私は運転の話から話をそらすのに、遺骨ダイヤのことを話題に振ってみる。
「霊園の件は、わかった。じゃあさ、遺骨ダイヤでもつくったら?」
私の提案に何だそれと思ったのだろう。はーさんが間髪入れずに尋ねる。
「お姉ちゃん、遺骨ダイヤって何?」
「遺骨とか遺灰をダイヤモンドに加工するの。それを指輪とかペンダントのアクセサリーにするっていう供養方法のこと」
「遺骨をダイヤに加工って、できるの?」
「できるみたいだよ。ほら、最近の供養方法で調べたらあった」
スマホで検索したページを見せると、はーさんはささっと読んでしまう。相変わらずの速読で羨ましい特技だ。
それにしても、遺骨ダイヤなら時間も場所も取らない、我ながら名案なのではと自分で自分を褒める。しかし両親は少し困ったような、悩んでいるような顔をしていた。
「はーちゃん、大丈夫かしら」
「そうだなぁ」
どうやら、遺骨ダイヤモンドに懸念があるようだ。それも妹のはーさんが要因で。
「なんで?」
なぜ自分の名前が出てきたのか分からないといった様子で、はーさんは首を傾げる。
「だってはーちゃん、ダイヤをトイレに落として流しそうなんだもの」
「なんか心配だよな。リアルにやりそうだから」
すごい。お互い心配な点がすぐに思い至ったらしい。流石夫婦、考えていることは一緒かと私は感心していたが、はーさんは心外だったようだ。
「何それ! ひどい。さすがにそれはしないから!」
しかし私自身も両親の心配は当たっているのではないかと思っていた。それくらい妹のはーさんはよく物を水場に落とすのだ。
「はぁ。はーちゃん、しょっちゅう水場に落としてるじゃない。トイレにスマホ落としたのが2回。子供の頃にたまごっちを落としたのが3回。あと、何があったかしら」
「おお、伝説が多いなあ。間違ってお父さんを流さないでね~」
父のからかうような言い方で、完全にはーさんは拗ねてしまった。
「昔の話じゃない。もういい!せっかく真面目に聞いてたのに!」
そう言うとはーさんはリビングを出ていく。
「どこいくの」
「もう一度シャワー浴びてくるの!」
機嫌が悪くなったはーさんを見た両親は、
「あら、お父さん、はーちゃん、怒っちゃったわよ」
「からかい過ぎたかな?」
「ふふっ」