前回のあらすじ:縺代▽縺ー繧と触れ合いました
「エリカ・キュービック、エリカ・キュービックは居るか!」
(…デジャヴか?前にも同じような事があったような…)
あれから数日。
ぬるぽとの平和な日々を破壊する声が聞こえたのはその時だった。
「え、ええ…ここにおりますわ、陛下」
「聞いたぞエリカ・キュービック!ダンジョンに潜り、あまつさえ魔物の卵を採ってきたと!!!」
「え、ええ…そうですわね…」
あいも変わらずこの人だけピンポイントで認識阻害魔法でもかけられているのかというレベルで私のことをエリカだと思っているみたいだが…
今日はまた何のために来たのだろうか、まさかもう冒険には行くな、とか…?
「あ、け、けれど私が無事だったのはこの私専属の優秀なメイド『モブーナ』が同行してくれたお陰で…」
「まあ、優秀だなんてそんな…」
「エリカ・キュービック…君は…君という人は…」
う…ヤバいな…これは何を言われるか分からn
「なんて素晴らしい人なんだ!!!」
「は?」
「君はこの歳でもう冒険に出た上に、同行者を立てる謙虚さまで持ち合わせているなんて!!!やはり君を選んだ僕の目に狂いはなかったよ!!!」
あー、うん?
…うん、あいも変わらず自分解釈が激しい人だな
「あ、いえ、謙虚さとかではなく…」
「大丈夫だ、分かっている、君が一緒に来てくれれば心強い事はよ~く分かった!!!」
ヤバい、これは何も分かっていないやつだ。
「あ、あの、ですから…」
「エリカ・キュービック、僕と一緒にパーティーを組んで冒険に出ようじゃないか!!!」
…うん、まあ、そうだよな、そうなるよな。
「あの、え~っと…」
「残りのメンバーだが…カーヴィルは当然として…まあ、ニエリカも連れて行ってやろうか。どうもあの2人、君を訪ねる度にずっと2人で居るからな…」
「勿論私も同行させて頂きます!!!!!専属メイドですので!!!!!」
…うん、モブーナが同行するなら事故はよっぽど起きないだろう。
というかエリカ様、ここぞとばかりにカーヴィル様とイチャイチャしてるのか…
こっちがこの顔だけは良いアホの相手をしている間に…
「よし、善は急げだ!!!準備が出来たらすぐに出発するぞ!!!」
「は、はぁ…」
こうして私は、また彼の思いつきに巻き込まれてしまうのであった。
さて、そうして着いた先のダンジョンは…2つ目のダンジョン『妖精の森』であった。
「いや~しかし、普段ダンジョンに来る時は護衛に付き添われて来るものだから、こうして同世代の者とだけパーティーを組んでというのは初めてだな!!!」
…ああ、成程、確かにそうか。
陛下程の地位の人間は何処へ行くにも、何をするにも護衛の目が光っているのだろう。
それを思えば、こうして私と会う時間はそういったしがらみから解放される時間でもあるのだろう。
そう考えると、彼の境遇にも少し同情してしまう…が、まあそれならそれで一言言ってくれればいいのに、とは思うが。
「カーヴィル様…私こういった場所は初めてで…守って下さいますか?」
「ああ、勿論だ、どんな魔物からも君を護ると誓おう」
「カーヴィル様…っ!」
…で、例によってこっちはずっと2人でイチャイチャしてるし。
いや、エリカ様の未来を考えるならこれが一番良いのだろうが、それはそれとして腹立たしい。
ちなみに冒険にはモブーナも一応同行しているのだが、彼女は彼女で「ニエリカ様以外はお守りしませんが?」みたいな顔をしている。
やめろよその表情!多分この中で一番護るべきじゃないのは私だぞ!?他の人は王子とか貴族とかで何かあったらマズいんだぞ!?
………とは言ったものの。
なんのかんの言いつつ、実際にダンジョンを進んでみれば…
「はあっ!カーヴィル、そっちに行ったぞ!」
「ふん、何匹来ようと関係ない」
「…!カーヴィル様、危ない!」
「っ!…すまない、助かった」
連携の取れた動き、訓練された戦闘センス、レベルに似合わぬ実力…
やはりなんだかんだ言っても彼らは『主人公』であると思わざるを得ないのであった。
「…レベルとステータスは私が一番上のはずなのですが…はぁ」
「まあキャリーで上げたレベルですからね~。数値が上でも実際の経験は向こうが積んでるって事ですよ」
「はぁ…それにしてもこうまで差を見せつけられると…」
まあ、そもそも私実践経験とかほとんど無いしな…
などと考えていると。
「危ないエリカ!!!避けろ!!!」
「え?」
横から現れたスライムに激突されてしまった。
幸いにしてダメージはほとんど無かったが、大きく吹き飛ばされてしまう。
(マズい、このままだと壁に激突して…)
ぶつかる…!と壁に当たる覚悟をしていたのだが…
何か不思議な感覚がした後、私は地面に倒れ込んでいた。
(………?)
周りを見てみれば…そこは先程まで居た場所ではなく、自分以外には誰もいないという有様だ。
そして自分が飛んできた方向を見れば…壁。
(…ハッ!ま、まさか…)
そこで私は気付く、これは…壁を抜けてしまったのだと。
…うん、確かに敵に吹き飛ばされている最中は一部の壁をすり抜けるバグはあったが…
(まさか、あの壁がそうだったなんてね)
偶然とは言え、運が良いのか悪いのか…
兎にも角にも、私はパーティーと分断されてしまったのだ
「…さて、これからどうしましょうかね…」
と、考えていると、目の前に宝箱があることに気づく。
「…!こ、これはまさか…!」
そうか、妖精の森と言えばアレがあったじゃないか!
私は喜々としてその宝箱を開ける。
そして、その中には…
所謂スリングショット、パチンコが入っていたのだった。