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F-11 決戦

 ――アイズフォーアイズの宇宙空間

 久透リアと虹橋アイが、互いのGM権限を奪い合う中で、もう一つ行われる大乱戦、モンスター心無しVSプレイヤー心有りのレイドバトル。

 数としては、モンスターが一万、プレイヤー側が千。この時点で圧倒的差であるが、そもそもに、モンスターは後ろから次々と召喚される。即ちプレイヤー側にとっては、無限永遠を相手にするという絶望クソゲーの戦い。

 しかし、ここに呼びだされた千人のプレイヤー達は、


「なんだよこのお祭りみたいな戦い!」

「テンションあげあげですよ! 本当もう!」

「ドキドキするぅっ!」


 ただただ、興奮するばかりである。それはそうだろう、まるでアクション映画のクライマックス、それに参戦出来たのだから。

 無論それぞれが、エキストラに終わるつもりもない。世界中のVRMMOプレイヤーから、アイとジキルの呼びかけでやって来た強者達、単純なプレイヤースキルであるならば、スカイ達と同等か、それ以上の者もいる、だが、


「うわ、あれがファントムステップ怪盗舞踏!?」

「生で見れたうわぁぁぁぁぁ!」

「泣いてねぇでべひんもすのタゲとってくれぇ!」


 グリッチ有りという点で、怪盗の一味ハートの7達の能力は一歩、抜きんでていて――五人が千体のゴブリンに囲まれて、一斉に襲われたが、


ファントムロード怪盗舞道!」

強制変化の術・無限無限にかわいくなぁれ!」

シックスパックボルケーノ腹筋大噴火!」

ヘビータンクソングかちかち戦車の歌!」

一閃斬れぬものなし!」


 スカイは地面を蹴って加速しながら、ゴブリン達を吹き飛ばし、キューティはよみふぃ着ぐるみを着せて拘束したあと、だめ押しにクナイを投げ刺して、ブレイズは腹筋からの火炎放射で燃やし尽くし、オーシャンは世界観にそぐわないからという理由で没になった戦車砲で広範囲攻撃を行い、クロスはただ目の前をぶった斬る!

 ――あらゆる手段でそれぞれ200体を

 倒しのけた事で、ゴブリン達はそのまま光と供に消失した。

 周囲の者達が喝采を送ったが、


「スカイ、危ない!」


 キューティの言葉に気付き、振り返った時には、10メートルのサイクロプスが自分を踏みつぶそうとしてて、


「どっせぇい!」


 それにがっぷり四つ、灰戸ライドの巨人アバターが飛びかかって防いだ。


「うわぁぁぁ、社長、戦ってる!?」

「ていうかそのサイズで動けるの!?」


 戦う際は、VRとリアルのサイズがズレると、戦いにくい、だが、


「俺のこの肉体はぁ!」


 ――一年に百回以上行っている株主総会レイドバトル


「君達の熱き思いで鍛えてきた、無敵の肉体だぁっ!」


 その経験によって得た”巨人の動かし方”で、ライドはそのまま、サイクロプスをうっちゃった。凄まじい轟音と供に、響き渡る大歓声。そのままライドは進軍し、高笑いと供に、巨大なモンスター相手に無双しはじめた。


「社長、凄い!」


 思わずスカイもそう喝采を送ったが、


「――何をのんびりしてるんですか」

「うわ、グドリー!?」


 背後からいきなり話しかけられて、ビビりながら振り返れば、メガネをクイっと中指であげるグドリーと、その一味の姿があった。


「状況が解ってるのですか? このままだと、私達が負けますよ」

「いや、でも我達は、リアさんを今から倒して」

「彼女はシソラ君、いえ、スカイ君への怒りで我を失っています、ですが」


 怒りとは、そう燃やし続けられるものではない、なので、


「冷静さを取り戻して、ガン逃げされたらどうするのです?」

「あっ」


 グドリーの指摘は、全く的を射ていた。


「君の安い挑発にのるのは、ブラックパールに心を侵されたものと、小悪党の私くらいですよ?」

「ソレ、ジブンデイウンデスカグドリーサン」


 そんな話をしている内に、キューティ達もやってきた。


「グドリーの言う事ももっともだな」

「追い詰められたら、お空の果てまで逃げられそうやねぇ」

「鬼ごっこだったら、スカイが勝つんじゃね?」

「いや、怪盗は、逃げは得意だけど、追うのはそこまでだ」


 そして4人、それぞれが意見を述べた後、一斉にスカイの方をみつめた。どうする? と、聞くみたいに。

 ――しかし、その問いかけに答えるのは彼ではない


「グドリー」


 そんな悪巧みはもう、


「どんな姑息な策がある?」


 小悪党の役割だから、笑ってそう問いかければ、

 グドリーは、卑屈な笑みを浮かべた。







 ――最後の戦いというレイドバトル

 それが始まって、15分という時間が経過した状態で、未だにモンスターとプレイヤーの戦闘が膠着した状態で、


「ああ、ぐ、うう」


 久透リアの心は、


「あぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 全く、落ち着いていなかった。


「間違っていない私は間違っていない世界から悲しみを無くさなければならない死を否定しなければならない人類を救済しなければならない!」


 思慮深さも何もない言葉の羅列、その放出、けれどそれは、リアが意識して行っている事だ。怒りは、吐瀉のように吐き出さなければ、落ち着かない。

 須浦ユニコもそうだったから――そう、思った時、


「あっ」


 彼女が、満足そうに笑って死んだ事実を、思いだして、


「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 再び叫ぶ、少しでも黙ってしまえば、”幸せな死”なんて、彼女リアにとっての絵空事を、信じなくてはいけなくなるから。だから、最早絶叫でしか、己の間違いを、否、”間違いに気付く”心を殺す方法は無かった。

 そんな風に悶え続ける彼女の視界に、

 ――モンスターの群れを掻き分けて


「――来たか」


 白いスーツに身を包んだ怪盗が、


「来たか、怪盗スカイゴールドォッ!」


 最後方にいた自分へと、ファントムステップを連続使用し、スカイゴールドがやって来る。だが、さしもの怪盗も、この大量の敵を無傷に駆け抜けるのは無理があるようで、HPが削れていくのが目に取れる。

 放置しても、ここに辿り着くまでに、そのまま倒れる、だが、

 “予想通りにその予測を裏切って”、

 怪盗はファントムステップで飛び、

 自分に向けて、加速した蹴りを放った、だが、


インドラの裁き叩き付ける壊劫!」


 強烈な電流が、怒りの侭にリアの掌から放たれて、スカイゴールドはそれに吹き飛ばされる。だが、彼が地に倒れ着くまえに、高速で吹き飛ばされる怪盗に追いついたリアは、彼の顔面をマスクごとがしりと掴み、そのまま足場へ思いっきり叩き付けた。

 そして、既にHPが0のスカイに、


「――殺してなぞやるものか」


 直接、修正を叩き込む為、一度その顔から手を離して、


「君は永遠に生き続けろ!」


 改めてその手を振り上げた、だが、

 気付いた。




「――郷間ザマ?」


 良く見ればそれは、

 黒いスーツから、白いスーツに着替えただけの、ナイトゴールド。

 呆然とするリアに、ナイトは、

 ザマは言った。


「――ざまぁ」


 さんざん、己の誇りを砕かれた相手への罵りと、


「ありがとう」


 それでも、確かに自分を愛した者への感謝を。

 ――憎しみと愛のミルフィーユ




 スカイがナイトであった事よりも、その憎悪と愛こそが――さんざん、リアがザマに対して向けてきた感情こそが、

 リアの心に、怒りすら忘れさせる程の空白を作り、そしてその一瞬を、

 ――英雄竜は見逃さない


シューティングドラゴン流れ星となり願う竜!」


 LustEdenのオーナー――その全盛期の姿、時間をかけて裏取りバックアタックし、満を持して飛翔した英雄龍マドランナが、その蒼い炎と供にリアの背中から突っ込む。

 ――リアはそれを紙一重でかわすが

 何かが、自分の足首に固まった。


「――義賊ヨーヨー」

氷桜ひおう


 同じくこの場所に、密かにやってきた義賊の隠密術アカネとサクラの――姉妹二人で握られて、そして放たれたヨーヨーが、リアの足首に絡みつく、

 リアはすぐにその糸を電流で灼ききろうとしたが、その糸はそのまま、サクラの冷気によって凍り付く!


「いくよサクラ!」

「はい!」


 姉妹は声を合わせて、ヨーヨーをぶん回し、


世界氷巡りアラウンド・ザ・アイスワールド!」


 その勢いで地面へと――叩き付けずにそのままヨーヨーごと空へとぶん投げた、空中へと浮かんだリア、足が氷で固められた状態では身動きが取れない、そんな無防備に、


ライジング昇天竜!」


 地上から一気に上昇したマドランナの体当たりが ――リアの体に激突する!


「がはっ!?」


 乾坤一擲の一撃をくらったリアはそのまま、山なりの軌道を描く。だが、その途中で覚醒し、全身から発する電流で氷を砕いた。自由になったその身で――全身に電流を迸らせる。


「ぐっ、う、うううっ!」


 地上に落ちた瞬間、足場を蹴って、一気にここから離脱する。その”為”の”溜め”、だが、

 ――歌が聞こえた

 その歌は、

 覚えがある。

 長浜の、あの病室で、

 一度だけ彼女が、聞かせてくれた。

 ――遥か彼方のミレニアムスター

 須浦ユニコの歌が聞こえて来た下方へと、思わず視線を向ければ、

 そこに居たのは、


「――ブルーオーシャン」


 ただ、自分を見上げながら歌う、彼女の姿。

 ――次の瞬間




 宙に浮かぶリアの周囲を、

 ハニカム構造の、透明なドームが覆った。

 ――データー呼び出しグリッチによるオブジェクト

 それと供に、リアは落下し

 轟音と一緒に足場へと落ちて、そして、

 リアは、ドームの中に囲われた。




 ……リアが、この状況に追い込まれるまで、僅か10秒。

 彼女は、大の字で寝転がりながら、自分を囲うドームを見上げている。


「……閉じ込め、られた、か」


 屈辱はなく、いっそ、冷静さを取り戻していた。

 物理ではなく心理を利用するという、余りにも不確定な作戦。科学よりも心理学嫌がらせが大好きな、小悪党が企みそうな姑息な策。

 だけどそれに、やられてしまった。


「よっしゃ、後はドームをモンスター達から守るぞ!」

「頼んだわよ怪盗!」

「今回はお前に主役を譲ってやるから!」


 透明な壁の向こうから、名も知らないプレイヤー英雄達の声が聞こえてくる中で、心の平常を取り戻したリアは、ゆっくりと時間をかけて立ち上がった。

 目の前には、スカイ達が居た。

 キューティも、ブレイズも、オーシャンも、クロスも、この、半径10メートルにも満たない狭い空間に一緒に閉じ込められている。


「私は、籠の中の、鳥か」

「ああ」

「……怪盗、スカイゴールド、仮に、私の計画を、阻んでも」


 そこでリアは、


「世界は、もう、元に、戻れない」


 事実を告げた。


「何時、自分が、洗脳されるかも、解らない、デバイスを、付けて営みを、続けられる、はずもない」

「……そうだね」

「ましてや、世界を、混乱へと、落とした、VRMMOなぞ、……ゲームという、不必要な、ただの娯楽、楽しみなど」


 はっきり言えば、そう、


「世界から、消えて、無くなる、だろう」


 ――ゲーム禁止令

 それは2089年にすら存在する悪習。

 無くたって生きていけるものを、危険性を残してまで、わざわざ続ける意味などないと言って、人々から生きる意味たかがゲームを奪う最悪。

 だけど、


「そうならないように、頑張るよ」


 スカイは言った。


「ここは、皆が――リアさんが作ってくれた」


 リアの動機が、どんな形であろうとも、

 アイズフォーアイズは、


「”かっこいい”自分を見つけてくれたゲームだから」


 くだらないからこそ、大切な物だった。


「――解った」


 そこでリアから――PVPの申請が来る。

 制限時間は無し、勝利条件は、相手のHPを0にする事。


「ならば、怪盗、私から、奪い返してみせろ」


 スカイ達は、その条件を承諾する。


「私が、君達から、奪った、世界を」


 そして、


「その手で!」


 リアの言葉と供に、レイドバトルの中での、PVPが始まった。

 ――正真正銘、世界現実の命運が決まるラストバトル

 そんな状況でも、プレイヤー達は、

 怪盗達は、

 笑っていた。

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