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第2話

 少し時間が経つと、長年使っていたクーラーもやっと効いてきて部屋が少し涼しくなってきた。

「はあ、やっと一息つけたわね」

 母は冷たい麦茶を飲んで、生き返ったというような心地で言った。

「疲れたー。暑すぎだよ、今年」

 私は手元のハンドファンに向かって、愚痴を吐く。

「今日はみんなお疲れ様。おばあちゃんも喜んでるんじゃないか」

「おばあちゃん、喜んだかな」

 父の労いの言葉に私は素直に浮かんだ疑問を言った。すると母はふふっと笑って、

「もちろん。息子も娘も孫達も集まったのよ。あなたたちが来てくれて、おばあちゃん、きっと嬉しかったと思うわ」

 するとはーさんがふと思い出したように、

「お話しするの好きだったよね、うちのおばあちゃん。とくに、恋バナ」

「あなたたちが『彼氏できた』とか、『好きな人がいる』とか。それ聞いて、おばあちゃん、えらく喜んでね。キャッキャッしてたわ」

 病院のベッドでキャッキャっしていたおばあちゃんを見たのが、随分前のように感じられる。

「うんうん、してた、してた」

「感性が若いなあ、うちのおばあちゃん。それにミーハーだよね。俳優とかも好きだったし」

 おばあちゃんは、本当にサッカー選手から今流行の俳優まで詳しかった。多分流行だけだったら、私よりおばあちゃんの方が感性が若いと思う。

「あなたたちより、詳しかったわよ」

「俳優には興味ないな。私には、二次元の『推し』がいるんで」

 母の少しからかったような言い方に、はーさんは自分はそんなの興味ありませんと言いたげに答える。すると、父は驚いたように、

「ええっ!まさか好きな人って、アニメとかのキャラクターなのか?」

「いやいや、彼氏はちゃんとリアルにいますー!」

 はーさんはなんでやねんと言いたげに、勢いよくツッコミを入れた。お前は関西人か。

「ああ、よかった。おばあちゃんにアニメのキャラクターとかの画像見せて、『私の彼氏』とか言ってたらどうしようかと思ったんだ」

「お父さん。マジなのか冗談なのか、わかんないんだけど!」

 父の冗談をどう受け止めたらいいのか、はーさんは不貞腐れた様子だ。

「ふふっ、ですって。お父さん」

「いやあ、悪い、悪い。からかいがいがあってな」

 そんな不貞腐れたはーさんの様子は、両親にとっては笑いのツボだったようだ。

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