこかで水を補充したい。
俺が、水を自在に出すことのできる『スキル』でも持っていれば、とりあえず飲み水の心配はしなくて済んだのだが。
「とりあえず、どこか休憩する場所を探さないと」
しばらく歩いてきたし、休憩したい。
しかし、辺り一面砂だらけだ……休めそうな場所など、どこにも見当たらない。
まったく……ここが『異世界』だというのなら、少しくらいは俺に優しい設計であってほしいものだ。
「……ま、俺に優しい世界なら、今こんなことなんてしてないか」
自分で自分の考えを否定し、歩みを続ける。
とにかく、歩かなければ休める場所も見つからない。体力が限界になる前に、なんとしてでも。
こんなところで倒れてしまったら、洒落にならないからな。ま、ここで気を失ってしまえば、死ぬことができるかもしれないが……
「……あ、あった」
そう想っていた矢先。視線の先に、水辺が見えた。砂漠のど真ん中にある、大きな水辺。
こういうの、オアシスって言うんだっけか。俺の妄想じゃないことを祈ろう。
俺はゆっくりと、歩き出す。
宛のない旅……たった一人ぼっちの旅……俺が旅を始めてから、もう、三千年は経っただろうか……
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