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第25話『王妃様との対話、そして…』

前回のあらすじ:ニエリカ、前科一犯


王妃様に捕らえられて後…

私は衛兵に引きずられ、改めて王妃様に謁見していた。

…勿論、罪人としてだが。


「さて…ニエリカ・キュービックよ、王城に無断で潜入し、あまつさえ国家機密を暴こうとするとは、中々大胆不敵ではないか」

(…事実なので何の言い逃れも出来ない…!)

「まあ、こやつには余罪もある故に情状酌量の余地は無いのだが…せめてもの慈悲として、話ぐらいは聞いてやろう」


…余罪?

待て、今王妃様は余罪と言ったか?


「ちょ、ちょっと待ってください、余罪って…」

「自覚無し、か…実に悪質だな。我が息子を誑かした罪、忘れたとは言わせんぞ?」

「息子…そんな!?マーロイ様の件については私は…!」

「何を勘違いしている?私が言っているのはマーロイの事ではない」

「え………」


…マーロイ様の事じゃない?

いやしかし、息子と言っても他の王子…攻略対象とは未だに接触もしていないはずなのだが…

では王妃様の言う息子とは一体…?


「貴様が禁じられたバグ技を使い、私の息子である『この世界』を破壊しようとしていたのは既に私の耳にも入っていると言ったのだ」

「な………!?」


今王妃様…この世界そのものの事を『息子』って言ったか!?

それにバグ技って…


「全く…貴様というイレギュラーが自らの意思でバグ技を発動し、あまつさえ本来のゲームの流れを破壊しようなど…」

「そ、そんな…私は…」

「…ふぅ、確かに認めよう、当時発売されたディアストはバグのせいで散々な評価だった。だがそれはどれもこれもヘボ技量のプログラマーのせいなのだ、プログラマーのせいで私の子供は正当な評価をされなかった!」


…この人は…一体何を言って…?


「だが私は運良く2度目のチャンスを掴んだのだ。この世界での出来事を元に…私はディアスとを再構成…リメイクするつもりだったのだ」

「り、リメイク…?」

「だがあろうことか貴様というイレギュラーは元のディアストのシナリオの流れを破壊し、あろうことか主人公の立ち位置にまで立っていたというではないか」

(主人公の立ち位置に居たのは意図してのことではないんですが…!)

「私の作った世界…ディアストリメイクの為の世界は『正しい流れの世界』でなければならない…そうは思わんか?」

「わ、私…は…」

「まあ貴様の意見など端から聞くつもりは無いがな。全く…原作のバグがそのままでただでさえ頭が痛いのに、あろうことか貴様のような存在まで現れるとは…想定外にも程がある…」


王妃様はそう言うと、そのまま近くに控えていた衛兵の剣を引き抜く。


「まあ、それも今日で終わりだ。貴様というイレギュラーをここで消し、改めて『正しい世界』を1からやり直すだけだ。うむ、実に簡単だな…」

「…なっ!?そ、そんな!?」

「ではさらばだ、ニエリカ・キュービック」


そうして引き抜かれた剣が私の首を切り落とそうと振り下ろされる。

嗚呼、私の人生、これで終わりか………

………そう思った時だった。


「ニエリカ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


…レールガンのように射出されてきたモブーナが、この王城に突っ込んできた。


「…も、モブーナ!?何で…」

「ニエリカ様の危機を感じ取りましたので、救助に参りました。さあ、早くここから脱出しましょう」

「モブーナ…!」


ああ、今日ほどモブーナを頼もしいと思ったことはない。

なんで私の状況が分かったのかとかツッコみたい所は無くはないが…今は置いておこう。


「フン…たった1人で何が出来るというのだ」

「1人?誰が1人と言いましたか?」

「何…?」


次の瞬間、なにか巨大な物がぶつかったかのように、王城の壁と天井が崩壊する。

まあ、実際に巨大な物がぶつかっていたからなのだが…

そう、そこから姿を表したのは…


『ニエリカ様を虐めるのは…貴方達ですか~?』

「ママリア…!」


まるでどこかの進撃する巨人のような登場の仕方だが、彼女は味方、これ以上頼もしい存在は無い。


「失われ消えるはずの存在か…!世界に反逆しようなどと…!」

『その不遜な言い方…!私達は駒ではありません!』

「黙れ!ゲームのキャラ如きが意思を持ち、創造主に反逆するなど…あって良いはずがない!衛兵!この大罪人共をひっ捕らえよ!」


王妃様の号令の下、衛兵達がこちらを包囲する。

が、当然ながらこの2人を衛兵程度でどうにかできるものでもなく…


「申し訳ありません、強引に押し通らせてもらいます!」

『怪我をしたくなかったら、どいて下さ~いっ!』


バグにより個人戦闘力は恐らく他に並ぶ者の無いモブーナ。

戦闘力こそ並なものの、その巨体により兵士を虫でも払うようになぎ倒していくママリア。

…その光景は、衛兵たちが気の毒になるくらいの光景であった。


「おのれ、小癪な…」

「ニエリカ様に手をかけようとした貴女は…王妃様と言えど許せません。少しキツイお仕置きをさせて頂きましょう!」

「チッ!」


一瞬の隙を付き、モブーナが王妃に攻撃を仕掛けようとする。

が……


「当たりはせんよ」

「…何っ!?」


その攻撃は空を切るのみだった。


(モブーナの攻撃が外れた…!?)

「今のはまぐれです!まだまだ…!」

「フッ、何度やっても結果は変わらんよ」


モブーナの攻撃を全て捌いていく王妃様。

2人の戦闘力が高いと言えど多勢に無勢、指揮官を倒せないとなれば、少しづつ数に押される事になる。


「………」

「フフ、どうした?狼狽えているな。衛兵!こやつも捕らえよ!」

「はっ!」


狼狽えるモブーナを衛兵が取り囲む。

が…次の瞬間、私とモブーナは上空から現れた手に鷲掴みにされていた。


『今は引きましょう?命あっての物種です、逃げますよ~?』

「に、逃げるって言っても何処へ…」

『さあ…?けど、少なくともこの国以外の何処かへですね!』

「そ、そんなノープランで…というか、今更だけど貴女達2人とも、国家に反逆するなんて正気!?」

「正気も正気ですが。ニエリカの為であれば国家にだって喧嘩を売りますよそりゃ」

『ええ、大切な友達に危害を加える国なんて私にとってはどうだっていいです!』

「2人とも………その、ありがとう」

「ええい、罪人共が友情ごっこなど…!追え!追え!」


そうして私達は、ママリアに抱かれながら、国から逃げる事になったのだ…


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