前回のあらすじ:持ち物を入れ替えま111000111000000110010111111000111000000110011111…
「ニエリカ様!!!!!ダンジョンに行きませんか!!!!!!」
「は?急に何……?」
あれから変わらぬ日常を過ごしていた私の平穏を破ったのは、モブーナのとある一言だった。
「いえ、私、ふと思った事があるんです。今のニエリカ様は弱すぎると!!!」
「は?」
「ニエリカ様に纏わり付く羽虫は全てこの私が叩き潰すつもりではおります!が!が!!!!万が一ということもあるじゃないですか!!!!!ニエリカ様も自身のステータスは認識したことですし?」
「う、ま、まあ…一理は…ある…わね」
そう、彼女の言うことは実際正しい。
何故なら自分のレベルは未だに『1』だからだ。
…いや冒険にも出てない、普通の悪役令嬢なのだから当然と言えば当然なのだが。
「うーん、そ、そうねえ…まあ、確かにレベル上げは必要だし?そこまで言うなら行ってあげなくも…」
「よし!!!!!では善は急げですね!!!!!準備はしてありますのですぐに出発しましょう!!!!!!!」
「え、ちょ、私の心の準備は」
「そうそう死にはしません!!!!!!」
「そういう問題じゃ…!」
と、そんなやり取りをした後に、私はモブーナに連れられ、ダンジョンへと向かうのであった。
着いた先のダンジョンは『始まりの洞窟』…このゲームにおける一番最初のダンジョンだ。
ちなみにだいたいのダンジョンは本編と外伝で使い回されている、勿論マイナーチェンジこそされてはいるのだが。
まあ、本編と外伝で同じダンジョンにそれぞれの人が違う経緯で訪れる展開というのは嫌いではない、そこはとやかくは言うまい。
(で、このダンジョンで出現するのはスライムとかゴブリンとか、低レベルでも倒せるような敵だけで…それは分かっては居たんですけども…)
で、ダンジョンに入って今何が起きているのかと言うと、何故か全身ビショビショになっている。
というのも、最初に現れたスライムと死闘を繰り広げるハメになっているからだ。
「がっ…こ、この…!倒れなさいよ!!!!!」
「ニエリカ様頑張れ~!」
まさか、スライム程度に苦戦するとは思っても居なかった。
いや、ゲームと現実とは違うというのは分かってはいたが、まさかここまでとは。
低級と言えどモンスターはモンスター、侮るなかれということか。
スライムを倒すためには中心の核を破壊する必要があるのだが、これがま~あ当たらない。
慣れない剣を振りつつも、避けられたり防がれたりと散々だ。
最早バグなんじゃないか?と疑いたくもなるが、多分これはそうではなく…単純にゲームで簡単に倒していたのは彼ら/彼女らが選ばれし存在、言わば訓練を受け、戦闘センスもあるような所謂『主人公』だったからに他ならないのだと思った。
「くう…!私のような一般人にはスライムを倒すのも一苦労って事!?」
「大丈夫ですよ!相手の攻撃は全然効いてないんでいつかはニエリカ様が勝ちますよ!」
ところでスライムと泥仕合を繰り広げている私の横で応援しているモブーナは何をしているかと言えば、この戦いに加勢しようと集まってくるモンスターを千切っては投げ千切っては投げしている。
先日見たバグったステータスが嘘ではないということを実践で証明してくれているなあ…と思いつつ、いやそれだけ強いなら手伝って欲しいとも思ったりはしてしまう。
「駄目ですよ?ニエリカ様一人の手で勝つのが目的なんですから!」
「そ、それは分かっていますけど…!」
ちなみにこのゲーム、パーティーメンバーであれば経験値は共有される仕様なので、戦闘中ではあるが経験値がモリモリと増えていっていたりする。
しかしながらレベルが反映されるのは戦闘後なので…兎にも角にも、このスライムを倒す必要性があるというわけだ。
「くっ…!もう、本当、いい加減に…倒れ…あぁっ!?」
全身がビショビショになってしまっていたために、足元が滑りやすくなっていることが意識の外になってしまっていた。
結果、私は戦闘中だというのにも関わらず盛大にすっ転び…
「ギャッ!」
グシャア!という音とともに全力のボディプレスでスライムを押し潰していた。
「………」
「あ~…ニエリカ様、確かそういう作品が昔ありましたよね!確かど根性…」
「いや何で知ってるのよ、というかそういう話ではなく…!」
「いや~実はニエリカ様の記憶を少し覗かせて頂きまして…」
「また貴女はそういう事を!?ああもう…!!!」
潰したスライムでグッチャグチャになった服を着ながら、頭に入ってくる情報量の多さで何から処理したら良いのか分からなくなる。
とりあえず…まあ、戦闘には勝利したらしい、なんとなくレベルが上って少し強くなった気がする。
というか少しどころではなく一気に10ぐらいレベルが上った気がする、モブーナお前さっきの戦いの横でどんだけモンスター倒してたんだ。
「え…どうでしょう…100から先は数えていませんが…」
「………」
いや、これはモブーナの能力がバグっているのもあるが、私がずっとスライム相手にちんたら戦っていたせいだろう。
そう思うと…うん、先は長いな。
とりあえず…しばらくはモブーナにキャリーしてもらおう。
そう考える私なのであった…