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遺骨ダイヤモンド
masuaka
文芸・その他ショートショート
2024年07月25日
公開日
4,092文字
完結
夏の暑い一日。葬式から帰ってきた私たち一家は暑さにやられ、クーラーが効いた部屋で涼んでいた。
珍しく家族4人が揃った居間でぽつぽつと他愛もない話をしていたら、「終活」の話しに話題が移っていき...?

第1話

 夏の暑い一日。

 日はとっくに沈んでいるのに、うだるような暑さは日中とほぼ変わりなかった。ぽたぽたと顔から噴き出る汗に思わず顔を顰めてしまうのも無理はない。

 こんな暑い日に家からできれば一歩も出たくもなかったが、今日だけは仕方がなかった。

 私の前を歩く父と母、そして一歩後ろに疲れて歩く妹の姿を見る。あと少しで家に着くから、みんな無言で歩いていた。

 父が玄関の鍵を開けると、懐かしい我が家の空気を感じた。

「やっと家に着いた」

 父は私と同じことを思っていたらしい。数日、我が家から離れただけだがとても懐かしく感じられた。

「うわあっ。部屋の中、暑いよ、蒸してる」

「タオル出すから、シャワーで汗流して、さっさと着替えなさい」

 そう言いながら、母はタオルを取りに向かった。私は居間に入ると、すぐにクーラーのリモコンを取った。

「あー、暑い。クーラーつけよ。はーさん、大丈夫?」

「暑くて、死にそう。もう無理」

 この暑さに一番参っていたであろう妹は、勢いよくソファに倒れこんだ。

「まだ七月の終わりでこれからが夏本番だよ」

「こんな暑い中、喪服着てたら、もっと暑く感じるに決まってるでしょ」

 妹は喪服を脱ぎ、ぽいっと床に投げだした。本当に暑いのだろう。

「ああ、ビール呑みたいなあ。冷蔵庫にあったかな」

 父はそう言うと、すぐに台所に行ってしまった。

「お父さん、せめて着替えてからにしてね」

「あぁ、そうだな」

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