前回のあらすじ:試験対決は圧勝でした
さて、学園に入学してからしばらくが経ち…
あの2人は相変わらず挑んでくるものの、最初の敗北が効いているのか入学当初ほどの勢いはなく。
ママリアとの関係も相変わらず良好であると言える…というか、この子本来主人公のはずなのに全くそんな気配が無いわね。
カーヴィルとエリカも相変わらずで…まあ、あの2人は今の状態が一番幸せなのかもしれないけども。
マーロイも相変わらず、平和な学園生活が続いている………と言えれば良かったんですけれども。
「ママリア、学校生活はどうだ?何か困っている事は無いか?」
『は、はい…大丈夫…ですけど…』
「…うん、それは良かった!何かあったらいつでもなんでも言ってくれ!」
『は、はぁ…』
最近気づいてしまったのだ。
マーロイが何かこう…ママリアに対して今までよりも積極的に絡みに行っているような気がする。
まあ他の人とは『違う』彼女を気遣っているとも取れるが…
で、当の本人はと言えば
『まあ…今一番困っている事は…親友の婚約者がやたら私に絡んでくる事なんですけど………どう思いますか?ニエリカ様?』
「うぇ!?あ、あー…そうね、申し訳ないとは思っているけども…アレは私にも制御出来なくて…」
『うーん、そうですか……困った人ですね…』
困っていることが無いどころか、むしろ今の状況に困っていそうだったが。
「…あ、あー…えーと…あ!その、本当に困っていたりは大丈夫?その、日常生活とか…」
『もう!ニエリカ様まで!…まあでも本当にそんな事があったら真っ先にニエリカ様に相談しますから!大丈夫ですよ!』
何かいつの間にかママリアからの信頼が凄い気がするが
『とは言え、ニエリカ様の心配も最もかもしれませんね。でも本当にそうなんですよ、服とか食料とかの日用品は魔法で大きくすればなんとかなりますし、住む場所にも困ってないですし、勉強でついていけないとかも無いですし…』
「そうなのねぇ…なんというか、これを言ったら申し訳ないのだけれども…想像よりも全然福利厚生がしっかりしているというかなんというか」
『まあ、子供の頃は大変でしたけどね、あはは…でも、周りのみなさんも、教会の皆さんも助けてくれましたし、人に恵まれたのはそうかもしれません』
「…ま、それは貴方自身が人に優しくして来たからってのもあるんじゃない?」
実際、彼女は学園内でも他の生徒に積極的に手を差し伸べている。
それに、ちょっとした怪我ぐらいなら彼女が回復魔法でなんとかしてしまうので、一部の生徒からは『聖母』なんて呼ばれているようで…
…うん、まさかゲーム外での愛称がゲーム内でも呼ばれるとは思っていなかったが、多分流石にこれは偶然だと思いたい。
事実、聖母と呼ばれるに相応しい動きをしているとは思うし。
『ニエリカ様ったら…もう、褒めても何も出ませんよ!』
「別にそういうつもりで言ったんじゃないわよ、ただ事実を言ったまでだし…」
『まぁ、事実だなんて…』
もしかして無自覚か、その優しさは無自覚なのか。
「…コホン、まあそれはそれとして、一つ気になってることがあるのよね、私」
『なんでしょうか?ニエリカ様?』
「その…身体のサイズを人間サイズにすることは出来るのかしら?」
『私にアイデンティティを捨てろと?』
一瞬、背筋に悪寒が走るような、蛇に睨まれた蛙になったような、そんな気配を感じ取る。
マズい…彼女の地雷を踏んでしまったか…?
「あ、いえ、あの、単純に好奇心で…その………ご、ごめんなさい!!」
『ふふ、冗談ですよ~?それに、ニエリカ様が疑問に思っているのであれば答えるのもやぶさかでは無いですからね~』
(ほっ…)
とりあえず、命の危機では無かったらしい。
『…まあ、マーロイ様辺りが同じ質問をしたらどうなるかは分かりませんけど』
「ひっ」
前言撤回、命の危機だったらしい。
『なんて、これも冗談ですよ?私が「メッ」するのは悪い人だけですから』
「そ、そう…なら良いのだけど」
…うん、彼女とは絶対に良好な関係を築いておこう、そう心に誓うのだった。
『あ。えっと、それで身体のサイズでしたよね?それについては…結論から言えば、出来なくはないです』
「そうなの?」
『はい、そもそも今の身体になっているのは私が「魔力吸収体質」っていう珍しい体質のせいで…私、体内の魔力量に応じて身体が大きくなってしまう体質らしいんです』
「ふうん…?」
確かにママリアは魔法の天才と呼ばれていて、体内の魔力量も人よりは多いという設定はあったはずだが、その設定は初めて聞くな…
『逆に言えば、その魔力を一気に放出したりギュッと圧縮したりすれば、身体のサイズは皆さんと同じぐらいにまではなります。最も、どっちも体力を使いますし…魔力量もすぐに戻ってしまうので、1日1時間ぐらいが限度ですけどもね』
「そうなのねえ…」
『まあ、さっきも言ったように、今の身体で不便を感じている事はありませんし、私自身今の私が好きなんです。なのでどうしても必要な時にしか使わないようにしてるんです』
「…ええ、そうね、それで良いと思うわ」
『ふふっ、ありがとうございます』
…何かこう、彼女との心の距離が少し近くなったような気がする。
いやこれは私が勝手に思っているだけではあるのだが。
『それじゃあ…ニエリカ様の事も色々と教えて下さいね?』
「え!?私!?いや私の話なんて聞いても面白くは…」
『面白いとか面白くないとかじゃなくて、私がニエリカ様の話を聞きたいんです!』
「う…い、いやでもそれは…」
「お嬢様本人の口から言い辛いのであれば私から話させて頂きますが」
「モブーナ!?貴方一体何処から…」
「私はいつでもお嬢様のお側におりますよ。それで、常にお嬢様の最前線に居た側近のお話を聞きたくは?」
『あら、それは素敵な話が聞けそうですね!』
「あ、な、な………」
…それからの話は他愛もない話であったために割愛させて頂くことにする。
私の名誉の為とかではない、決して、恐らく、多分、きっと。
さて、そんな話をした翌日…登校した私の目に飛び込んできた光景は
ママリアがマーロイを踏み潰している光景だった。
「…いや昨日の今日で何があったのよ!?」