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第26話『国からの逃亡、ママリアの覚悟』

前回のあらすじ:ニエリカ、モブーナ、ママリア、国家反逆罪


私達が王城から逃げ出して数時間…

ママリアの歩幅なら余裕で逃げ切れる…と思っていたのだが。


「ど、ドラゴン…!?空挺兵まで駆り出して捕まえようって、どれだけ本気なのよ!?」

『大丈夫です!絶対に逃げ切ってみせますから!絶対に…!』


女の子3人を捕まえるには非常に仰々しい捜査網が張られ、私達は未だに追手を振り切れずにいた。


「けど、このままじゃ…」

「ええ…それに、もう一つ悪いことがあります」

「…それは…?」

『この先は断崖絶壁で道が細い…でしょう?』

「ええ、それこそママリアが通るにはギリギリの…ね」


彼女達の言う通り、ここから見える範囲でも、この先の道はママリアにとっては非常に細く険しい道になっていた。

そして、そこから落ちてしまったら…それこそただでは済まない、というのも見て取れた。


「…ママリア、もしアレなら別の道でも」

『いえ、どこも網が張られていますし、今更別の道は行けません。大丈夫です、私を信じて下さい!』

「………分かったわ」


実際、この先へ安全に向かうにはこの道しかない…というのも事実であった。

そうして、私はママリアに全てを託す事にしたのだ。


しかし…やはり、一筋縄では行かないようで。


『くっ…やっぱりこの道は…ギリギリ…』


足を踏み外さない為には必然的に速度が落ちてしまう。

そして、速度が落ちるということはそれ即ち…追手に追いつかれるということである。


「お前達は完全に包囲されている!今すぐ投降しなさい!」

「これは…万事休す…かしら」

『………』


ママリアの顔を見れば、いつになく神妙な面持ちをしていた。


『ニエリカ様、モブーナさん、私、2人と友達になれて本当に嬉しかったです』

「ちょ、ママリア?急に何を…」

『だから、お二人の事は私が絶対に守ります。しっかり捕まっていて下さいね』

「ちょっと、何を…!?」


ママリアは私達をしっかりと抱きしめ…そのまま、谷底へと飛び降りた。


『これは一か八かの賭けです!けど、お二人は私の体がクッションになって助かるはず…!』

「ママリア!何でこんな事…」

『…何となく気づいていたんです、この世界での役割の事。けど、そんなものに縛られない生き方を、お二人には教えて頂きました。だからこれは恩返しです』

「だからってそんな…自分を犠牲になんて…!」

『それに…私の本来の役割を果たす人は、もう既に居るみたいですしね』

「ママリア…」

『…と、話をする時間ももう無いかもしれません。2人とも衝撃に備えて!』

「待って、ママリ…」


私がその言葉を最後まで言い切る前に、ママリアが私達をいっそう強く抱きしめる。

…見れば、目の前には巨大な岩肌、ぶつかればただでは済まないだろう。

私はこの後に起こる出来事を覚悟し、目を瞑り………


………しかして、起こるはずの衝撃は一向に起こらなかった。


「………あ、あら?」


恐る恐る目を開ければ…目に入ったのは2つの山脈…否、ママリアの豊満な胸部であった。

ということは、やはり彼女が言っていたようにママリアがクッションになったのだろうか?

…にしては衝撃が少なすぎたと感じる。

そんな事を考えていると、何事もなかったかのようにママリアも目を覚ますだろう。


『う、うーん…あれ?意外と大丈夫でしたね!』

「意外と大丈夫でしたねって…貴女、私がどれだけ不安だったか…!」

『あ、あはは…ごめんなさい…けど、とりあえず無事だったんだから良いじゃないですか!』

「そ、そういう問題では…」


私はより一層強くママリアに抱きしめられる。

…きっと彼女も不安だったんだろう、それが一安心した、と言ったところか。


「ぐえっ!ママリア、ちょ、痛い痛い…!」

『ニエリカ様!大好きですよ~!』

「いちゃついている所失礼します、少し回りを見てきたのですが…どうもここは、先程の場所とは全く別の場所かもしれません。それとニエリカ様のことが一番好きなのは私ですので」


ママリアからのスキンシップを受けていると、急に声をかけられる。


「モブーナ!貴女も無事だったのね!」

「ええ、一足先に目覚めたので、辺りの偵察と安全確認をさせて頂きました」

「…ありがとうモブーナ、いつも頼りになるわ」

「お褒めに預かり光栄です。では、僭越ながら私もハグを」


モブーナからのハグ要求を、私は無言で抱きとめる。

そうだ、彼女だって私のことをずっと支えてきてくれたんだ………うん、始まりは私のせいだったような気もするが。

兎にも角にも、私はとても良い友人たちに恵まれたのだと思う。

ええ、本当に………

……………


「………あの、2人ともそろそろ…」

「後10分…いえ、後1時間ほどこうしていましょう」

『あ、それ名案ですね!いつまでも私の胸を借りていいですよ?』

「いや、良くないから!2人とも安心したのは分かったけど、問題は何も解決していないのよ!?」

「まあ………それはそうですが」


私がツッコむと、2人は渋々といった様子で私のことを解放してくれた。


「それで…ここが何処か分からないって話だったかしら?」

「はい、少なくとも谷底、と言う訳では無さそうです。そもそも屋根がありますし、回りに岩肌が一切見えません。それと、魔物の気配も無いようです。…私達以外の人の気配もありませんが」


モブーナに言われ、辺りを見渡す。

大理石のような素材で作られた床に、神殿のような柱、この世界での最先端の技術…あるいは失われた技術で作られているような白一色に彩られたその空間は、神秘的な雰囲気を感じさせた。

背後には出口は無く…目の前には扉が一つ。

…私は、この場所に一つ心当たりがあった。


「…行きましょう、きっとあの扉の先に答えがあるわ」

「ニエリカ様…?何か心当たりが…?」

「…ええ、そうね」

『ニエリカ様がそう言うのであれば、きっと安心ですね』


私達は意を決し、正面の扉を開ける。

そこには………ありとあらゆる書物、資料、その他諸々が収められた空間が広がっていた。


「やっぱり…ここは………デバッグルーム……!!!」


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