五月の十五日からの、梅雨のどんよりとした
俺たちいつもの三人は妖怪退治のために、
なんでも、深夜にこの蔵の中に入った人間が立て続けに変死したらしい。何かいるのかと昼間に色々調べてみてもわからず、妖怪変化の
俺の近くにいる、狐火を一対の
「一応、夜にはこの蔵に近づく奴がいないように商家に言っているからさ。この辺りではどんだけ暴れてもかまわないよ」
俺は応える。
「はい、とはいっても、こんな深夜ならば歩いてる人は見当たりませんけどね」
俺は蔵の入り口の前で、周りを見渡す。
この江戸時代において運河とは、物品の大量輸送を可能にする二十一世紀における
舟から荷物を揚げ降ろしするための、石でできた急勾配の階段の下には黒い水面が波打っていて、杭に縄で繋がれた小舟が
俺と手を繋いでいるおあきちゃんが、口を開く。
「すず姉ぇ、亡くなった人ってどんな風になってたの?」
すると、すずさんが応える。
「蔵からちょっと出た辺りで倒れてたらしいねぇ。しかも、体のどこかに小さな
俺はその言葉に、妖怪の正体を考える。
「小さな牙ですか? じゃあ、獣ですかね?
「それはわかんないけどねぇ、まあ、お調べしてみようじゃないのさ」
すずさんはそう言うと、巫女装束の
俺はすずさんに声をかける。
「すずさん? 影を通り抜ければ鍵は外さなくていいんじゃないですか?」
その言葉に、すずさんは鍵を錠前に差し込む前にぴたっと手を止める。
「いや、あたいだけじゃなくてりょうぞうとおあきがいるからさ。中に入って危なくなって、逃げ口がないとなると困るだろさ?」
――ああ、そうか。
俺が納得すると同時にすずさんは錠前に鍵を入れて回す。すると、金属でできた和錠のロックがかちゃりと音を立てて外れた。
錠の門戸を固定する金属部分、いわゆる
すずさんは、脇に浮かせている狐火を二つに割り、その片方を入り口を通して蔵の中に移動させる。
蔵の中の
すずさんは、蔵の中の空間に狐火を浮かばせながら、注意深く速やかに蔵の中に入る。
俺も、手を握っているおあきちゃんに
「すずさん、妖怪の気配は感じますか?」
すると、すずさんは俺の頭の後ろで応える。
「ああ、感じるねぇ。どこにいるかはわかんないけどさ、間違いなく
蔵の中には、運河から運んできたのであろう荷物である木綿糸の束が沢山積まれている。そして、入り口近くには二階に上がるための木でできた階段状の立て板がある。
すずさんが、口を開く。
「気配の主は、どうやら上にいるようだねぇ。りょうぞう、あたいが上に登るから、現れたらその小さな鉄砲で撃ちな」
俺はその言葉に「はい」と言って
すずさんが立て板の段差に足をかけて一歩一歩登っていく。俺は、いつ二階から妖怪が飛び出してもすぐさまバックアップできるように、銃口を階段の上の方に向ける。
そして、すずさんが段差の一番上まで登った次の瞬間だった。
「ちぃっ! いたよ!」
すずさんの叫び声とともに、俺は意識を集中させる。蔵の中の闇の天井を、しゅるしゅると素早く這い回る影が視界に入った。
それは、赤い小さな蛇であった。蛇と言っても通常の蛇ではなくて、トカゲのように四本の脚がついていて、ヤモリのように天井を這い回っていた。
「今行きます!」
俺はそう叫び、すずさんに続いて階段に手を掛けて上に登ろうとする。
すると、すずさんが叫ぶ。
「りょうぞう! 上だよ!」
――え。
俺が上を見ると、体長四寸[約12センチメートル]ほどの脚の生えた小さな蛇が、俺の顔の上に落ちてきた。
「うわっ!!」
俺は焦って、銃を持っていない左手で、その蛇を払おうとした。
かぷり。
蛇が、俺の左手指先をかぷりと噛んだ。
「りょうぞう!」
すずさんが叫ぶと同時に俺は身を反らし、階段から一階に飛び降りる。蛇は素早く俺の体から這い逃げて、そそくさとどこかに隠れてしまった。
――逃がすか。
俺がそう思い足を踏み出そうとした寸前にすずさんが叫ぶ。
「歩くな! 歩いたら死ぬよ!」
すずさんの叫び声を聞いて、俺は足を止める。
俺は、すずさんに大声で問いかける。
「どういうことですか!?」
「こいつは
その言葉を聞いて、俺は青ざめた。階段から飛び降りたときに両足を地面についたから、もう二歩歩いてしまったことになる。
――つまり、あと五歩歩いたら死ぬということだ。
二階にいるすずさんが、俺の方に向かって飛び降りる。
身を跳躍させ、すずさんは二階の部分から土間の一階部分に飛び降り、
そこには、あの
そして
すずさんが、俺の傍で叫ぶ。
「なるほどねぇ!
すずさんはそう叫ぶと、手を蛇に向かって掲げ、中空に炎を浮かばせた。
「焼き尽くしてやるよ!」
すずさんがそう叫ぶも、俺たちの目の前に浮いていた炎は、あっという間に掻き消えてしまった。
そして
シュッ シュッ シュッ!
氷の粒が散弾のように俺たちに向かってくる。死ぬほどではないが、
俺は、あの
全身に何百もの小さな氷の粒をぶつけられた俺は、隣にいるすずさんが氷の粒を腕でガードしながら、目を
その瞬間だった。
「りょうぞう!」
すずさんが叫んで、俺の足元の蛇を薙ごうと小刀を振るう。
蛇は、その瞬間を見逃さなかった。小刀を薙ぐために下方に腕を下ろしたすずさんの斬撃をするりとかわし、小刀の上を素早く這う。そして、小刀の上を這って手元に近寄った
「ちぃっ!」
すずさんが叫ぶ。
蛇はまたもや素早くするりと逃げ、蔵の中の荷物の影に隠れてしまった。
俺はすぐ隣にいるすずさんに問いかける。
「すずさん! 二度噛まれたらどうなるんですか!?」
「
つまり、あの蛇の毒は妖術としての
すずさんもその毒蛇に噛まれてしまい、あと
闇の中に浮かび上がる入り口の方を見て、すずさんが声を出す。
「りょうぞう! あたいの影の中に入れ! あたいが三歩か四歩で外まで連れてってやるからさ!」
すずさんがそう提案するも、俺は首を縦に振れなかった。
「すずさん! あの入り口近くの闇の中には蛇が隠れているような気がします! その案には乗れません!」
出入り口からは、外の満月の光が蔵の中に差し込んでいるが、その周りにある暗闇の中に蛇がいるような気がした。
俺たちが外に出ようと決死の覚悟で出ようとしたところを、もう一度かぷりと噛むくらいのことは考えていそうだ。
「じゃあ、どうすんのさ!? 横の壁から外に出たら蔵と蔵の隙間だから身動きが取れないよ!?」
「俺の荷を影の中から出してください! いいものがあります!」
すずさんにスポーツバッグを影の中から出してもらった俺は、足を動かさないよう注意しつつ荷物をまさぐる。
――あった。
俺が手に取ったのは、ワンタッチで開く折り畳み傘であった。俺が折り畳み傘のボタンを押すと、傘はばさりと開いた。
「この傘の影の中に入って出ればいいんですよ!」
すると、すずさんが承服しかねた顔で返す。
「で、その傘の中にあたいたちが入ったとしたら、誰が外まで持ってくんだい!?」
「それも考えてありますよ! この蔵の中にある木綿糸を使うんです!」
俺はすずさんに、毒蛇の潜む暗がりの蔵から脱出する算段を伝えた。
すずさんは、
矢を射る先はもちろん、満月の光が漏れている出入り口である。入り口近くの闇の中に蛇が隠れていようが、矢のスピードには追いつけまい。
シュッ!
すずさんの射った矢が、風切り音を立てて蔵の中を飛び出し、地面に刺さる。
すると次の瞬間には地面に刺さっていた矢は、忠弘の姿になった。あの矢は、おあきちゃんに化けてもらったものであった。
今、蔵の外にいるおあきちゃん扮する忠弘は、長い木綿糸の先を手元に持っている。この木綿糸は矢に結んでおいたものであった。外から蔵の中に長く伸びる木綿糸の先は、折り畳み傘の先っぽの部分に結わえている。
俺は叫ぶ。
「すずさん! 傘の中の影に潜みましょう!」
「あいよ!」
すずさんが威勢の良い声を出して、俺の手を掴み、自分の体ごと俺の体を折り畳み傘の中に沈みこませる。
シュシュシュシュ!
毒蛇が這いよってくる声が聞こえてきた。俺はすかさず影の中から手を伸ばし、折り畳み傘を閉める。
「おあきちゃん! 引っ張って!」
闇からにじり寄った小さな蛇の影は、俺たちがいたところを這い回り、
すかさず、俺とすずさんは蔵の外にて、満月の月明かりの下に現れる。近くには転がった折り畳み傘と、おあきちゃんが化けた忠弘がいる。俺は忠弘の手を取る。
「おあきちゃん! 刀に化けて!」
すると瞬時に忠弘の姿が日本刀に化けて、俺の手に握られる。
すずさんも、俺の隣にて
忘れてはいけないのは、俺もすずさんも
俺は既に影から出てきたときに二歩歩いてしまったので、合わせて四歩歩いた。つまり、あと三歩で死ぬ。
すずさんは俺と同じく影から出たときに二歩地面を踏みしめたので、あと五歩で死ぬ。
すずさんが叫ぶ。
「
その言葉に、俺は足を移さないよう注意しつつ日本刀を構える。
今、蔵の中から
満月の白い明かりに照らされたその小さな蛇は、炎が全身で燃え盛っているかのようにおどろどろしく赤かった。有毒動物は身を守るために己の身を派手な警戒色にすることがよくあるとは聞いたことがあるが、まさにそれを体現しているような妖怪であった。
そして
「シャァァァァァァァ!!」
蛇が大口を開けて叫ぶと同時に、
俺は、その攻撃は予想していたので、足元にあった開いたままの折り畳み傘を拾い上げ、蛇に向かって突き出して防いだ。
氷の散弾が絶え間なくナイロン製の生地に当たる音が聞こえる。
しばらくすると、
――今だ!
俺はそう思うと傘を折り畳み、蛇に向かって思いっきりぶん投げた。
折り畳み傘は、蛇のすぐ近くに落ちた。蛇は俺の狙いがわからず、余裕の面持ちで先の割れた赤い舌をチロチロさせている。
がしり。
傘の影から出てきた妖孤の手が、
――やったか!?
俺がそう思ったところ、尻尾を捕まれた
――危ない!
俺は、すずさんの腕が生えている折り畳み傘に結わえられた木綿糸を咄嗟に引っ張って、手元に引き寄せる。
折り畳み傘は宙を舞っている最中に、伸びた手が開閉ボタンを押し、ばさりと音を立てて広がった。
すずさんは、宙を舞う折り畳み傘の影の中からふわりと舞い降り、両足で地面に降り立った。
すずさんが噛まれてから合計四歩歩いた、つまりあと三歩で死んでしまうということだ。
俺は隣に降り立ったすずさんに問いかける。
「すずさん! 何で掴んだときに炎で殺さなかったんですか!?」
するとすずさんが俺に、蛇を掴んだほうである左掌を見せた。すずさんの手の平は、まるで南極で遭難した探検隊の皮膚のようにどす黒く変色していた。
「
俺が驚きの声を上げると、すずさんが冷や汗をかきながら俺に伝える。
「
すずさんがそこまで言うと、すぐさま日本刀がおあきちゃんの姿に戻る。そしてすずさんの凍傷を治すと、日本刀に戻って俺の手に握られる。
俺は、どうすればいいのか策を考える。
すずさんが宙に炎を浮かばせても、蛇はその部分を冷たくして炎を消してしまう。
だからといって蛇の体を掴めば、こちら側の体を直接凍らせてしまう。そして、近づいて刀や薙刀で切りつけようとすると素早く武器の上を這い寄ってこちらの手を噛んでしまう。
俺がそんな事を考えて頭を働かせていると、すずさんが叫ぶ。
「ああいうのはね、水の中に誘い込めばいいのさ! 水の中で身を冷たくしたら凍っちまって身動きが取れなくなるからねぇ!」
その言葉に、俺は後ろを振り返る。
――段差の下には運河の水面が波うっており、あの中に蛇を誘い込めば良い訳だ。
――しかし、
そう思った俺は、蛇に向かって視線を移す。
その時、俺の頭の中にアイディアが閃いた。あの蛇は、俺たちがあと数歩歩けば死ぬことを知っているのだ。と、いうことは俺たちが七歩歩いて死んだ後ならば、あの蛇は俺たちの傍に寄って死んだのを確認しに来るはず。
俺はあと三歩歩いたら死ぬ、それは
俺は、すずさんに顔を向ける。
「すずさん! 俺を
俺が叫ぶと、すずさんが大声で返す。
「泳ぐつもりかい!? 泳いだらますます蛇を捕まえるのは難しくなるよ!?」
「詳しくは言えません! でもお願いします!」
俺の願いをすずさんは聞き入れてくれたようで、その手で俺の刀を握っていない方の手首をしかと握り締めた。
「わかったよ! 信じてみようじゃないのさ!」
すずさんはそう叫ぶと、俺の手を取ってぶん回し、運河の方へ俺の体をぶん投げてしまった。
宙を舞った俺の体は、おあきちゃんの化けた日本刀と共に運河の水面に吸い込まれていく。
そして次の瞬間には、すずさんがその巫女服の袴の下にある脚を大きく広げて、一歩、二歩、と運河に向かって駆ける。そして死ぬはずの三歩目で、段差から暗い水面へと飛び降りた。
俺は、あの猛毒を持った
◇
せっかく人のいる里で安楽に過ごせる
先ほどから自分に襲い掛かっている妖孤二匹と人一匹も、さっさと片付けてしまうつもりであった。
人の子が妖孤にぶん投げられて河の中に落ちていって、妖孤も後を追うように河に飛び込んでしまった。逃げたのかと一瞬考えたが、どっちみち毒が回ってすぐにでもくたばるはずであった。
しかしおかしい、妖孤二匹の気配は消えていない。待てど待てどその向こうにある段差には妖孤の気配が消えない。
さては、息を殺して待っているのだな。もう一度噛んで殺してやろう。
そう思った
首を運河の段差の先に出し、ほの暗い水面を見る。すると、神職の白衣袴を着た人の子が、小舟の繋がれた杭につかまって水に浸かっていた。
今にも死にそうではないか。よし、飛びかかってもう
そう
何だこれは!?
白く光る金物の棒の先に、己を捕まえる
そう
◇
すずさんにぶん投げられて宙を舞った俺は、手に握り締めていたおあきちゃんの化けた刀に叫んだ。
「俺の思ったものに化けて!」
そう叫んだところ、俺が運河の水面に接する寸前に、おあきちゃんは駆動エンジンがついた小舟に化けてくれた。
二十一世紀では、モーターボートと呼ばれるその舟の
これで二歩、合計六歩歩いた。もう一歩も歩けない。でも、それでもいいのである。
俺はそのまま、モーターボートの後ろに付いている舵を切り、蛇から見えない川岸の影に隠れた。
タッ タッ
すずさんの足音がこちらに向かってくるのが聞こえる。俺はエンジンを駆動させ、すずさんを受け止める格好になる位置に舟を移動させる。
バッ!
今、すずさんが飛び降りた。すずさんは俺が乗るモーターボートに向かって放物曲線を描いて降下する。
そして、俺がすずさんの胴体をしかと抱きしめる。ボートは大きく揺れて、大人の女性の髪の香りが俺の鼻をつく。
俺は、声を出さずに石組みの河岸の影を指差す。すずさんに、その河岸の石組みの影の中に入って欲しいということを伝えるためだ。
俺が舵をきってモーターボートのスクリューを回し、川岸の影につける。あの猛毒を持った
すずさんが、足をつかないように注意しつつ、河岸の段差の影に己の腕と体そのものをずぶりと沈み込ませる。
そして、俺はすずさんに小声でこう告げた。
「おあきちゃんに、蛇を捕まえる未来の道具に化けてもらいます。おあきちゃん、化けなおして」
俺がそう言うとモーターボートはその場から消え、ばしゃりと音を立てて俺の体が水面に落ちる。その代わりに俺の手には、長さ3メートルを超えるアルミニウム製のヘビ捕獲棒が握られていた。
川の中に入った俺は近くにあった杭で体を支える。そして、片足が水底につかないように注意しつつ仰向けに水に浮かぶ。胸から下は深夜の冷たい水にすっかり浸かってしまうが、いたしかたない。
ヘビ捕獲棒を手に持ったすずさんは、手元のグリップを何度も握り、先っちょにあるヘビバサミの開閉を繰り返している。
そして、すずさんが自分自身の口元に指先をあて、上を見上げた。
すずさんは河岸の石段の影の中に入り、蛇がやってくるのを待っている。俺は杭で体を支えつつ、冷たい夜の水にちゃぷちゃぷと浸かっている。
今あの赤い体をした
ヘビ捕獲棒にて素早く
妖怪を水に叩き付けたときのすずさんの表情は、とても嬉しそうに笑っていた。
四本の脚が生えた赤い蛇の体が水面に叩きつけられると、その妖怪は暴れる間もなく凍りついた。
ばしゃばしゃと水音を立てる間もなく、周囲の水がぴきぴきという音と共に凍っていく。そして、その
すずさんは、その好機を見逃さなかった。
手元のグリップがあるヘビ捕獲棒を白衣の
「
すずさんは、その言葉と共ににたりと笑った。
すずさんの左手から出た炎が
「調伏、終わりだね」
すずさんがそう言ったところ、体の下半分を運河に浸からせている俺は、くしゅん! とクシャミをしてしまった。
すずさんが、俺に話しかける。
「いやぁ、りょうぞう。今回もご苦労だったねぇ。
すずさんが俺の方に向かって手を伸ばすので、俺はその手を取る。
「気にしないでください。今回も誰も死ななくてよかったです」
俺が返事をすると、すずさんがこんなことを言った。
「そう言ってくれるのは嬉しいけどさ。あたいらもそろそろ、
そう言うすずさんの微笑みは、俺にはとても魅力的に思えた。
――違う、この人は違うんだ。
俺の心の中の葛藤など気にもせずに、すずさんは笑っていた。
そして俺の心の中に、初恋のお姉さんが俺に見せてくれた笑顔が浮かぶ。
子供の頃からずっとずっと、どうしてもわからなかった疑問が再び沸き起こる。
――あのお姉さんは、何故あんなにも嬉しそうな笑顔を見せてくれたんだ?
五月の空の満月は、恥ずかしそうにしきりに雲に隠れていた。風の強い水面波立つ夜のことであった。