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6-4 水着回だよ! サマータイム小浜!

 ――8月1日午前9時


「ひゃっほー! 海―!」

「最高やねぇ!」


 小浜駅から車で30分以内にいける海水浴場はちらほらあって、その内の一つの砂浜に、ソラ達4人は降り立っていた。陽光浴びて波のまにまにを輝せる、雄大な青の海に、心は熱く燃やされる。


「やはり、海と湖は違うな」

「潮風が気持ちいいですよね」

「よっしゃ一番乗り!」

「ああリクヤずるい! うちもぉ!」


 そう言って、パラソルもたてず海へと突入するリクヤを、追っかけるウミ。ソラとレインは顔を見合わせた後、お互い笑い合い、


「こら、私達を置いてくな!」

「4人一緒で入ろうよ!」


 そう言って追いかける、そのまま二人に追いつけば、示し合わせたとおりに並んで跳ねてきららジャンプ、そのまま前のめりにざぶぅん! と入った後は、


「あはは!」

「おらおら!」

「やったな!」

「それぇ!」


 そのままわちゃわちゃに突入する。水をかけあったり、軽く沈めあったり、踊ったりついでに歌ったり、

 仲良し4人組みでの夏旅行保護者許可済み

 普段から現実と仮想問わずに遊ぶ面子であるけれど、こういう旅は初めてで、流石に否応にもテンションはあがった。ソラとレインに関しては、今夜、”告白”という大イベントがあるから、それでギクシャクが続くかと思ったが、電車の中で、うまい事それをリクヤとウミがほぐしてくれた。


「まったまった、楽しいが、一度あがろう! パラソルを立てねば!」

「確かに基地をつくんねーとな!」

「あ、せや、スイカ割りもするんやね!」

「海の家の人にセットを予約してるから、後で取りに行こう!」


 ――ちなみに4人の水着姿であるが

 他の海水浴客同様、紫外線対策バッチリのラッシュガード長袖水着である。その上で最新の技術2089年で作られた日焼け止めを塗ってるので、肌を灼かれる心配はほぼほぼ無い。

 だから無邪気に4人は、はしゃぎ、泳ぎ、遊びに遊んだ。

 サマータイムは始まったばかり。







 アイズフォーアイズのマンション社宅にて。


「ふんふんふ~ん」


 鼻歌交じりで山盛りのクロカンブッシュシュークリームタワー、それも小さいのでなく通常サイズで作られたものを、もしゃもしゃと味わいながら、片手だけで、アイズフォーアイズの業務を10個ほどこなしていた。

 ――何せ、20周年の大型アップデートが近い

 そんな時、コールがかかる。


「あら?」


 それは珍しい相手だったので、ちょっと驚きながら通信を開く。


「おはよ~ジキルちゃ~ん」

『はよ、ああ、だる、眠い……』


 相手はジキル、灰戸ライドのイマジナリーガールであるが、本人は自分こそが元祖オジルナルだと主張する。


「一人でなんて珍しいわね~? 社長は?」

『寝てるし』

「寝てるの!? へぇ、寝ててもジキルちゃんだけで動けるんだ~」

アバターが何時も以上にだるくなるけどねぇ』

「それで、なんのご用かしら~」


 そうは言いつつも、虹橋アイは、だいたい当たりを付けている。


「ブラックパールの解析は、もう残り1%! ……でも~、その1%が厄介なのよねぇ~、これさえ解ければ、もしかしたら、久透リアの居場所も~」

『――それもあるんだけどさぁ』


 ゴスロリパンク姿の少女は、


『なんか、隠してない?』


 そう、気怠そうに聞いた。

 その言葉に対してアイは――


「隠す?」


 本当に何も解ってないように、素っ頓狂に返した。


『……あー、ごめん、なんでもない』

「え、ちょ、ちょっと~気になるじゃな~い、なに、なんなの~?」

『いやいや、私の気にしすぎだし、悪かった、じゃあね』


 そのまま一方的にジキルは、通信を切ってしまった。

 ……一人残されたアイ、とりあえず、シュークリームをもう一つ食むりながら、


「私が、ジキルちゃんに隠し事……?」


 その事について考えたけど、本当に全く思い当たる事がなくて、結局再び、業務を再開した。







 ――アイズフォーアイズ社長室


「どう思った?」


 寝ている、と嘘をついた灰戸ライドは、ARで表示される自分分人に、確かめる。


『わかんない』


 それが率直な感想だった。


『まぁ一応? 私詐欺師で? 色んな潜入捜査とかして? アイとも良く仕事する訳だし? それで何か違和感を覚た訳だけどぉ?』

「俺も長い間、人という物を見てきたつもりだ、だが」


 アイとジキルのやりとりを見る限り、


「アイが何か隠す様子も、ましてや、誰かに脅されて言えない約束をしてるようにも見えない」

『まぁ、そうだよねぇ、やっぱり私の思い過ごしぃ? うわ、だるい事してごめん』

「――それなら一番いいが」


 そこで灰戸は、

 懸念を表明する。


「本人が、隠している事を、忘れている可能性もある」

『は?』


 灰戸の言葉に素の反応を見せるが、すぐ、


『あ、あー、そゆこと? うげ、いやそんなの言われても』

「ああ、仮にそうだった場合、俺達に出来る事は少ない、だが」

『わかった、注意するし』


 ジキルは、言った。


『友達悲しむぴえんのが、一番だるいし』


 やる気の無い彼女だがやる気が無いなりに、

 アイズフォーアイズを、皆が笑顔で楽しむ世界ゲームを、

 今も守ってくれる彼女を、大切にしていた。







 ――場所は戻って海水浴場のお昼前


「二人とも、そろそろ行こうよ」

「パラソルはもう片付けてるぞ」


 スイカ割も終え、ビーチバレーもして、リクヤを砂に埋めてよみふぃの体にして、とウミで出来る事をあらかたやった4人であったが、


「もうちょっと、もうちょっとだけ!」

「ほうよ、海なんて次いつ来られるかわからへんよ!」


 そう言ってリクヤとウミは、なかなか海から出てこようとしなかった。跳んで跳ねてその様を写真撮影してと、ともかく、無駄にはしゃぎまくってる。


「本当に元気ですね、二人とも」

「いや、一番凄いの体力お化けはお前だからな、なんだあのマグロみたいな泳ぎ」

「あはは……」


 レインの言葉に、苦笑するソラ、その時、


「えっと、だ」


 突然レインが、すすっとソラの正面に立った。


「レインさん?」


 疑問に思っている内に、レインは、ラッシュガードの中央一番上にあるチャックをもって、

 それを一気に下ろしはじめた。


「え、へっ!?」


 砂浜の上の脱衣行為、当然顔を真っ赤にして慌てるソラだったけど、

 ――現れたのは裸じゃないけれど


「マ、マドランナに選んでもらったが、見せるタイミングが掴めなくて」


 レインの豊かな体を包むのは、かなり大胆に責めたピンクとホワイトのマーブルカラーの水着――胸の谷間もあざとくない程度で、そして、揺れる。


「え、え、あの」


 突然飛び出してきた秘密兵器セクシービームに、カチコチに固まってしまうソラだけど、


「ど、どうだろうか!」


 恥ずかしそうに感想を、せつないまでに必死に聞いてくるものだから、ソラは、


「す、凄いです」


 もう、キレイとかカワイイとか、そんな言葉選びをする余裕も無く、言ってしまった。

 ……5秒ほど、沈黙が流れたが、


「ズルい」

「え?」

「ソ、ソラも見せろ、脱げ!」

「ええ!?」


 ここでまさかの要求、いや、世の中ギブアンドテイク、相手が脱いだらこっちが脱がぬのは不作法というものかもしれず、だけど、


「あの、僕、この下は別に何もつけてなくて」

「いや寧ろそういうのが、じゃ、じゃなくて! それでもいいから!」


 もう凄い勢いで言われたものだから、ソラ、慌ててラッシュガードのチャックを下ろす。そして、


「こ、こんなんですけど」


 別に何もつけている訳ではない、少年特有の、ただの素肌を晒して見せた。

 なだらかな胸とおなか、無駄な毛なんて一つもない奇跡のボディ、それを見られて、恥ずかしがる様子、

 ――それを前にしたレインは


「好きっ!」

「レインさん!?」


 なんだか色々溢れちゃってリビドーやらパッションやら、今夜するはずだった告白を、うっかり、先行してしまった。その過ちに気付き、慌てて修正する。


「ち、違うのだ今の好きは!? いや違わなくはないけれど、その、破壊力が凄くて!」

「は、破壊力ってなんですか!? あとなんですかその手をわきわきしてるの!」

「――ハグしたい」

「こ、ここではやめてくださーい!」


 そんな感じで、ラッシュガードを羽織っただけの状態で向かい合って騒ぐ二人を見て、


「何してるんだあいつら」

「止めにいかんとあかんよねぇ」


 真夏のテンションもクールダウンしたリクヤとウミは、仕方無く、海からあがるのだった。

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