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第18話『試験勉強をしよう!』

前回のあらすじ:試験の点数で競うことになりました


「ということで、勉強会をしましょう!」

「え、ええ…いや、でも、主に競うのは私では…」

「まあそうですけども、こういうのは皆でやった方が良いじゃないですか!」

「んまあ…それは…そうですわね」

「では決まりですね!!!!!」


そうして、モブーナの鶴の一声で試験対決対策用の勉強会が開催されることになったのだ。

まあ、半ば強引とは言え試験対策という意味で言えば勉強会は合理的ではあるし助かる状況ではある。

とは言えそもそも勉強全般はモブーナに教えてもらっているし、勉強会と言っても何をするのだろうか…


「…ふむ、確かにニエリカ様の懸念もわかります。ですが、勉強というのは教わるだけではなく、教える側に回ることでもより理解を深めることが出来るのですよ」

「な、成程…」

「それに、試験と一言で言っても筆記だけではありません、実技の試験もございますから。ニエリカ様は実技に不安がございますでしょう?」

「うっ…」


実際彼女の言ったことは何も間違っておらず、9年経って私も成長したとは言え、マーロイ様やエリカ様、カーヴィル様と比べたらステータスはともかく、実力的にはまだまだ差がある状態だ。


「ということで、ニエリカ様にピッタリの訓練相手を用意させて頂きました!」

「私にピッタリの訓練相手…?」

「はい!…ということでマーロイ様、お願いします」

「ああ!任せろ!私の権限で総動員させてもらったぞ!」

「あ、あのー…えーっと…誰をですか?」

「王国騎士団だ!」


うん?王国騎士団?

今王国騎士団って言った?


「え、いや、あの?」

「王国騎士団、常に最前線で戦い続けている精鋭中の精鋭、君の訓練相手には正にうってつけと言う訳だ!」

「?????」


文の前半と後半が繋がっていないような気がしますが?????

…というか、王国騎士団は暇なの!?仮に暇だったとして、誰か反対する人は居なかったの!?!?


「おっと、喜びのあまり声も出ない顔をしているようだな!だが私も伊達や酔狂で彼らを連れてきた訳ではないぞ!彼らは戦いにおいてはプロ中のプロ!そんな彼らからの特別指導とあれば、急速なスキルアップが可能であろう!」

「は、はあ…」


確かに理には適っているが…


「まあ、それに実のところ学園での生徒への指導も彼らが行ってくれる事になっている、だから授業を先行して受けられるとでも思ってくれれば良いさ。当然、父上の許可も得ているぞ!」

「う、ううん…まあそれなら…」

「ま、母上にはバチクソに嫌な顔をされたがな!!!」


駄目じゃん。


「ともかくとして!これで実技試験の方も不安は無いわけだ!」

「う、うーん?ええ、まあ…うん?」

「さあ!試験当日まであまり時間がない、どんどん行くぞ!」

「え、あ、ちょ、待…」


こうして、私の特訓の日々が始まったのだった…


「はぁっ!」

「んぎぃ………!」


とは言え、一朝一夕で強くなれる訳もなく、最初のうちはただひたすらに負け続ける日々…


「はぁ…はぁ…」

「これで5連敗目ですね、少し休憩しますか?」

「い、いえ…大丈夫ですわ…」

「あまり大丈夫そうな声ではありませんけどもね。まあ、しかし…貴方には優秀なメイドがついているというのに、我々で本当に役に立つんでしょうか?」

「ええ!それは勿論です!!!」

「うわぁ!?」


そんな話をしていると、どこから聞こえてきたのかモブーナがスッ…と現れる。


「このような一介のメイドを評価して頂くとは、お褒めに預かり光栄です」

「あー、うん、その一介のメイドに騎士団全員ボコボコにされてたような気もするんだけどね」

「まあそういう日もあるということです。ともかく、それはそれとして、皆様との組手が私との組手以上に役に立つのかという話ですが、当然役に立ちます!!!」

「…その心は?」

「ズバリ、戦闘経験です!私一人と組手をしても私との戦闘経験にはなりますが、それだけです。人には人、それぞれの癖、思考パターン、実力…見るべき所はいくらでもあります。戦いの中でそれを見極めてこそ、実践訓練と言えるのですよ」

「お、おお…」

「つまるところ、訓練の中では勝敗は重要ではありません。何故負けたか、何故勝ったか、どうすれば勝てるのか、戦いを有利に進めるためにはどう動くべきなのか等、それらを理解することこそが、訓練の意義なのです」

「な、成程…」

「そして訓練の成果を生かし、相手に勝つ…試験に勝つために必要なことは、もう分かりましたね?」

「え、ええ」


うん、やっぱりモブーナは時折同い年とは全く思えない聡明さを醸し出してくる。

実際有能なメイドではあるんだが、なあ…


「はい!では私はママリア様の臨時教師の方に戻らせて頂きますね」

「ええ、ありがとうございますわ」


ちなみに私以外の人は何をしているかと言えば、モブーナは見ての通り、騎士団からは「もう何も教えることがない」と言われてしまい、主にママリアの勉強を見ている。

で、そんなママリアも実技はまあ…見ての通り勝負にもならないため筆記に集中。

カーヴィルとエリカは相変わらずイチャイチャしているし、マーロイは…まあ、普段はあんな感じでも日々の積み重ねがあるから楽勝という事なのだろう、騎士団の皆とウォーミングアップがてら戦っている。


「…ええ、私も負けていられませんわね!」


そんなこんなで、私も再び騎士団との打ち合いに向き合うのだった。

…何かこう…王妃様にめちゃくちゃ睨まれているのは一旦見ないようにするとしよう。


…そうして迎えた試験当日。

………から数日、私は貼り出された試験結果の前に立っていた。


「う………ま、まあ…こんなもんよね」


結果としては…総合10位には入ったものの、やはり上には上が居るというか…『主人公』との差をまじまじと見せつけられる形となった。

当然と言えば当然というか、上位4人はマーロイ、エリカ、カーヴィル、そしてママリアの4人で独占、そして4人ともほぼ差を付けられないといった成績だった。

そしてモブーナなのだが…何故か私の1つ下の順位であった。


「しかし…他の4人の順位は分かるけれど、モブーナ、貴方の順位…」

「ああ、それはですね…従者である私がニエリカ様よりも上の順位になる訳には行きませんからね!」

「…うん?」


うん?それってつまり…順位を操作したって…事?


「筆記は明確に答えがあるから点数の調整は簡単でしたが、実技の方は大変でしたね…明確な評価基準が採点者に左右されますし、お嬢様の点数に並べるようにするのは大変でした」

「あ…うん…そ、そう…それは…お疲れ様…」


…うん、多分本気出したら彼女には誰も敵わない気がする、いや実際ステータス的には誰も敵わないのだが。


「そういえば、あの2人の点数は確認しなくとも良いのですか?」

「ん?ええ…今探しているのだけれど…」


そう、今日の本題はこれだ。

あれだけ自信満々に喧嘩を売ってきたからにはそれなりの実力はあるのだろうと思い、彼女達2人の名前を探していたのだが…


「おかしいですわねえ…」


とりあえず、少なくとも上位10人の名前には彼女達の名前は無かったのだ。

この時点で私の勝ちが確定したのだが、となると2人の順位は一体…?


「…あ、ありましたよ」

「本当?どれどれ………えっ?」


モブーナに言われ、そちらの方を見る。

するとそこに彼女達の名前があった……のだが………。

アキ・サタストが100位台、キョウリ・ムギアに至っては下から数えたほうが早いという始末であった。


「…………」

「…………」


なんというか…あまりにあまりな順位に、我が目を疑ってしまう。

え?何かのギャグ?それとも自信過剰?

私達が呆気に取られていると、噂の2人がやってくる。


「おっ、誰かと思えば…ニエリカ・キュービックさんじゃねえか、どうした?あまりの順位に声も出ねえか?」

「フッ…まあ、私の計算では、貴方が勝てる可能性は万に一つもありませんけどね!」


いや、何でお前らそんな自信満々なんだ。

特にキョウリ!その順位で勝てる道理は0だぞ?????


「いや、あの…」

「へっ、それじゃあ、アンタの順位を見させて貰いましょうかね…!」

「あんな表情してたんですもの、どれだけ無様なのか…………あれ?」

「…………」

「…………」

「…………」


しばしの沈黙が一同の中に流れる。

いや、何か言ってくれよ、あれだけ自信満々に喧嘩を売ったんだぞ???


「……あー…じゃあ今回の所は引き分けってことで」

「いやなりませんわよ???少なくともこの結果で引き分けにはなりませんわよ!?」

「いや、ほら、まだ入学して最初の試験だしさ?ジャブですよジャブ!」

「いやジャブとかでなく!というか貴方達よくそんな成績で試験で白黒つけようとか大口叩けましたわね!?」

「いや、それは………ほら、実技の点数ならアタシが上だろ?」

「その代わり貴方筆記は壊滅的じゃないですの」

「いや~、ほら、私も魔法特化でぇ…」

「何故2人とも揃いも揃って同じ言い訳を!?」

「………」

「………」


だ、駄目だ、これ以上はツッコミ疲れる…

というかアレか、もしかしてあの2人に私は下だと見られていたってことか???

…何かそう思うと腹が立ってきたが…


「………つ」

「つ?」

「次は負けねえからな!?覚えとけよ!?」

「そうだそうだ!」


彼女達はそう捨て台詞を吐くと、早々に退散していった。

しかしまあ…あの感じだと、今後も度々喧嘩を売られそうな気配を感じ、胃が痛くなるのだった。


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