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第2話

「三角形を作ってから縦棒っと。お、開いた開いた」


 チュートリアルはとても簡単なものだった。マップの開き方2種とメニューの開き方。移動のレクチャーなど、たったそれだけの説明を簡単にできた。

 メニュー画面には、ランキングという項目とステータスの項目、武器庫。マップに武器以外のものを入れるアイテムストレージ。

 ランキングを試しに見ると、どうやら戦闘力ランキングだった。次に見たのはステータスの項目。HP、攻撃力、防御力など馴染深い項目が連なっていたが、HPとMP以外は全て0表記だった。俺の予想は装備を身に着けてそれらの項目を上昇させるというものだろう。

 改めてランキングを見る。右上にインフォメーションマークがついてたので見てみると、ランキングの仕様の説明欄が出てきた。

 内容は、HP・MP以外の攻撃・防御・魔攻・魔防・運気の5項目の数値を集計して、それらを1.1倍にしたものを表示しているらしい。

 俺は数値は興味ないのでランキングは無視することにした。

 ある程度確認を終え、街を歩いてみる。いろんな2足歩行アニマルが楽しそうに会話をしたりしていた。空は高く、青空が広がっている。とても美しい景観だった。

 その中でも一番目立ったのはギルド勧誘する人たち。みんなギルド名の書かれたプラカードを持って、新規メンバーを募集している。そんな人たちよりも、ものすごく声を張り上げていたのは、灰色狼アバターの男性だった。


「ギルド"アーサーラウンダー"メンバー募集中です! 特にレアな兎アバターの人は大歓迎ですので、ぜひ入ってください!」

「兎アバター? って俺じゃん!」

「あ! そこの人! えーと、カケルさん! ぜひ入ってください!」


 見つかってしまった。俺はそそくさと逃げようとしたが、その灰色狼アバターの男性は走るのが早かった。すぐに腕を掴まれ、真剣な眼差しを向けてくる。

 俺はギルドには興味がない。今はいない弟を探したい。ゲームはただそれだけの理由で遊んでいた。

 だけど、この男性の目つきは、どうにも逃げられそうにない目つきをしていた。どうして俺にこだわるのか? その意図がわからない。


「カケルさん。アーサーラウンダーに入りませんか?」

「い、いや……」

「ぜひ入ってください! 僕とある人と約束してしまって、中でも使用者の少ない兎アバターの人をずっと探してたんです!」

「いや、なんでそんな約束したんだよ!」


 この男性は少年のような澄んだ声をしていた。瞳は青色。未来を見透かしているような瞳に、俺はどうしようもなくなった。

 未来を読まれてる? そんなはずがない。未来は預言者でなければ決して見れないものだ。だけど、彼の圧は凄まじいものがあった。

 俺は視線が合わないように目をそらす。聞いてないフリをする。なのに彼は俺から離れなかった。


「わ、わかった。じゃあ交換条件。俺にこのソルダムのマップを提供してくれ」

「いいよ。メールアドレス教えて」

「了解っと。これが俺のメールアドレス」

「ありがとう。ここにマップデータを送付して送信っと」


 送られてきたのは圧縮ファイルだった。俺はそれを解凍して中のPDFを確認する。そこにはソルダム全体のマップに大量のピンアイコンが表示されていた。これで攻略が楽になる。


「これだけ情報があれば満足。じゃあ、アーサーラウンダー入るよ」

「ありがとう。フレンド申請送るよ」


 すると少年は素早い操作で俺にフレンド申請を送ってきた。俺はそれを承認すると、今度はアーサーラウンダー勧誘申請が送られてくる。続けて俺は承認した。


"ギルド:アーサーラウンダーへようこそ!"


「ギルドアーサーラウンダーへようこそ。僕はギルド団長のケイこと宮鳥景斗みやとりけいとです」

「俺はカケル。本名は飛鳥翔斗あすかしょうと。って本名言って大丈夫なのか?」

「うん大丈夫だよ。半径1メートル以内の場所はプライバシーエリアって言って、その外側は本名がノイズに聞こえるんだ。だから、人気ひとけのない場所なら安全だよ」

「そうなのか……」

「さ、ギルド拠点に案内するよ」


 そう言って移動を始める。俺とケイは素顔が見えない動物アバターで街を歩いていた。街はまだ賑わっている。どこからも楽しそうな会話が聞こえてきた。

 周りからの視線は狼が兎を連行している感じに見えるみたいで、クスクスと笑い声が聞こえてきそうな空気感。みんなこちらの方を伺う顔をしている。こうなるなら入りたくなかった。入ってってしまったのだから仕方ない。


「ケイさん。アーサーラウンダーの拠点ってどこですか?」

「何? 敬語? タメ口でいいよ。あと僕のことはケイでオーケー」

「じゃあケイ。ギルド拠点は……」

「もうすぐだよ」


 それからは特に話す話題はなく、ケイは知らん顔で堂々と歩く。対して俺はこの状況に馴染めず、周囲をずっと見ていた。そしてやってきたのは拠点らしい家だった。とても綺麗な白を基調とした外観でとても清潔感がある。

 そこには、白猫と黒猫。熊に白狼の4人が待ち構えていた。白猫がファリナ。黒猫がラミア。熊がフォルテ、白狼がバレンと書かれている。


「ケイ。勧誘おつかー」

「ありがとうございます。フォルテ」

「いやいや、団長なんだしもっと胸張れよ……」

「無理ですよ。お母さんみたいになるのにどれだけの時間がかかるのか分からないんだよ?」

「そうだよな……」


 フォルテさんはかなり陽気な人でケイに優しいみたいだ。熊を選択したのもゴリ押し気質なのだろう。しかし、何となく酒臭そうな感じがした。


「おいアル中! ケイが困ってんぞ!」


 そこにバレンさんがツッこんでくる。バレンさんは沸点が低いようで、とても威圧感がある印象、とても怖い表情の白狼だった。


「酒ダチ別にいいだろ?」

「よくねぇよばーかばーか!」

「んだとぉー。酒ダチこそバーーカ!!」


 お互い怒りをぶつけるバレンさんとフォルテさん。俺は止めに入ろうと前に出る。


「バレンさん、フォルテさん。喧嘩はやめてもらえませんか?」


 俺の言葉にバレンさんがギラリと目を光らせて、こちらを睨みつけてきた。やっぱり怖い。話したくない。そんな恐怖で背筋が凍る。


「新入りは黙ってろ! 加えてケイ。なんで無能なアバターを選択したやつを呼んできたんだよ?」

「僕が兎好きだからかな? 可愛いし」

「可愛くねぇよ」


 こんなでこぼこなギルドで大丈夫なのだろうか? 後先が心配でならない。その中でもバレンさんの発言がどこか引っかかっていた。無能なアバター』とはどういう意味なのかさっぱりだ。実際俺の意思で選んだキャラでもない。

 それは少し後に知ることになる。だけど、まだ俺と話していない人がいた。ファリナとラミアだ。ケイが言うにはこの2人は彼よりも年上の双子らしい。


「ファリナさん。ラミアさんよろしくお願いします」

「よろしく。カケルさん」

「強ばってるよぉーー」

「声が……似てる……」


 どうやら一卵性双生児らしい。プレイヤー名が見えてなければ、どっちがどっちだか分からない。

 まあ、二人とも猫を選択している時点で好きな動物も一緒なのかもしれない。きっとフォルテさんとバレンさんコンビよりも仲がいいと思った。


「さて、みんな移動するよ。目指すは第2の街アンデス!!」

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