前回のあらすじ:モブ村人を取得し「ニエリカ様にお仕えすることになりましたよ!!!!!!!!!!」
「う、ううーん…」
その日の夜…妙な寝苦しさを感じ、私は中々寝付けないでいた。
やはり倫理的に終わっている事をいくつもしてしまったせいだろうか。
モブーナの処遇に関しては案の定ルイリオ様が寛大な
…いやその事が良いことかどうかはまだなんとも分からないが…
………というか、まさか彼女があんな性格だとは思わなかった
いや実際彼女のセリフは一言二言しか無い上に、登場するのもあそこだけだから実際はこういう性格だったのかもしれないが…
それにしたってあの急変っぷりは『彼女という存在の在り方を変えてしまった』と言っても過言ではない…かもしれない。
(そう考えると良心の呵責が…)
(安心して下さいニエリカ様!!!!!私は元々こんな感じなので!!!!!)
「うわぁ!?!?!?!?!?」
こ、こいつ…直接脳内に…!?
突然の出来事に驚き、後ろに寝返りをうつと…モブーナが私の寝顔をガン見していた。
「ぎゃあ!?!?!?!?」
「うわぁ!!!!!急に大声を上げないで下さいニエリカ様!びっくりしますから!」
「いやびっくりするはこっちのセリフよ!なんでこの距離!?っていうかなんでここに!?後なんで寝てないの!?」
「そりゃあ…ニエリカ様の専属メイドですから!寝てる暇なんかありませんよ!!!!幸い今の私は『装備品』!!!!!装備品が眠りますか?」
わぁ、言ってることメチャクチャだよこいつ。
…いや実は私が知らないだけで『そう』だったりするのか…?
「今の私は全能感がありますからね!実はニエリカ様が知らないだけで『そう』かもしれませんよ?」
…うん、さっきも思ったけど普通に私のモノローグを読むのはやめて欲しい。
というかこれも装備品の効果だったりするのか?
「いえ、これは普通に心を読む魔法を使いました」
「そ、そう…それなら良…」
いや、ちょっと待て、『心を読む魔法』?
ついさっきまではただの市民だった彼女が何故そんな魔法を?
「あ、それはですね、ニエリカ様のお屋敷に来てから魔術系の書籍を全部読みまして」
「全部!?!?!??!」
「はい!!!!!ニエリカ様の為を思えば多少の量はへっちゃらでした!!!!!」
…うん、ちょっとこの子の才能にびっくりするわ。
「でも本に乗ってる魔術なんかは本さえ読めば使えるようになりますけど、ニエリカ様は『そうじゃない』魔術が使えるじゃないですか。私も流石にそういうものは…」
「『そうじゃない』魔術?」
「はい!それこそ私を装備した時のような…」
む、そうか…バグを意図的に引き起こすのはこの世界的には魔術の一種と捉えられているのか。
そういう意味で言えば、私は未知の魔術を使っていると言う事になるか…
「多分、そういった魔術は…恐らくですが、神から与えられた贈り物だったりするのかもしれませんね!」
「は、はあ…そういうものかしら…」
「…?ニエリカ様にしか使えないのであれば、多分そういうものですよ!!!」
『私にしか使えない』というのは正しいかどうかは分からないが…少なくとも、バグを使えるのは多少なりとも『この世界の真実を知っている』と言えるだろう。
となると、私にしか使えないというのもあながち間違ってはいないのだろうか…
「…まあ、転生者がそうポンポンと出てこられても困るものね」
「そういうのがあろうと無かろうと私にとっての特別はニエリカ様だけですけどね!!!!」
なんでちょっと良いこと言った風な雰囲気を出してるのよ。
「…まあ実際、あの時ニエリカ様が連れ出してくれなかったら、この世界における『私』という存在はあの時点で終わってしまっていましたからね。あの後は『モブですらない』、想像の中だけで存在するみたいな、そんな存在です。ああ!いや、実際はそうじゃなくて、別に死ぬとかじゃ無いんですけども…少なくとも、ニエリカ様や他の人達の人生と関わることはもう無い訳で。なので、ニエリカ様に人生の全てを捧げる程に感謝しているというのは本当のことですよ?」
「モブーナ…」
「…存在の在り方を変えられた、というのも…まあ、あながち間違いでは無いかもですね。実際、あの時に私はあそこで一度死に、ニエリカ様の専属メイドの私が生まれ変わったと言っても過言ではありませんから!!!!」
「う、ううん…?」
そ、それは存在の在り方を変えられたと言って良いのでは…?
「と、とにかく!私はニエリカ様に身も心も救われたんです!!!!!本当にありがとうございます!!!!!!!!」
「ど、どういたしまして…?」
「…あ!そういえばニエリカ様、寝付けないんでしたよね!?では僭越ながら私が少しお手伝いを…」
「え、ちょ、急になn」
「べ、別に恥ずかしくなったとかじゃないですからね!?ではお休みなさいニエリカ様!『スリープ』!」
…その後、モブーナに『睡眠』の状態異常をかけられた私はぐっすりと、それはもうぐっすりと眠っていたそうな。
(余談だが、『装備品』だからといって不眠不休で動けるものではなかったらしく、彼女も普通に寝落ちしていた)