前回のあらすじ:
「私が今回の騒動の鍵を…?」
「ええ、その通りです!」
ううん…にわかには信じられないが…
「…その、適当言ってるとかじゃないですよね?」
「そんな訳無いじゃないの!この世界の創造主が言ってるんだから多分間違いは無いわよ!」
「は、はあ…」
そこは多分じゃなくて断言して欲しいところなんだけど…!
「…で、その心は?」
「うーんと………勘?」
「勘」
「あっ!そ、そんな渋い顔しないでよぉ、これでもちゃんと考えて発言してるんだから!」
「はぁ…そうですか………」
「けどほら、こういうのは答えを言っちゃったら面白くないじゃない?」
「はぁ…」
この女神様、思いつきで全部喋ってるんじゃないだろうな?
「ま、それに…うん、そうね、理の外の存在の貴方ならきっと大丈夫よ」
「はぁ………そうですか」
「大丈夫、世界の創造主が言うんだから間違いないって!多分!」
2回言った、この人2回言ったよ!
「それにまあ…仮に貴方が勝てなくても、それはそれ、それがこの世界の辿る運命ってだけだから」
「あれ?なんかめちゃめちゃ達観してます?」
「達観っていうか…私にはどうしようもないし?この世界の事は、この世界に住む人達が決めるべきだし?」
「は、はぁ…」
「ま、けど、どっちに傾くか分からないなら…ちょっとぐらいは良い方に傾いて欲しいっていう親心みたいなものよ!」
「そうですか…」
うーん、なんか凄く軽い雑なノリで世界の命運を託されてしまった気がするが…
というか、これだけ分かっているなら自分が直接介入すればいいのでは?この人
「…その、聞いてて思ったんですけど、何かこう…自分が介入出来ない理由とかあるんですか?」
「世界が滅んでもいいなら介入出来るわよ?」
えっなにそれは、急に怖いこと言い出すじゃんこの人。
「えっ、滅…」
「強すぎる力はね、制御できないのよ。別に私が介入してもいいのだけれど…その場合、世界は間違いなく滅ぶと言っていいわね」
「女神様実は破壊神だったりします?」
「もう!失礼しちゃうわね!まあでも創造と破壊しか出来ないのはそうなのよね~」
この人本当ヤバいことを軽いノリでさくっと言うな…
「ま、それにさっきも言ったように、この世界の事はこの世界に住む人達でなんとかして欲しいしね!」
「は、はあ…」
「ともかく!君なら…いや、君たちならなんとかなるなる!ならなくてもその時はその時!」
「…まあ、ありがとうございます」
うーん、かつてこれ程までにやる気が出ない、自信が持てない鼓舞があっただろうか。
まあ、とは言え、自分の生活を守るためにもやる、以外の選択肢は無いのだが。
「まあ…ご期待に添えるかどうかは分かりませんが、まあやるだけやってみますよ」
「ええ、頑張って下さい、ニエリカさん。…あ、そうだ、もし何かあったらいつでも来て下さいね、入口は普段は入れないんですけど、貴方達なら入れるようにしておきますので」
「ええ、そうさせてもらいます」
そうして、私達は女神様に別れを告げ、デバッグルームから立ち去る。
ちなみに私達が入ってきた入口はやはりというかなんというか、本来は入口ではない場所だったようで、女神様がちゃんとした出入口から外まで案内してくれた。
「いや、しかし…郊外にある忘れ去られた遺跡があんな場所に繋がっているとは思いもしませんでしたね」
『ええ…てっきりあの場所はただの廃墟なのかと…』
そう、王国郊外にある「忘れ去られた遺跡」と言う名のスポット、本来であれば何も無い場所なのだが…世界中に散らばるアイテムを集めて訪れるとデバッグルームへの扉が開く、という場所なのだ…本来であれば。
まあ今回はその手順を全てすっ飛ばして裏道…というかバグ道から潜入してしまった訳だが。
とは言え、そのお陰で女神様とやらに色々と話しを聞くことも出来た、怪我の功名とでも言うべきか、あるいは女神様流に言うならば…これも一つの運命なのだろう。
「しかし…改めて大変なことに巻き込まれちゃったわね」
「ニエリカ様にお仕えして大変じゃなかった日はありませんね」
「う………」
『まあいいじゃないですか~、悪い王妃様をぶっ飛ばす!実にシンプルです!』
うーん、そこまでシンプルでも無いんだが…まあ、認識としてはそう考えてもらってもいいだろう、多分。
幸いにして、既に追手はもう居なかったようで、私達は安全に王国までの道中を進むことが出来た。
緑豊かな草原を進み、遠くからでも桜が咲いているのが見え………
…桜?
私達が王城に突入した時期は、桜の季節はもうとっくに過ぎ去っていたはず………
…その違和感の正体は、城下町に近づいた時に分かることとなる。
『あ、そろそろ見えてきましたよ、王城』
「…今更だけども、また正面突破ってのも中々よね」
「とは言え、それ以外に作戦も無いんでしょう?なら良いじゃないですか」
『それに衛兵ぐらいなら私達2人で制圧できますし…』
うん、相変わらず規格外なんだよな。
そんな事を思いつつ、城下町の入口付近までやってくるが…どうも様子が騒がしい。
まあ指名手配犯がのこのこ戻ってきたとあればそうもなろうか…と思っていたのだが、どうやら違うらしい。
何故ならば、次に衛兵が放った言葉は、予想外のものだったからだ。
「きょ、巨人だ!巨人が攻めてきたぞ!」
「皆守りを固めろ!巨人に街を滅ぼされるぞ!」
『………えっ?』
あれだけの事をしでかしたのだから、私達の手配書が既に出回っているはず…
にも関わらず「指名手配犯が現れた」ではなく「巨人が現れた」…まるで、ここの衛兵の誰もママリアの事を知らないような反応ではないか。
これではまるで…「私達という存在が世界から消えた」ような…
そうして、私達の不安は…現実のものとなって降りかかるのだった。